本物の聖女が来たから用済みだと言われたので、出張聖女は自分の国に帰ることにしました

小倉みち

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第1章

楽しみ

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 ともかくこの職場には、酸性洗剤とアルカリ性洗剤の両方を使って丸ごと洗い流したいくらい鬱陶しいことが山積みなのだが、いかんせんお人好しな族長の頼みだ。


 そして私は、族長に頭が上がらない。


 その族長に頼まれた仕事とあって、私はここに2年もい続けているということだ。


 いい加減自分の国に帰りたい。

 でも、なんやかんやで契約が更新に更新を重ね、私は現在ここを住みかとしている。


 私の唯一の楽しみは、この国の第一王子。

 今年で10歳。


 この腐った国で掃き溜めに鶴かと思うほど純朴な少年だ。


 明るくて可愛い。


 子どもが出来たら、ぜひともああいう感じの子がほしい。


 それと、彼から時々貰えるご飯。


 普段「出張聖女」として支給されるご飯はもう飽きた。


 パサパサのパンに冷たいスープ。

 いくら人間界の食料が美味しいとはいえ、毎日毎日それじゃ普通に飽きる。


 さすが一国の王子といったところか、殿下が持ってきてくれる料理はとても美味しかった。


 少なくともパサパサじゃなかった。


 パサパサじゃないのは、本当に有難い。


「おいっ、仕事しろよ。このクソ女」

「あ?」

「えっ」


 ぼんやりしていたせいか、先ほどの兵士に話しかけられたのに気づかなかった。

 それどころか苛立つあまりメンチを切ってしまい、それを目撃した兵士が困惑している。


 おっと。

 危ない、危ない。


 私は咳払いし、にこやかに微笑む。


「それはそれは、大変失礼しました。それでは私は仕事をしますので」


 仕事と言っても、ただ魔力を魔法具に送り続けるだけ。

 他にもいろいろ細かいことはあるけど、主にそれ。


 魔法具に魔力を送り続ける。

 例えばその魔法具がその土地を豊かにするものだったら、そこに大量の魔力を注いで、土地の栄養分を豊富にする。

 水を綺麗にするものであれば、その水を濁り1つないものとする。


 そんな強い威力を持つ魔法具だから、こういう国だとものすごく高価で、だからこそ水をかけてきたこの男は契約が終われば真っ先にぶん殴ってやりたいと思っている。


 ――にしても。

 用事ないんだったら、早く出て行けば良いのに。


 兵士は私の部屋に無断で入ったかと思えば、黙ったまま私の部屋でずっと待機している。


 気が散るんだよなあ。

 傍にいられると。


「あの」

 私は我慢出来ずに声をかけた。

「何か御用ですか?」

「陛下がお呼びです」

「は?」

「陛下がお呼びです。さっさとご用意してください」


 なんだこいつ。

 じゃあ、それを先に言えよ。



 
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