本物の聖女が来たから用済みだと言われたので、出張聖女は自分の国に帰ることにしました

小倉みち

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第1章

陛下

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 魔族は基本的にショートスリーパーだ。


 だからと言って寝ないで生きていけるというわけでもなく、この万年寝不足状態で少しイライラしながら、私は陛下の元へと急ぐ。

 この移動時間も、私には監視役がついている。


 さっきの兵士だ。


 偉そうな顔で、城の廊下を闊歩している。


 あーもう、鬱陶しい。

 イライラする。


 だいたいなんで今呼び出すんだよ、あのジジイ。


 私は心の中で、激しく暴言を吐く。


 あーもう、本当にウザい。


 私は早歩きで王座の間に向かい、巨大な扉を守る兵士に声をかける。


「国王陛下のお呼び出しにまいりました。扉を開けてください」


 こちらは出来るだけ親しみを込めて話しかけたのに、扉の前に立つ兵士たちは、至極面倒くさいと言わんばかりの仏頂面で扉を開ける。


 ギギー。


 油を差していない、金属の擦れる嫌な音が鼓膜に響く。


 扉の向こう側は、盛大に大きな王座の間だった。

 レッドカーペットを真っすぐに引いたその先に、豪奢な黄金の王座が設置されていた。

 そこに座っているのは、中年の小太りな男性。


 私は数歩前に進み、深くお辞儀をする。


「おはようございます、陛下」

「遅かったではないか」

 国王は鷹揚に言った。

「呼びに行ってから、5分かかった。すぐ来いと申したであろう」

「申し訳ありません」


 それは、あんたの部下が何も言ってこないからでしょうが。


 いや、これは嫌がらせだ。

 あの兵士がわざとすぐに言わなかったのは――。


「わしは忙しい。その5分で、わしが一体なんの仕事が出来たと思う?」


 ほらね。

 わかってた。

 いつもの十八番だ。


「その時間を無駄にしたのは、契約違反だ。よって今月の報酬を3分の1減額する」

「……申し訳ございません」


 この男のやり口は姑息でいかがわしい。


 こうやってちまちま私の給料を減らしていくのだ。


「なんだ、その言い方は」


 どうやら私の謝罪の言葉が気に食わなかったらしい、国王は顔をしかめる。

「わしは国王だぞ。お前のような1小娘が本来会話出来ない人間だ」


 知るか。

 私は妖精族だ。


 私は本来あんたが会話すら出来ない存在なのよ。


 だが、我慢して怒りを飲み込む。


「存じております」

「ふん。自分の更年期で機嫌が悪いくせに、人に八つ当たりするとは、聖女様も随分と偉くなったものよ」


 国王の言葉を聞いて、傍に仕える連中が私を嘲笑する。

「更年期だなんて、おお怖い怖い」

「やはり女というものは、周期が早いですからなあ」

「歳を食った女はすぐにキレる」

「賞味期限切れですね」


 爆笑している連中は、全員この国の大臣だ。

 全員、私の2回りほど歳が上の「オジサン」だった。
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