本物の聖女が来たから用済みだと言われたので、出張聖女は自分の国に帰ることにしました

小倉みち

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第2章

危険 ~ルドルフ視点~

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 何か具体的な策があるわけじゃなかった。


 父の所有する兵士たちは、みんな父の命令でしか動くことはない。


 僕は一応第一王子だけれど、まだ子どもだ。

 自分の兵士や部下を持っているわけじゃなかった。


 だけど、居ても立っても居られなかったのだ。


 僕は護衛の目を盗んで、城を抜け出した。

 度重なる天災で城の中は大混乱だったので、城を抜け出すのはとても容易だった。


 ――しかし。


 城の中から見る世界も酷かったが、実際それを目の当たりにすると。


 自分が、非力であることに気づいた。


 僕はまだ子どもで、特別強い魔力を持っているわけじゃない。

 サバイバルの経験があるわけでも、人を救えるほどの筋力が備わっているわけでもない。


 僕は、ただの哀れな1人の人間だった。


 町は、阿鼻叫喚の嵐だった。


 地震で地盤沈下し、地面はボコボコだった。

 大きな建物が倒れ、誰かが下敷きになっている。


 泣き叫ぶ人々、怒号、悲しみ……。


 地獄。


 あっけに取られていた僕は、いとも簡単に人々に捕まった。


 彼らは城の者を憎んでいた。


 無理もない。

 もし父がちゃんと迅速に行動していれば、聖女様を追放しなければ。


 こんなことは、怒らなかったかもしれないのに。


 頭が痛かった。

 身体の節々も。


 僕は気絶していてわからなかったけれど、殴られたり蹴られたりしたのだろう。


 おかげで、身体が動かなかった。


 視界も悪い。

 ぼんやりしている。


 遠くの方で、声が聞こえてきた。


 僕をどう処理するかの話し合いをしているらしい。


 みんな、意見が食い違っていた。


 僕を人質に、国王を引っ張り出そうとする者。

 僕を殺そうとする者。

 僕を立てて、国家を転覆しようとする者。


 だけど、そのどれもはきっと難しい。

 船は勢いよく沈んでいっている。


 この天災を止めない限り、この国は救われない。

 だけどそれは不可能だ。


 ゆっくりと、絶望が僕の心を支配していく。

 瞼はどんどん重くなり、僕は意識を手放していった。


 もう、無理かもしれない。

 僕は何も出来ない。


 きっとここで、国の者たちと一緒に、僕は――。


「良かったぁ」

 突然、泣きそうな女性の声が耳に届いた。

「まだ生きてたのね。本当に良かった」

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