本物の聖女が来たから用済みだと言われたので、出張聖女は自分の国に帰ることにしました

小倉みち

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第1章

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 大きな目はぎょろりと私に視線を向ける。

「な、なんだそれは!?」


 国王が叫ぶ。

「ひぃいっ。化け物!」

「誰が化け物だ」

 野太い声で、それはそう言った。


 目は国王たちを思い切り睨みつける。

「ひっ」


 ジョォーッという不快な音が聞こえる。

 そちらの方に目を向けると、国王が失禁していた。


 めちゃくちゃ高そうな国王の正装に濃い色の染みが出来、そこから黄色っぽい水たまりが出現していた。


 ……汚っ。


「フィオーネさん」


 誰もが腰を抜かして悲鳴をあげる中、勇気あるルドルフ殿下が尋ねてきた。

「その……、その方は?」


 彼はキラキラした目で、天井を見上げている。


 結構この子、魔族とか神話に興味があるのかもしれない。


「私のお友達ですよ、殿下。龍族なの」

「龍?」


 龍は大きく吠えた。


 轟音が響き渡る。

 天井に空いた穴から、彼のごつごつとした巨大な羽が見えた。


 ルドルフ殿下は、感嘆の声を漏らした。

「凄い! 初めて見た!」

「凄いでしょう!」


 私は自慢げに言う。

「私を迎えに来てくれたのよ。わざわざ」

「お前が呼び出したんだろ、馬鹿」


 龍が私に向かって言う。

「でも、龍族は魔界にいるはずじゃ」


 殿下は疑問を口にした。

 私はそれに対して、丁寧に答える。

「大半はそうだけど、一部が取り残されたのよ。それの末裔が彼よ。名前はね――」

「フィオーネ」

 彼は私を非難する。

「何してる。俺を呼び出しておいて無駄話か」

「ごめんごめん」


 私は笑って謝った。

「ごめんね、じゃあ帰ろっか」


 私は天井の穴から外に出る。


 久しぶりの解放感。

 青空が、目に眩しい。


 これが自由か。

 最高。


 私は龍の背中に乗り、城の中で目を丸くする殿下に手を振った。

「さようなら、殿下――もう二度と会うことはないけど。金平糖美味しかったわ。本当にありがとう!」


 龍はもう一度咆哮し、翼を大きく振って上昇した。

 龍の翼のせいで、ただでさえボロボロだった城の屋根が吹き飛ばされていく。


「バイバーイ!」


 私はせいせいした気分で最後、このクソみたいな国に別れの挨拶をしてやった。





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