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2章
2章57話(158話)
しおりを挟む「……それじゃ、次は僕の番ね。――改めて、血の記憶を見て不自然なことに気付いた」
「アル兄様、血の記憶を……?」
「あれから改良に改良を重ねて、自分が受けるダメージを少なくする方法を編み出したから平気だよ」
血の記憶――……アル兄様の生み出した魔法。それには反動があったようで、二年前に使った時はそれで倒れてしまった……。その血の記憶の魔法を、アル兄様は改良していたのね……。
「お母様、リザ、あの日のファロン家のことを覚えている?」
「……は、はい。とても魔力が濃かったような……」
「そうね。ファロン家がいくらカナリーン王国の血筋でも、屋敷の中に充満するほどの魔力があるとは……」
私とお母様は、二年前のファロン家を思い出しながら口にした。アル兄様は小さくうなずく。
「そう。それに――……、あの日、僕らが『ジェリー・ファロン』だと思っていたあの声……、あれは、恐らく『ジェリー・ファロン』ではないと思う」
アル兄様は淡々とした口調で話し始めた。ちらりとお母様に視線を向けるアル兄様に、お母様は驚いたような表情を浮かべていた。
「相手は僕らが『アンダーソン』だと知っていた……。巫子の力を使うことを想定していた。だからこそ……魔力を濃くして、あの人型のもやと声を先に仕込んでおいた……とは考えられないかな?」
「巫子の力を使うことを条件にした魔法を……? そんなことが出来るのは……」
「……あの女しかいないでしょうねぇ……」
ソフィアさんの眉が跳ねあがる。……本当に嫌いなのね、マザー・シャドウのこと。すると、ソフィアさんはハッとしたように私を見た。
「ちょっと待って、ファロン家がカナリーン王国の王族の血を引いているって言うことは、この子はカナリーン王国の血、そのものを引いているってことになるわね!」
あの女の出身もカナリーン王国だし、と続けたソフィアさん。……そう言えば、そうよね……。なんだか実感がわかないけれど……。
「それと、アカデミー内で妙な魔力が流れている気がする。高等部のアカデミーから魔力のコントロールを習う人たちは多いから、それを知っていたからなのか……」
「ディア……えっと、私の友人なのだけど、彼女も魔力を感じて体調を崩してしまって……」
「……あら、それは心配ね」
「あ、でもアミュレットを渡したので、多分もう大丈夫じゃないかな……?」
ディアの様子を思い出しながら、そう口にすると……みんなにじっと見られた。
「……そうね、エリザベスの作ったアミュレットなら……」
「リザのアミュレットの効果はかなり高いからなぁ……」
「そうなんですか?」
シー兄様の言葉に目を瞬かせると、シー兄様はこくりとうなずいた。
「前に遠征した時、魔物の攻撃を受けそうになったんだが、アミュレットのおかげで無事だったよ」
「えっ」
全然知らなかった……! 知らなかったのは私だけではなかったようで、お父様とお母様の鋭い視線を受けて、シー兄様は「大丈夫だったんだって!」と慌てたように手を振った。
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