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2章
2章75話(176話)
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その日の授業が無事に終わった後、私はアル兄様に会いに行った。ソルとルーナも一緒だから大丈夫、と心配そうなジーンたちは部屋に戻ってもらった。昨日の今日だから、ジーンもイヴォンも本調子ではないだろう。そんな時に、不安になるような会話は聞かせられない。
そもそも、ジーンたちにはマザー・シャドウのことを詳しく話していないのだ。
ファロン家でのことを知っているのは限られているし……。ともかく、アル兄様に相談しないといけない。
「……リザ? どうしたの、こんなところで」
「アル兄様、お時間をいただけませんか?」
「可愛い妹のためなら、いくらでも。……あまり良くないことがあったようだね?」
私は小さく首を縦に振った。アル兄様がすっと私の頭に手を伸ばして、くしゃりと髪を撫でる。
「ヴィーとシリル兄様も呼ぼうか?」
「……うん。お願いしても良いかな?」
「もちろん」
私だけでは絶対に背負えない。……だから、家族と信頼できる人に相談する。……きっと、お父様もそういう意味でわがままを言って良いと……言ってくれたのだと思う。そうして私たちは人気のない場所に向かった。アル兄様が「ちょっと待ってて」とヴィニー殿下とシー兄様を呼びに行く。ソルとルーナが顔を出して、私を見ていたので「出ておいで」と声を掛けた。抱き着くように飛び出して来たソルとルーナを抱きとめ、ぎゅっと抱きしめる。
「どうしたの、そんなに心配そうな顔をして」
「……ジーンに助けられたな」
「ルーナたちが声を上げると、混乱するかと思って……」
やっぱり気にしていたようだ。もしもあの場面でソルとルーナが飛び出して来たら、この子たちが悪者扱いされていたかもしれない。……それは絶対にイヤだ。
「……よく我慢してくれたね」
「エリザベスを悪くいうやつらは嫌いだ」
「ルーナも! でも我慢した!」
ソルの言葉にルーナも声を上げる。……ありがとう。そう伝えると、すりすりと頬に擦り寄って来た。くすぐったくて、思わず笑ってしまう。
「お待たせ……って、あれ、邪魔しちゃった?」
「平気よ、アル兄様。ソル、ルーナ、ちょっと離れてね。そして、防音と結界をお願い」
「エリザベスが望むなら」
「はーい」
ソルとルーナが離れて、防音魔法とこの場に入れないように結界魔法を張る。ついでに私たちがここに居るのを知られないための幻影魔法も使われたようだ。
「それで、リザ。オレたちに用があるんだろう?」
私はシリル兄様とヴィニー殿下、アル兄様に視線を向けて、こくりとうなずく。そして、昨日の女子寮の魔力のこと、今日のこと、――マザー・シャドウの魔力を感じたことを話した。
「……昨日、女子寮でそんなことがあったのか……」
「昨日はこっちもバタバタしていたからな……」
シリル兄様とアル兄様がそう言って、それからヴィニー殿下が顎に手を掛けてちらりと自身の影を見る。
「シェイド、気になることがあるのか?」
肯定するように、ゆらり、とヴィニー殿下の影が揺れた。
そもそも、ジーンたちにはマザー・シャドウのことを詳しく話していないのだ。
ファロン家でのことを知っているのは限られているし……。ともかく、アル兄様に相談しないといけない。
「……リザ? どうしたの、こんなところで」
「アル兄様、お時間をいただけませんか?」
「可愛い妹のためなら、いくらでも。……あまり良くないことがあったようだね?」
私は小さく首を縦に振った。アル兄様がすっと私の頭に手を伸ばして、くしゃりと髪を撫でる。
「ヴィーとシリル兄様も呼ぼうか?」
「……うん。お願いしても良いかな?」
「もちろん」
私だけでは絶対に背負えない。……だから、家族と信頼できる人に相談する。……きっと、お父様もそういう意味でわがままを言って良いと……言ってくれたのだと思う。そうして私たちは人気のない場所に向かった。アル兄様が「ちょっと待ってて」とヴィニー殿下とシー兄様を呼びに行く。ソルとルーナが顔を出して、私を見ていたので「出ておいで」と声を掛けた。抱き着くように飛び出して来たソルとルーナを抱きとめ、ぎゅっと抱きしめる。
「どうしたの、そんなに心配そうな顔をして」
「……ジーンに助けられたな」
「ルーナたちが声を上げると、混乱するかと思って……」
やっぱり気にしていたようだ。もしもあの場面でソルとルーナが飛び出して来たら、この子たちが悪者扱いされていたかもしれない。……それは絶対にイヤだ。
「……よく我慢してくれたね」
「エリザベスを悪くいうやつらは嫌いだ」
「ルーナも! でも我慢した!」
ソルの言葉にルーナも声を上げる。……ありがとう。そう伝えると、すりすりと頬に擦り寄って来た。くすぐったくて、思わず笑ってしまう。
「お待たせ……って、あれ、邪魔しちゃった?」
「平気よ、アル兄様。ソル、ルーナ、ちょっと離れてね。そして、防音と結界をお願い」
「エリザベスが望むなら」
「はーい」
ソルとルーナが離れて、防音魔法とこの場に入れないように結界魔法を張る。ついでに私たちがここに居るのを知られないための幻影魔法も使われたようだ。
「それで、リザ。オレたちに用があるんだろう?」
私はシリル兄様とヴィニー殿下、アル兄様に視線を向けて、こくりとうなずく。そして、昨日の女子寮の魔力のこと、今日のこと、――マザー・シャドウの魔力を感じたことを話した。
「……昨日、女子寮でそんなことがあったのか……」
「昨日はこっちもバタバタしていたからな……」
シリル兄様とアル兄様がそう言って、それからヴィニー殿下が顎に手を掛けてちらりと自身の影を見る。
「シェイド、気になることがあるのか?」
肯定するように、ゆらり、とヴィニー殿下の影が揺れた。
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