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鬼より怖い
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結局、足元で意識を失った女は救急車で運ばれて、俺たちは呆然としながらさっき起きた騒動を中川さんに説明しに行った。
「結局、あそこに住んでた若い夫婦は、あの執着の凄まじい女から逃げるために、夜逃げ同然に家財道具を置いて行方を眩ましたんでしょうか。」
俺がそう言うと、中川さんは俺にウインクして言った。
「さっきは言えなかったが、表向きはそうなってる。あの若い夫婦はあの女から逃げるために、計画的に居なくなったみたいだな。いかにも蒸発したみたいにな。それであの女が騒いで警察沙汰になったんだ。最終的には夫婦の両親から事情を聞いた警察が、女をストーカー認定して、ましてやお腹の赤ちゃんに危険があるといけないからと言うことで、行方不明という形にしたんだ。
今回片してもらったのは、ちょっとした行方不明を装うダミー的な物品と不用品だ。直ぐに片づけると、あの危険な女が私の所にも押しかけて、もっと面倒だったろうからな。今回は預かり金でまかなってた家賃分の半年経ったし、そろそろ片付けようと光一に頼んだんだ。
だが、おかしな現象が起きる様になっていた原因もあの女だったとはな。不動産を長くやってると、案外この手の話は有るけど、生きてる人間の執着から起きるとは俺も知らなかったよ。」
黙って聞いていた真己が光一を見つめて言った。
「あなたの甥御さんは生命力が強いので、その手の怪しいモノも引き寄せてしまうのです。光に集まる虫のようにね。今回も他の人間なら何日も寝込んでしまったでしょう。しかし光一さんは食欲もあったし、あまり響いていませんでしたね。ふふ。大したものです。」
光一は頭を掻きながら、俺ってヤバかったの?なんて他人事の様にしてるから、俺たちはホッとした事もあって笑ってたんだけど、俺はふと気になった。俺は真己の方を見ると尋ねた。
「なぁ、あの女の人はどうなったんだろう。あの悪いものを呼ぶ執着は無くなるのかな。」
真己は俺を見つめて言った。
「…どうだろうね。今回の若い夫婦への執着は祓いで取れたかもしれないけれど、あの思い込みがちな性格は治らないだろうね?そうなるとまた別の執着を育てる可能性が有るから、僕には何とも言えないな。」
光一は思い出したのか、ぶるりと震えて言った。
「俺、多分お化けより怖かった。人があそこまで壊れちゃうとか、全然理解出来ないよ。美人だったから、余計に凄味があって鬼みたいで。」
真己はクククと堪えきれずに笑うと妖艶に微笑んで言った。
「そうだね、案外鬼の方が可愛い気があるんじゃないかな?ね、一誠。」
俺は真己の悪戯っぽく光る瞳を見つめながら、可愛い気とは…と、ぼんやり考えていた。そして身体を疼かせるその視線に震えたんだ。
「結局、あそこに住んでた若い夫婦は、あの執着の凄まじい女から逃げるために、夜逃げ同然に家財道具を置いて行方を眩ましたんでしょうか。」
俺がそう言うと、中川さんは俺にウインクして言った。
「さっきは言えなかったが、表向きはそうなってる。あの若い夫婦はあの女から逃げるために、計画的に居なくなったみたいだな。いかにも蒸発したみたいにな。それであの女が騒いで警察沙汰になったんだ。最終的には夫婦の両親から事情を聞いた警察が、女をストーカー認定して、ましてやお腹の赤ちゃんに危険があるといけないからと言うことで、行方不明という形にしたんだ。
今回片してもらったのは、ちょっとした行方不明を装うダミー的な物品と不用品だ。直ぐに片づけると、あの危険な女が私の所にも押しかけて、もっと面倒だったろうからな。今回は預かり金でまかなってた家賃分の半年経ったし、そろそろ片付けようと光一に頼んだんだ。
だが、おかしな現象が起きる様になっていた原因もあの女だったとはな。不動産を長くやってると、案外この手の話は有るけど、生きてる人間の執着から起きるとは俺も知らなかったよ。」
黙って聞いていた真己が光一を見つめて言った。
「あなたの甥御さんは生命力が強いので、その手の怪しいモノも引き寄せてしまうのです。光に集まる虫のようにね。今回も他の人間なら何日も寝込んでしまったでしょう。しかし光一さんは食欲もあったし、あまり響いていませんでしたね。ふふ。大したものです。」
光一は頭を掻きながら、俺ってヤバかったの?なんて他人事の様にしてるから、俺たちはホッとした事もあって笑ってたんだけど、俺はふと気になった。俺は真己の方を見ると尋ねた。
「なぁ、あの女の人はどうなったんだろう。あの悪いものを呼ぶ執着は無くなるのかな。」
真己は俺を見つめて言った。
「…どうだろうね。今回の若い夫婦への執着は祓いで取れたかもしれないけれど、あの思い込みがちな性格は治らないだろうね?そうなるとまた別の執着を育てる可能性が有るから、僕には何とも言えないな。」
光一は思い出したのか、ぶるりと震えて言った。
「俺、多分お化けより怖かった。人があそこまで壊れちゃうとか、全然理解出来ないよ。美人だったから、余計に凄味があって鬼みたいで。」
真己はクククと堪えきれずに笑うと妖艶に微笑んで言った。
「そうだね、案外鬼の方が可愛い気があるんじゃないかな?ね、一誠。」
俺は真己の悪戯っぽく光る瞳を見つめながら、可愛い気とは…と、ぼんやり考えていた。そして身体を疼かせるその視線に震えたんだ。
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