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第拾漆話-彼氏

彼氏-13

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 長四郎、一川警部、絢巡査長の3名は、燐と入れ違いの形で日向のマンションを訪れた。
 共用口のインターホンを鳴らすと、応対したのは女性であった。
「はぁ~い」気だるそうな声で応対する女性に絢巡査長は警察手帳をカメラに見せながら「警察です。日向さんは、御在宅でしょうか?」と尋ねた。
「今は、居ませぇ~ん」
「いつ、お戻りでしょうか?」
「え、分かんなぁ~い。私も帰ろうと思ってたところだから」
「そうですか」と答えながら、後ろに棒立ちしている男2人を見ると切り上げて早く帰ろうという表情をしていた。
「分かりました。失礼します」
 絢巡査長はそう言って、通話を終了しマンションから出た。
「どうします?」
「長さん、日向君が居りそうな場所分からんと?」
「そうですねぇ~少々お待ちください」
 長四郎はスマホを取り出して、ルリ子に秋葉原に来ていないか確認する。
 そして、返ってきた返信には、秋葉原での目撃証言はないというものであった。
「あーダメですね。例のバイト先には来ていないようです。それにまだ、17時かぁ~」
 長四郎は近所のクラブの開店時間ではないので、そこには居ないと踏み少し考える。
「大学、行ってみますか?」
「大学ですか?」
「そこしか、心当たりないもん」
「ここで議論しても仕方ないばい。取り敢えず、阿保田大学へ行こう」
 こうして、3人は阿保田大学へと場所を移した。
 その車中、後部座席に座る長四郎は窓からの景色を眺めているとファミレスの窓に燐とリリが楽しそうに談笑していた姿が見えた。
「雨降って地固まるか」
「何か、言いました?」運転する絢巡査長が聞いてくるので「何でもない。それより、日向って奴は居ると思う?」と逆に質問する長四郎。
「何ですか? その質問は。長さんが居るかもって言うからこうして車を走らせて」
「まぁまぁ、そう怒らないで。俺はさ、女性の勘って奴を頼りにしようと思ってさ」
「じゃあ、居るに一票で」
「その根拠は?」
「根拠はって。そうですね。そうしてくれないと割に合わないからですかね」
「言うねぇ~」
「絢ちゃん、そこ左折ばい」
 一川警部は10m先の交差点を指差しながら、忠告する。
「は、はいっ」
 慌ててウインカーを出して、車を左折させる絢巡査長。
「長さん、大学と言っても敷地内を隈なく探すっていうのは、骨が折れるばい。どげんすると?」
「どげんしましょ?」長四郎は無責任に聞き返す。
「長さんも考えとらんとなると、こりゃ参ったな」
「参りましたねぇ~」
 長四郎はそう答えながら窓の向こうを見ると、日向が友人2人を引き連れて歩いていた。
「あ、居た!!」
「え、噓!!」
「ホント、ホント。俺、追いますから。車止めて」
「分かりました!」
 絢巡査長は車を急停車させ、長四郎を降ろす。
「じゃ、追いながら連絡するので」
 長四郎は2人にそう言い放ち、日向を追い始めた。
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