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第弐拾参話-会長

会長-2

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「被害者は、変駄世高校に通う野古 駿之介のぶる しゅんのすけ君。18歳。高校三年生です」
 絢巡査長から被害者の身元説明を受ける長四郎は、上の空といった感じで話を聞いている。
「あんた、絢さんの話聞いている?」燐にそう問いかけられて「勿論」と返す長四郎はテーブルに載っているオードブルの皿に目を向ける。
「この中に毒物が入っていたの?」
 長四郎の問いかけに絢巡査長は「それはまだ調査中です」とだけ答える。
「ふ~ん」
「で、犯人の目星はついた?」
「ラモちゃん。それはいくら何でも無理でしょうよ」
「私もそう思う」
「そうですよね。情報が少なさすぎますもんね」
「今回の事件は、無差別殺人事件なのか。それとも、殺された男子高校生だけを狙って起こされた事件なのかどちらだと思いますか? 長さん」
 絢巡査長に意見を求められた長四郎は、口をへの字口にして天井を見上げて少し考え回答した。
「無差別だとは思えないけどな。まぁ、一人だけ無差別に殺すといった感じの場合だったら話は別だけど」
「一人だけ無作為に殺すのであれば、他の場所でも同じ事をしているはずですもんね」
「その通り。だから、今回、殺された男子高校生だけが狙われた可能性が高いんじゃない? これから、他の所で事件が起きれば話は別だけど」
「そうですね。あれ、ラモちゃんは?」
 いつの間にか姿を消した事に気づいた絢巡査長は、周辺を見回す。
「ほっときゃ良いよ。どうせ、名探偵ごっこでもしているんだろ?」
 その長四郎の言葉通り燐は、一人単独行動で変駄世高校の生徒に聞き込みを行っていた。
 燐が偶々声を掛けたのは、生徒会で書記を担当している栗手 恒くりて わたる、高校一年生である。
「へぇ~ 彼、生徒会長だったんだ」
「はい、そうです。とは言っても半年前まで、でしたけどね」
「生徒会長って事は、何か恨まれるような事したの?」
「確かにそう思われるかもしれませんが、そう言う人ではないですよ。あの人は。でも・・・・・・」と口幅ったい感じになる栗手。
「え、何?」
「他校の人に言うような話では、ありませんから」
 燐の質問をはぐらかせた栗手は、「もう良いですか? これから、元会長の葬儀の対応について、生徒会で今後についての話があるので」と燐の元から去っていった。
「ここの生徒会。きな臭いな」
 燐はしたり顔で生徒会室に向かう栗手を見つめていると「何が、きな臭いの?」そういきなり問いかけられ、「きゃっ!」と驚いて飛び上がる。
「何も驚くことないでしょう。何か良い情報聞き出せた?」
 長四郎が問いかけると「さぁね?」と首を傾げて燐は一人どこかへと向かっていった。
「人を呼んどいてそれはないよな」
 長四郎も燐とは別行動を取る事にし、校内を散策しに動き出した。
「さぁ~て、どこから攻めましょうかねぇ~」
 左右を見て、どっちに動こうか考えていると、肩を叩かれる。
 振り向くと、一川警部がニコニコ笑顔で立っていた。
「一川さん、何かあったんですか?」
「長さんが来とうとって聞いてね。今んとこ分かっている情報を教えよう思うて、声掛けったったい」
「それは、どうも」
「で、被害者の事は絢ちゃんから説明は受けとうとやろ?」
「はい。その他については何もですけど」
「どこから説明しおうかなぁ~」
「じゃあ、被害者の交友関係は?」
「交友関係についてなんやけど、先生達の話やと成績優秀、品行方正。あんなに良い生徒はおらん言うくらい評判が良いと」
「妬み嫉みで殺されたのか・・・・・・」
「う~ん。あたしらも犯人の目星がつかんので困っとうと」
「でしょうね。困りましたなぁ~」
 長四郎と一川警部は二人揃って、頭を抱える。
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