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第9話
しおりを挟む衣装部屋を開けるとそこには、すでにたくさんのドレスに靴、ワンピースが用意されていた。
「アメリア様のサイズがわからなかったので、とりあえず色んなサイズに、色んな型を取り揃えたんですが…既製品なので、合わない所は直しますね。
しかし…アメリア様は細いですねぇ。
それなら…このワンピースなんか良いかもしれませんね。じゃあ、着替えましょうか?」
と私の肩のストールを外す。
ローラさんの目が私の肩口に向けられた瞬間、私は自分のワンピースが破れていた事を思い出した。
色んな事に驚き過ぎてすっかり失念していた。
思わず隠すように肩に手を置いたが、時既に遅しだ。
しかし、それを見てもローラさんは何も言わなかった。
「自分1人で出来ます!」
と断る私に、
「私の仕事を盗らないで下さいな」
と言って、さっさと私を着替えさせた。
さっきのワンピースを見て、どう思っただろう…。
でも、これから真実を話すのだ。
もしかしたら、公爵家には相応しくないと追い出されるかもしれない。
…しかし追い出されるにしても、狼の居る森は避けたい。
どうにか王都まで送って貰えるように頼んでみようと心に決めた。
着替えが終わると、ローラさんは髪の毛も整えてくれた。艶のない私の髪は纏め難かっただろうに、ローラさんは綺麗に編み込むと、1つに結び、肩の横へと流してくれた。
「本当に綺麗な髪の色ですねぇ。銀色の髪とは」
と誉めてもくれた。
お世辞でも母と同じ髪色を誉めて貰えるのは初めてで嬉しかった。
着替えが終わり、私は応接室へと通される。
私は長椅子に腰かけるが、誰も他の人は腰かけない。
私も立とうかと思ったが、ここでは私は公爵様の婚約者。
きっと、私が許可しなければ、ユージーン様も、メイナードさんも腰をかけられないのだと気づいて、私は慌てて2人に腰かけて貰うようにお願いした。
2人は私の前に座るといきなり、
「お願いします!どうか、どうかお坊ちゃまを見捨てないで下さい!」
とメイナードさんが私に頭を下げ、
「どんなにお金を使って頂いても、贅沢しても構いません!
なんなら王都のタウンハウスでアメリア様だけ住んで頂いても構いません。
どうか、この結婚を白紙に戻すなどと、言わないで下さい!」
とユージーン様も頭を下げた。
私は、
「ま、待って下さい!頭を上げて下さい!私、そんな話しをするつもりでお時間を作って頂いた訳じゃないんです!」
と慌てて2人に頭を上げて貰った。
謝るのは私の方なのだが…。
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