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第玖話-オニ

オニ-7

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 翌日、長四郎と燐は共に行動を開始した。
 2人はプリキュア。あ、間違えた。二人は今、並外商事に向かって最寄り駅から歩いていた。
「ラモちゃん。本当に良いのか?」
「何が」
「何がって、あんたスカウト受けたんだろ? 川尻から」
「まぁねぇ~」
「こんな事したら、せっかくの就職先無くなるんじゃない?」
「余計なお世話よ」
「いや、大人として心配しているんだぜ。俺。平日の昼間から学校をサボって変な探偵と組んで歩いているんだ。普通はおかしい話だと思うぜ」
「何? あんたは私に付いて来て欲しくないそういう訳?」
 燐は立ち止まり長四郎の顔を見てそう言うと長四郎は「そのとおっ~り」と即答した。
「最低! でも、スカウトがダメになったそん時は長四郎の事務所にでも雇ってもらうから」
「勘弁しろよ。一人で切り盛りするのが精一杯だっちゅうのに」
「あら、そうかしら?」
 長四郎の事務所の経済事情を知っていると言わんばかりの燐は長四郎の先を歩くのだった。
 そうこうして並外商事の玄関ロビーに着いた長四郎と燐は、受付嬢に川尻とアポイントメントがあるので呼び出すよう頼み待つ。
 5分後、川尻は急ぎ足で二人の元へと駆けって来た。
「お待たせしてすいません」
「いえ、こちらこそお忙しい中時間を取って頂きありがとうございます」
 長四郎は川尻にそう返し、本題を切り出す。
「今日、訪れたのは」と言いかけた所で「全社員の名簿ですよね。ご用意しております。行きましょう」と川尻に台詞を奪われ会議室へと案内される。
 会議室に入ると大きいテーブルの上に二台のノートパソコンが並列で置いてあった。
「あのパソコンの中に人事データが入っています。これ、パソコンロック解除のパスワードです」
 川尻は長四郎にパスワードが書かれた紙を渡し、説明を続ける。
「それでですね。このパスワードなんですが、5時間後にはリセットされる仕様になっているんです。捜査は何時間ぐらいを予定していますか?」
「5時間もかかると言った事はないと思います。ラモちゃんもいるので。そうですね。2時間から2時間半といったところでしょうか」
「分かりました。その時間当たりこの部屋へ来させてもらいます」
「お急ぎのようですが、何かあったんですか?」
「ええ、実は会社のサーバーにハッキングされた後が見つかりまして」
 その瞬間、燐の背筋が伸びたのを長四郎は見逃さなかった。
「それは一大事ですね」
「ええ、その対応に行かなくてはいけないので、失礼します」
「はい、どうも」
 この長四郎の言葉を聞く前に、川尻は足早に去っていった。
「さ、やりますか!」
 長四郎は気合いを入れながらパソコンが置いてあるテーブルに着く。
 二人はパソコンのロックを解除し、早速人事データを調べ始める。
 調べ始めて10分が経過した所、長四郎は話始めた。
「なぁ、ハッキングしたのってラモちゃんだろ」
「へ?」肩をびくつかせ変な声を出す燐。
「ふっ、私に誤魔化しなんて聞かないわよ」燐の口真似をする長四郎の足の甲に強い衝撃がかかる。
「痛っ!」
「憶測で物は言わない方が良いわよ」
「憶測って、明らかにびくついていたじゃん」
「そ、そんな事ないわよ!」と言いつつ、燐は冷や汗を出しまくっていた。
「そうかい。てか、痛ってぇ~」
 少し涙目の長四郎は足の甲を擦る。
 燐はそれを横目に自分の作業を続ける。
 長四郎から与えられた作業とは、被害者・平凡協の同僚に怪しそうな奴が居ないかを調べていた。
「で、そっちの成果はどう?」
「ん? こっちは順調ではないかな?」
「しっかりやりなさいよ」
 燐は長四郎の背中を叩き、活を入れる。
「痛って!」
 今度は、回らない腕で必死に背中を擦りながら人事データ画面をスクロールさせる。
「なぁ、ラモちゃんの学校ってさ、ここの企業見学は毎年やっているの?」
「今年に入ってからだけど、それが何なの?」
「そうか。そうか」
 両肘を机につき手を組み、まるで碇ゲンドウのような姿勢になり長四郎はニヤリと笑う。
「なんか・・・・・・キモッ」燐は思ったことをそのまま述べた。
「ひでぇ事言うなぁ。まぁ、いいや。実はさ、面白いもの見つけちゃった。これ見て」
 長四郎はモニターを指す。
 指しているそこには、川尻の配偶者欄であった。
「奥さんいるんだ。あの人」
「ツッコむとこそこじゃないから。ここだよ。ここだよ」
 長四郎は一番見せたい部分を指差す。
 そこは、配偶者の職業欄であった。
 川尻の配偶者・川尻 珠美かわじり たまみの職業は私立変蛇内高校の事務職員だった。
「あ、私の学校じゃん」
「そういう事。という事で、ラモちゃんはこの人と接触して来て欲しい」
「え~なんでぇ~」
「部外者の俺が行くより在校生のラモちゃんの方が適任だし、話聞きやすいんじゃなあい?」
「分ったわよ。行く。行きゃあいいんでしょう」
「分れば宜しい。それと、ここの会社のサーバーにハッキングした生徒さんか君にバレた事を告げた方が宜しいんじゃないか?」
「それもそうね」
 燐は納得し席を立つと自分が使っていたノートパソコンを長四郎の方に寄せる。
「じゃ、私行くわ」そう告げて会議室を後にした。
「行ったか・・・・・・・」
 長四郎は燐が出て行った後、燐が使っていたパソコンを見ると大した成果は得られなかったのか、ホーム画面になっていた。
「困った子だ」
 ノートパソコンの画面を閉じ、長四郎は自分の作業に戻るのだった。
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