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初デート⑴
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「久しぶりだね、真野くん。また来てくれて、嬉しいよ」
まんぷく屋の夕花里さんが、お冷やをテーブルに置きながら、声をかけてくる。
昨日初めて、ボクから先生に連絡を取った。今までは年上の先生に対して、気軽に誘ってはいけないという気持ちがあって、ずっと先生から誘ってくれるのを待っている状態だった。
でも、それじゃダメだと思った。
ボクは、先生のことが好きだ。
先生と再会してからずっと考えていたけど、結局最後にはこの結論がしっくりきた。先生と再会する前には、もう戻りたくないし、先生と生徒という関係からも、何か1歩進みたい気持ちがあった。
「今日は持ち帰ってる仕事はないか?」
「あ......ははっ......ないです......。この間は、失礼な態度をとってすいません......」
この間も、家でする仕事なんて特になくて、あの場から逃げるためについた、とっさの嘘だった。
今日は、来店したのが少し遅めの時間だったこともあり、もう客はボクらしかいない。珍しく泰輔さんが、厨房から出てきて、注文した日替わり定食の生姜焼きを持ってきてくれた。
「真野くん、いらっしゃい。しばらく真野くん来てなかったから、こいつ寂しがってたよ」
料理をテーブルに置き、泰輔さんは親指で先生を指す。
「えっ......」
「なっ......何言ってるんだよ!泰輔!!」
「ははっ。春人は違うの?オレは真野くん来てくれなくて、寂しかたよ~」
泰輔さんがそう言うと、先生は黙り込んでしまう。
「えっ、あ、すいません。ボクも泰輔さんの料理食べたかったです」
「それは、嬉しいな。生姜焼きも自信の料理だから、温かいうちにどうぞ。ごゆっくり~」
そう言うと泰輔さんは、先生を見てニヤニヤしながら、厨房に戻っていく。
「いただきます。……ん。美味しい。家ではなかなかこの味は、出せないんだよなぁ......」
泰輔さんが言うように、生姜焼きはお肉にタレがよく絡みついて、とても美味しい。
「真野は、本当に美味しそうに食うよなぁ」
そう言われて、先生の方を見ると、目が合う。ずっと、先生に食べてるところを見られていたのかと思うと、照れてすぐにそらしてしまう。
「そ、そうですか......。でも、すっごく美味しいんですよ」
「食べることも、確か作ることも、好きなんだよな?」
「そうですね。どっちも好きです。だから気に入った味は、どうやって作ってるのかなって考えながら、食べちゃいます。先生も、自炊するんですか?」
「オレは、全然だな~。食べるの専門。あ、でも、出来ないわけじゃないんだぞ」
少し強がっている感じの先生は、何だか可愛くて笑ってしまう。
「あ。信じてないだろ。まあ、あんまり説得力はないもんな。でも真野の料理は食べてみたいなぁ......」
「じゃあ、その時は先生も料理してくださいよ」
「いや......オレのはいいよ......」
バツの悪そうな先生の顔を見て、また、笑ってしまった。
まんぷく屋の夕花里さんが、お冷やをテーブルに置きながら、声をかけてくる。
昨日初めて、ボクから先生に連絡を取った。今までは年上の先生に対して、気軽に誘ってはいけないという気持ちがあって、ずっと先生から誘ってくれるのを待っている状態だった。
でも、それじゃダメだと思った。
ボクは、先生のことが好きだ。
先生と再会してからずっと考えていたけど、結局最後にはこの結論がしっくりきた。先生と再会する前には、もう戻りたくないし、先生と生徒という関係からも、何か1歩進みたい気持ちがあった。
「今日は持ち帰ってる仕事はないか?」
「あ......ははっ......ないです......。この間は、失礼な態度をとってすいません......」
この間も、家でする仕事なんて特になくて、あの場から逃げるためについた、とっさの嘘だった。
今日は、来店したのが少し遅めの時間だったこともあり、もう客はボクらしかいない。珍しく泰輔さんが、厨房から出てきて、注文した日替わり定食の生姜焼きを持ってきてくれた。
「真野くん、いらっしゃい。しばらく真野くん来てなかったから、こいつ寂しがってたよ」
料理をテーブルに置き、泰輔さんは親指で先生を指す。
「えっ......」
「なっ......何言ってるんだよ!泰輔!!」
「ははっ。春人は違うの?オレは真野くん来てくれなくて、寂しかたよ~」
泰輔さんがそう言うと、先生は黙り込んでしまう。
「えっ、あ、すいません。ボクも泰輔さんの料理食べたかったです」
「それは、嬉しいな。生姜焼きも自信の料理だから、温かいうちにどうぞ。ごゆっくり~」
そう言うと泰輔さんは、先生を見てニヤニヤしながら、厨房に戻っていく。
「いただきます。……ん。美味しい。家ではなかなかこの味は、出せないんだよなぁ......」
泰輔さんが言うように、生姜焼きはお肉にタレがよく絡みついて、とても美味しい。
「真野は、本当に美味しそうに食うよなぁ」
そう言われて、先生の方を見ると、目が合う。ずっと、先生に食べてるところを見られていたのかと思うと、照れてすぐにそらしてしまう。
「そ、そうですか......。でも、すっごく美味しいんですよ」
「食べることも、確か作ることも、好きなんだよな?」
「そうですね。どっちも好きです。だから気に入った味は、どうやって作ってるのかなって考えながら、食べちゃいます。先生も、自炊するんですか?」
「オレは、全然だな~。食べるの専門。あ、でも、出来ないわけじゃないんだぞ」
少し強がっている感じの先生は、何だか可愛くて笑ってしまう。
「あ。信じてないだろ。まあ、あんまり説得力はないもんな。でも真野の料理は食べてみたいなぁ......」
「じゃあ、その時は先生も料理してくださいよ」
「いや......オレのはいいよ......」
バツの悪そうな先生の顔を見て、また、笑ってしまった。
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