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第弐拾参話-会長

会長-13

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 事件発生から一週間が経過した。
 死体の検案も終わり、野古の遺体は家族の元へと返され通夜が執り行われていた。
 学校の生徒を代表して生徒会のメンバーも通夜に参列し、粛々と行われる通夜の中、関係者ではない二人が紛れ込んでいた。
 二人共、喪服姿ではあるが、サングラスを掛け周囲の参列者からも煙たがられた目で見られていた。
「ねぇ、私達、浮いてるよ」
 小声で隣に座る長四郎に話しかけると「あぶない刑事みたいで、カッコいいじゃん。それより、あれ見てみ」長四郎が指さす先には、大泣きする水野の姿があった。
「良い先生だね」燐は思ったことを率直に告げると「ああ、良い先生だ。打って変わって隣の先生はドライだねぇ~」泣いて取り乱す水野と違い、付都はどこかスッキリした顔で野古の生前の写真を真っ直ぐ見つめていた。
「取り敢えず、出ようぜ」
「分かった」
 長四郎の提案に乗っかる燐は、式場を後にした。
 式場を出てすぐに、サングラスを外す二人。
「なんにも、手掛かり得られずって感じだね」
「そうでもないさ。ラモちゃん、精進落としして帰ろうか」
「何か分かったの? 教えてよ」
「ま、おいおい分かるさ。それより、一川さん達も飯に誘ってよ」
「ホントにめんどくさい奴だよね。あんた」
 燐はそうぶつくさ文句を言いながら、通話アプリのグループメッセージで招集をかける。
 こうして、近所の回転寿司屋に集合した四人。
 カウンター席に並んで座り、各々好きな寿司を取る。
「で、長さんが呼び出したって事は、なんか理由があるとやろ?」
 一川警部は、ヒラメの寿司が載った皿を取りながら質問する。
「Yes. 犯人のある程度の目星は付きましたよ」
「ウソッ!!!」燐が一番驚いて見せる。
「ホント、ホント」
「誰なんです?」絢巡査長の問いに「栗手って子と付都先生の二人」と答えた長四郎はイカの寿司を口に入れる。
「根拠は?」
「まず、栗手君は事件が起きてすぐにラモちゃんに接触してきた事でしょ。そんで、先生については俺の勘」
「勘って・・・・・・」燐はあまりにも適当な推理に呆れる。
「栗手君が犯人ってのは、分かりますよ。一年前の事件の親族ですから。でも、先生って」
 絢巡査長も腑に落ちないといった反応を示す。
「私的には、水野先生が怪しいと思うんだけど。あんだけ、わんわん泣くんだよ。カモフラージュの演技にしか見えないもん」
「そだねー」
 長四郎は適当な返事をしながら、次に食べる玉子の寿司を手に取る。
「あたしらは、何を調べればよかと?」
「毒物の購入履歴。多分、毒物を手に入れたのは先生だと思うんで。ああ、一応、理科室の薬品管理のチェックもお願いしますね。学校だと簡単に手に入りますから」
「分かったばい。他には?」
「他にはぁ~」
「付都先生と栗手君のお兄さんの仲についてですかね」燐が一川警部に答える。
「それは俺達が調べるんで、頼んだことを調べてください」
「ちょっとぉ~」
「ま、今後の方針が決まったって事なんで。ラモちゃん、ごちそうさん」
 長四郎は一足先早く席から離れたるのだった。
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