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第拾弐話-監禁

監禁-3

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 長四郎と燐は今、燐が通う私立変蛇内高校の下駄箱へと来ていた。
「ここが私の下駄箱」
 燐は手紙が入っていた下駄箱を長四郎に紹介すると、長四郎は黙ったまま頷き燐の下駄箱を隅々、観察する。
「監視カメラってぇ~」長四郎は辺りをきょろきょろと見回し「あった。あった」と言いながら玄関口天井の角に設置されているのを発見した。
「それがどうしたのよ」
「おいおい、マジか。良いか? ラモちゃん、ここに手紙を置いた人物こそが犯人若しくは犯人に関わりのある人物じゃないか?」
「あ~そっか!!」燐は納得したらしく、掌に判子のように拳を押し付けるジェスチャーをする。
「はぁ~拾弐話分も一緒にいて、そんな事にも気づかないとは学習能力のない女だな」
「学習能力がなくって悪かったわね!!」
 燐は長四郎の脚にローキックを入れて、躓きこかす。
「痛った! 何するの!!」
「あら、失礼」
 燐はそれだけ告げ、監視カメラの映像が確認できる事務室へと向かっていった。
「監視カメラの映像ですか?」
 事務員は怪訝そうな顔で長四郎に伺う。
「はい。至急、見せて頂きたいんです。人命が関わっているので」
「人命ですか? 分かりました。こちらへ」
 事務員は監視カメラの映像が確認できるパソコンの元へと長四郎と燐を案内した。
「いつの日の映像が見たいのでしょうか?」
「え~っと、昨日の下校時には手紙は無かったんだよな」
「無かった」長四郎の問いに燐は即答する。
「では、昨日の下校時間からでお願いします」
「分かりました」
 事務員は言われた通りの時刻まで巻き戻して、再生する。
 16時30分が下校時間らしく、一斉に生徒たちが下駄箱へと集結してくる。
 それから、1.8倍速で再生される映像を確認するのだが一向に燐の下駄箱に手紙を置く人物は現れない。
 そして、19時30分になり遅番の教師が玄関口のシャッターを閉めカメラの映像はブラックアウトした。
「ここって、赤外線カメラは使っていないんですか?」
「使ってないです。ここに入れないよう必ず施錠しますから」
「そうですか」
 長四郎は一人納得し、映像を翌朝まで早送りするよう頼む。
 翌朝、6時30分に早番の先生がシャッターを開けるとカメラの映像は元に戻る。
 それから燐が登校した7時53分頃まで動画を見るのだが、至って怪しい人物は見られず燐が来る10分前にリリが姿を見せ、手紙を見つけたらしく何やら騒いでいた。
 それを見ていた奴らもリリの元へと群がってくる。
「あ、私だ」
 自分が人を搔き分けながら、自分の下駄箱に向かっていく映像を見る。
「手掛かり無しか」
 長四郎は口元を窄めて、悔しがる。
「手掛かりなし。どうしようか?」そう尋ねてくる燐に長四郎は「どうしようかねぇ~」とだけ答える。
「あの、もう宜しいでしょうか?」
「はい。このデータを頂けませんか?」
「一日分ごとになりますけど、それでも構いませんか?」
「構いませんので、宜しくお願いします」
 長四郎は事務員に頼み込み、データの入ったUSBを貰うのだった。
 事務室を出た長四郎と燐は、再び下駄箱へと戻ってきた。
「ここで、何しようって言うの?」
「さぁ、分かんないなぁ~」
 燐の質問に答えながら、長四郎は校舎と玄関口を繋ぐドアをくまなく観察する。
「分かんないって、何か知っているから調べているんでしょ」
「そこまで分かっているんだったら、ここの鍵を借りて来てよ」
「分かりました」
 長四郎の尻に蹴りを入れて、鍵が置いてある職員室へと向かった。
 その頃、絢巡査長は捜査一課の刑事・齋藤 高志さいとう たかし刑事を借り出し一川警部に由来する事件の犯人のその後を追っていた。
「どうして、ここ10年前後の事件の犯人何ですか?」
 齋藤刑事は自分の疑問をぶつける。
「そうね。多分だけど、10年より前の事件だったら犯人は長さんを名指しでこのゲームに参加させるはず。でも、犯人はそれをしなかった。一川さんの近況を調べていたみたいだからラモちゃんの元へ手紙を差し出したんだと思う」
「つまりは、熱海さんと共に事件を解決した犯人ではないという事ですか?」
「そういう事じゃない。あのハゲは長さんと出会うまでは窓際刑事として活躍していたみたいだから」
「はぁ」
「それより、どぉ?」
「そうですね。釈放されているのは、この3名です」
 齋藤刑事は自分が見つけた犯人の候補を、絢巡査長に見せる。
「一人目は、宝塚 章たからづか あきら。宝塚は、強盗の罪で逮捕されて一年前に出所しています。二人目は、紙野 研吾かみの けんご。紙野は万引きで逮捕されて常習犯だったらしく服役し、つい一か月前に出所、そして、三人目は、二重 格人ふたえ かくと。二重は殺人ですね。ですが、多重人格者だったようで裁判では無罪になっており、治療中のようですね」
「ふ~ん」
「それで、絢さんの方はどうです? 何か分かりましたか?」
「分からなかったし、目ぼしい奴が居なかった」
「そうですか」苦笑いを浮かべながら齋藤刑事は犯人探しに戻る。
「ねぇ、その三人目の事件の資料を見せてよ」
 絢巡査長にそう言われた齋藤刑事は黙って捜査資料を渡した。
 捜査資料をパラパラとめくり、軽く中身に目を通した絢巡査長は齋藤刑事にこう告げた。
「この事件の犯人を追おうか」
「どうしてですか?」
 いきなりの提案に驚く齋藤刑事に「刑事の勘」とだけ答えた絢巡査長は早速、行動を開始した。
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