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2章
2章47話(148話)
しおりを挟む授業を終えた後にジーンも誘ってみたけれど、残念そうに眉を下げて断られた。レイチェル様とイヤリングの話し合いをするみたい。その後にシー兄様を誘うと、「もちろん構わないよ」と優しく言ってくれた。
そして、休みの日――……。
朝から晴れていて、お出かけ日和だ。私とイヴォンは私服に着替えて、朝食を食べてからジーンに「行ってきます」と声を掛けた。
「行ってらっしゃい、気をつけてね」
そう言って軽く手を振るジーンに、私たちも手を振り返す。
女子寮の入り口でディアが既に待っていてくれたから、私たちは慌てて近付いた。
「ごきげんよう、リザ、イヴォン」
「ごきげんよう、ディア。早いね」
「ごきげんよう、よく眠れた?」
そんな会話をしていると、シー兄様、カイン、ハリスンさんが私たちを迎えに来てくれた。みんなで挨拶を交わして、それから王都へと用意された馬車に乗って行くことに。アカデミーから王都へとは、王都の近くまでは送ってくれるようで、イヴォンがそのように手配してくれたみたい。
「王都を見るのは初めてなので、ドキドキするわ」
「そうなの?」
「ええ、観光する時間はなかったから……」
入学してから一週間ほどしか経っていないから、ディアにとっては初めての『お出かけ』のようだ。……わ、私たちと一緒で良かったのかな、とちょっと不安に思っていたら、ディアがにこにこと「誘ってくれてありがとう」と柔らかく言ってくれたので、誘って良かったと心から思った。
シー兄様とカインは、自身が用意した馬に乗っている。ハリスンさんはイヴォンの隣に座り、私とディアが向かう会う席に座っていた。
「それにしても、王都への観光が今日で良かったのかい?」
「え?」
私が首を傾げると、ハリスンさんは目を瞬かせた。そして、イヴォンに視線を向ける。イヴォンはくすくすと笑い、それを見たハリスンさんが肩をすくめた。
「今日だとなにか不都合があったのですか……?」
恐る恐る尋ねると、ハリスンさんは緩やかに首を横に振った。
「不都合ではないよ。ただ、少し賑やかかもしれないと思ってね」
「賑やか……?」
なにか賑やかなことが起きているのだろうか……と思ったら、ディアが「もしかして」と目を輝かせた。イヴォンが小さくうなずくのを見て、さらに嬉しそうにぱぁっと表情を明るくさせる。
「な、なにがあるの……?」
「リザ、この国の建国二千五百年を迎えるのよ」
「……あ、建国祭!?」
イヴォンがパチンと片目を閉じて答えを教えてくれた。毎年行われているけれど、百年の節目の年はかなり大規模なお祭りになると言われている……そうか、二千五百年目なら、今年のお祭りはかなり盛大なのね……。
「みーんな、そのお祭りを楽しみにしていてね、まだ先だと言うのに建国祭の準備に追われているのよ」
「そうよね、まだ半年くらいは先の話だもの……」
「……そのお祭りって、アカデミー生も見られるの……?」
わくわくとどきどきが混ざったようなディアの表情。イヴォンは「もちろん!」と微笑んだ。ハリスンさんがそんな会話をしている私たちのことを見て、「そういえば」と呟いた。
「建国祭は王城でも行われるけど、どっちを見に行きたいの?」
「どっちもですわ!」
ぐっと拳を握るディアに、ハリスンさんは目を瞬かせた。大きな声を出したディアは、ハッとしたように口元を手で隠す。……ディア、ものすごく建国祭に興味があるのね……?
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