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2章
2章29話(130話)
しおりを挟む「次はドレッシングを作るぞ。オリーブオイル、塩、砂糖、酢、胡椒があれば簡単に出来る。まずは『味見をしながら』自分で作ってみろ。好みの味を覚えるのも良いだろうからな。ただし、胡椒を使いすぎると咳き込むから気を付けるように!」
一応お手本としてドレッシングを作り、それを上に掲げるグレン先生。
……好みの味……。あまり酸っぱすぎない、甘めの味が好きなんだけど……。その味に辿り着くにはどうすれば良いのかしら……。
「計量スプーン使えよー、まずはそこからだ!」
計量スプーン、大・中・小と並んでいるこの匙のことね……。とりあえず大きいものを手にとって、オリーブオイルを入れてみる。あ、危ない、溢れ出しそうになった。……そっか、ゆっくりと静かに注がないとダメなのね……。オリーブオイルの後は……お酢? うーん、酸っぱいのは苦手だから、これは少しで良いのかな……。グレン先生は味見をしながらって仰っていたけど、どの時点で味見はするものなのかしら……? あと塩と胡椒、砂糖ってもう入れても良いのかしら……。
「う~ん、やっぱりいつも食べている味には程遠いわ……」
「もう作ったの?」
「うん、でもダメだった」
何が足りないのかしら、とジーンが悩んでいる。……よし、私も入れてみよう。塩、胡椒、砂糖をちょっとずつ入れてかき混ぜる。そして味見をしてみると……うん、変な味!
味がぼやけているというか……。ドレッシングを作るって結構悩まないといけないのね……。うーん、味がぼやけているのだから、塩を足してみようかな。ええと、ちょっとずつちょっとずつ……。そして味見。……うーん?
「中々難しいだろう?」
グレン先生がそう言ってニヤリと口角を上げる。確かに難しい。
「だが、慣れてくれば目分量で作れるようになるし、他のドレッシングも作れるようになる。ついでに料理人の苦労もわかる。中々良い授業だろう?」
……なるほど。この料理の授業は、いつも作ってくれている料理人たちの苦労を知るもの……! ……なのかな?
でも、そうね。今までも美味しいと思って食べていたけれど……自分で作るとそれがとても大変なことなのだと理解出来る。……イヴォンがこの授業を選んでみてって言っていたのは、料理人たちの苦労を知ってもらうため……?
「……イヴォンは、いきなり孤児院に入れられたから、料理が全然出来なかったのよ」
「ジーン?」
「私たちがそうなるとは思っていないだろうけど、少しでも料理の腕があれば便利だと思ったから勧めてくれたのかもね……。……うーん、好みの味って難しいわ……」
……そうね。どうなるかなんてわからないものね……。そして何度も味見を繰り返すジーンに、私は眉を下げて微笑んだ。……本当、ドレッシングを作るのにもこんなに大変だとは思わなかった。
しょっぱくなり過ぎたドレッシングを見て、私は小さく息を吐いた。
オリーブオイルと酢を足して、味見。しょっぱさはマシになったけれど、今度は酸っぱい。……砂糖をちょこっと足して……。これだ! と思う味になる頃には、たくさんのドレッシングが出来上がってしまった……。
「大分マシになったかー? それじゃあ、そのドレッシングをサラダにかけて……」
いつの間に用意したのか、グレン先生はひょいひょいと出来上がった料理を置いて行った。スープと白身魚のソテーとバケット。バケットは鞄の中から取り出していたみたい。立派な昼食が出来上がった。
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