本物の聖女が来たから用済みだと言われたので、出張聖女は自分の国に帰ることにしました

小倉みち

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第1章

道中②

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 私は困って首を少し傾ける。


 ギルとは、幼少期から仲良くしているが。


 数年前から、同じことを何度も言われるようになった。

「一緒に魔界へ行かないか?」


「うーん」

 私は唸る。

「でも別に、私人間嫌いじゃないからなあ」


 ギーリウス王国の連中があまりにもクズだっただけで、本当は人間もそれなりに良い人たちだと思っている。


 ただ精神的、肉体的に弱っちいだけで。


「……はあ」


 ギルは吐息を漏らす。

「お前、妖精族の族長の考えに染まってんじゃねぇの?」

「えー、そう?」

「昔のお前は、そうじゃなかっただろ」

「昔って、子どものころの話でしょ?」


 確かにあのころは、族長の発表した「出張聖女」という新たな政策に反対する者の1人だった。


 正直、族長がなぜあれだけ人間に固執するのか、あのころは全然わからなかった。

 今もだけど。


 あのころ、人間界との接点がなくなって飢えていた私たちにとって、人間は私たちを忘れた憎むべき存在としてみんな認識していたのに。


 また人間と関わっていこうという族長の言葉は、本当に理解できなかった。


「だけど、族長にそう言われてしまえば、ねえ?」


 私はギルに同意を求める。


 族長は、本当に良い方だ。

 幼いころに両親を亡くした私を育ててくれたのも、怪我をしてほかの龍族の群れからはぐれてしまった幼いころのギルを助けてくれたのも、全部族長だった。


 私同様、妖精族はみんな族長を尊敬している。

 結果、みんな最後は族長の意思を尊重したのだ。


「まあ、それはそうだが」

「とりあえず、ギーリウス王国の件はもう済んだ話だし」


 私はポケットから、ブルーダイヤモンドを取り出す。

「一応報酬も貰ったし、もうあそことはおさらばよ」


 ルドルフ殿下のことは気がかりだが、所詮は人間だ。

 種族の違う私がどうこう出来る問題でもないし。

「あーあ」


 私は大きく伸びをする。

「ようやく戻れるわ」
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