【完結】世界で一番愛しい人

ゆあ

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「ミツ、側に俺が居るとツラいんだろ?今日は、もう帰るけど、なんかあったら絶対連絡しろよ?あと、ちゃんと鍵はかけとけよ?
今日も玄関の扉開いてたから心配したぞ」

ハルくんの心配そうな声に少しだけ嬉しくなると同時に、シゲルさんが鍵も掛けずに出て行ったことを知ってしまう



番を持ったΩのフェロモンが、番以外に効かないってわかってはいるけれど、発情期ヒート中のΩの居る部屋に誰かが押し入って来たら対処出来ない

無理矢理犯されるだけならいい
物を取られるくらいならいい
でも、最悪殺されても文句も言えない

そんな状況を作った、不用心なΩ本人が悪いから…



心配気に僕の顔を見ているハルくんに軽く手を振り、扉が閉まるのを見送る
また一人ぼっちになってしまった部屋で、悲しさと寂しさを紛らわように愛しい人の匂いがしないワイシャツを鼻に押し付け、少しでも、僅かでも、大好きな彼の匂いを探るように嗅ぐ

「…ハァ…、シゲルさん…シゲル、さん…」

身体の奥からうずく火照りを逃そうと、ペニスに手を伸ばす
パンツの中は先走りでグチョグチョになっていて気持ち悪い
アナルも、物欲し気にしてるのが指で撫でただけでわかってしまう

こんな指だけじゃ足りない
シゲルさんの大きいので満たして欲しい


チェストの引き出しに隠していたバイブを取り出し、舐めて唾液で濡らしていく
1人で迎える発情期ヒートに耐える為に買ったモノ
本来なら必要じゃないモノ

ある程度濡れてくると無理矢理奥まで一気に捩じ込む
「ッ…っい、イタっ...」

ずっと受け入れることすらしていなかったアナルはキツく
無理に挿れたバイブを拒むように締め付けてしまう

「くっ…ぃ、んぐっ…いた、く…ない…痛く、ない…」
浅い呼吸を何度も繰り返して馴染むのを待ち、振動させるようにスイッチを入れる

「っ...あっあぅ...、イッタ、痛い...ひっ…」
静かすぎる室内に、自分の濡れた声と機械音だけが響いてしまう
自分の声に嫌悪感が増し、口を手で覆って声を押し殺す
「ん…ンンッ…ッ!」
ただこの熱を逃す為だけの行為
快感も昂揚もなく、ただの性欲処理
ただただ、発情した身体を無理矢理治める為だけの行為


「ひっ!イッ、ああぁっ!!」
何度目かの射精を終え、やっと熱を発散させ、落ち着いた身体に安堵する
開放感などなく、ただ倦怠感と虚しさだけが残る行為に力が入らない

「また、汚しちゃった…また、洗わなきゃ…また、匂いが消えちゃう…」
シゲルさんの服に吐き出してしまった自分の精液を見て涙が溢れる
後片付けも出来ぬまま、疲労感から落ちるように眠りについた





静かな寝息だけが聞こえる部屋の扉が開き、疲れて眠ってしまったミツを起こさないように静かに部屋に入る

ミツの出した精液と微かに感じるΩのフェロモンの匂いに悲し気な顔をしてしまう
「俺のモノになれば、こんなことにならなかったのに...」

日に日に痩せ細り、やつれていく幼馴染の額に張り付く髪を撫でて整えてやる
また苦し気な表情になるものの、起きることはなかった
蹲るように、身体を小さく抱き締めて眠る姿に愛しさと切なさを感じる

「絶対、助けてやるからな…
それまで、頼むから壊れないでいてくれ…」

祈るように小さな声で呟き、濡れたタオルで簡単にだが身体を綺麗に拭いてやる



ミツには帰ったと見せかけ、リビングで何かあった時の為に待機していた
ミツの切なげな声や泣き声を聞いて、何度も寝室に押し入ろうとしたが、なんとか踏み止まった


今、この関係を変えられると困る
ミツをこれ以上孤独に出来ない
俺だけでも、ミツの側に居てやりたい…


その気持ちから、シゲルに対しての怒りやミツへの悲しみを押さえ込むように、扉の前に座り込んで耐えた


苦し気に眉間に皺を寄せて眠るミツを綺麗にした後、今度こそ部屋を後にした
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