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第拾漆話-彼氏

彼氏-17

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 長四郎は絢巡査長と共に、円山美歩のマンションで日向が脱ぎ捨てたであろう衣服を探していた。
「本当にあるんですか?」疑心暗鬼になった絢巡査長は、血眼になって衣服をさがす長四郎に質問する。
「あると思わなきゃやってられないよぉ~」
 その一言で絢巡査長はここに探している物が無いと悟り、探すのを辞めた。
「絢ちゃん、手が止まっているぞ」
「長さん、ここに探し物が無いってこと分かってますよね?」
「あ、バレた?」
「バレバレです。探し物が無いとなると、どうしますか?」
「・・・・・・時間の無駄って言いたそうな顔をしているから、警視庁に行こうか」
「分かりました」
 こうして、2人はマンションを揃って出ると偶然通りかかった燐とリリに出くわした。
 そして、燐の手には先程見つけたゴミ袋が握られていた。
「ラモちゃん、どうしてここに?」絢巡査長が話し掛けると「いや、日向を尾行していてこれ見つけたんで、絢さん達に店に行こうと思っていたんです」とゴミ袋を見せながら答える燐。
「あ、それ!!」
 長四郎は燐が持つゴミ袋を指差して驚く。
「ラモちゃん、そのごみ袋はどこで見つけたの?」
「ここからちょっと先のマンションの植え込みで見つけたんです。ね、リリ」
「うん。それを日向が探していたんです」
「これを日向が?」
「絢ちゃん、良かったじゃない。見つかって」
「そうですけど。ラモちゃん、その場所へ案内してくれない?」
「分かりました」
 燐は長四郎達を連れて、ゴミ袋を見つけ出したマンションへと案内した。
「ここのマンションの植えこみで見つけたんです」燐の説明を受けて「ありがとう」と礼を言う絢巡査長はすぐ様、鑑識を呼ぶ。
「長さん、ここの管理人に話つけてきますから。捜査員が来たら事情を説明してください」
「はぁ~い」気のない返事をする長四郎。
「シャキッと返事なさい!」
 燐に頭を叩かれ「はいっ!!」と元気よく返事をした長四郎に後を任せ、絢巡査長はマンションへと入っていった。
 それから20分後には鑑識が到着し、鑑識作業が始まった。
「なぁ、どうやって見つけた訳?」
 鑑識作業を眺めながら隣にいる燐に問いかける。
「私達は、あの男に一泡吹かせてやろうと思って、調査していたの。そんで、大学を出てここに来て見つけたゴミ袋を探していたんだけど、見つけきれなくてすぐに去っていた。これで満足?」
「大変、満足です」
「あの、彼は何かの殺人事件に関わっているんですか?」
 今までの状況を知らないリリが長四郎に質問する。
「ああ、君はまだ知らなかったね。実は・・・・・・」
 長四郎は現在までの情報をリリに教えると、リリは膝から崩れ落ちた。
「あらぁ~刺激が強かったかしら」
「刺激が強かったかしらじゃないし。リリ、大丈夫?」
「だ、大丈夫」と答えてはいるが、リリは顔面蒼白の状態であった。
「ラモちゃん。今日の所は帰りな」
「分かった。リリ、帰ろう」
 珍しく長四郎の言う事に従う燐は、リリを連れてその場を後にした。
「長さん、良いですか?」
「何?」
 絢巡査長に呼ばれて、長四郎が駆け寄る。
「実はゴミ袋の中から見つかったのは、服だけなんです」
「凶器はなかったというわけか。じゃ、彼に凶器の在りかを喋ってもらいますか」
 長四郎は何か秘策があるといった感じの顔で、血塗られた服を見るのであった。
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