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第拾玖話-有名

有名-13

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 時間は少し遡り、警視庁に着いた長四郎は命捜班の部屋に居た。
「一川さん、どうです? あの馬鹿者共の正体掴めましたか?」
「今、少年課に問い合わせ中」
 一川警部は自分専用のマグカップに、コーヒーを注ぎながら答える。
「そうですか。あ、そうそう。イチゴンと接触してきましたよ」
「イチゴン? カネゴンの親戚かなんか?」
「違いますよ。夢川苺の呼び名らしいっすよ。知らないですけど」
「カネゴンの親戚やないとね」少し残念そうな感じを出しながら続ける。
「そん夢川苺ちゃんの事なんやけどね。そっちは調べ着いたよ」
「おっ、どうでした?」
 興味深々といった感じで、長四郎は結果を聞く。
「長さんの推理通りで、彼女は昔、相当やんちゃしとったらしい」
「そうでしたか。じゃあ、彼女のお友達の可能性が高いですね」
「順当に行けばそうなるったいね」
「彼女の地元どこでしったけ?」
「湘南の方やったね」
「湘南ですか・・・・・・湘南」
 長四郎は長考モードに入る。
 一川警部はそんな長四郎を黙ったまま見つめる。
「一川さん、湘南から移動するのに何を使います?」
「車、バイクやない?」
「そうですよね。でも、走って逃げたんですよねぇ~場所は撮影スタジオスタッフ専用の駐車場でしたからどうやって中に入ったんだろうと思いましてね」
「あー確かに気になるねぇ~」
「あの撮影スタジオの入場履歴を調べてもらえませんか?」
「了解。すぐ最寄りの所轄署に頼むけん」
 一川警部は撮影スタジオ近くの警察署に照会を依頼する間、長四郎は使い捨てカップにコーヒーを注ぎ入れる。
「長さん、OKが出たけん。安心してくらい」
「どうもです」長四郎はそう言いながら、コーヒーに口を付ける。
「おっ、これが長さんの求めとった資料」
 一川警部は、取り寄せた夢川苺の前歴が記載された資料を長四郎に手渡す。
「見せてもらおうか。湘南ヤンキーの実力とやらを」
 長四郎は赤い彗星のモノマネをしながら、資料に目を通し始める。
 夢川苺の前歴は次のようなものであった。
 湘南生まれ、湘南育ちの苺の不良行為は15の夜から始まった。
 それまで品行方正だった苺は夜遊びを覚えたのだ。地元の先輩が乗り回すバイクの後ろに乗り風を切って走り回っていた。
 ここまでは、可愛いものであった。苺の不良行為はエスカレートしていく。
 未成年飲酒、喫煙をし、終いにはシンナーに手を出す始末。喧嘩、万引きと不良のエリートコースを着実に歩んでいき、スカウト前の18の年には湘南ヤンキーのNo.2に値する地位にまで昇り詰めていた。
 そして、今の事務所から竹下通りでスカウトされ芸能界入りを果たしたと同時に過去の経歴を抹消させたらしい。
 経歴抹消とは言っても、地元のお友達に箝口令を敷いただけの事なのだが・・・・・・
「成程」
 読み終えた長四郎は、うんうんと頷いて資料を机の上に置き一川警部にある提案をした。
「一川さん、腹減りません?」
「まぁ、お腹減ったけど。急にどうしたと?」
「行きましょう。弁当屋」
 長四郎は椅子から立ち上がると一川警部を連れ出し、弁当屋へと向かった。
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