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2章
2章76話(179話)
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するするとヴィニー殿下の影から出てきたのは、彼の護衛の精霊だ。……姿を現してくれるなんて……私の存在に慣れたということなのかしら? と、思ったらソルとルーナがその精霊に向かって突進していった。
「そ、ソル? ルーナ?」
「シェイド!」
「久しぶり~!」
……あ、仲間に会えて嬉しかったのね……。シェイドの周りをくるくると駆け回るルーナに、じーっと見つめるソル。シェイドはぺこっと頭を下げた。……なんというか、精霊たちって個性的なのね……?
「……それで、気になることって?」
こほんとヴィニー殿下が咳払いをひとつしてから尋ねた。シェイドはわたわたと身振り手振りをしながら小声で話す。
「……闇の魔力を、感じました……」
「闇の魔力?」
「はい……。あのクラスの闇の魔力使いには、ひとり心当たりが……」
「……マザー・シャドウ……」
シェイドはこくこくとうなずいた。……王族の『影』を産んでいた彼女。自身は闇の属性を持っていたのかしら……?
「しかし、おかしいのです……。あの女性の肉体はもう……滅んでいるはず……」
「え?」
……不老にはなったけれど、不死ではないと……ソフィアさんの言葉を思い出した。……姿を変えたとしても、魔力で見破れるはず。……でも……、なんだろう、なにかが引っかかるような……。
「肉体が滅ぶと魂はどうなるんだ?」
「……天に召されます。……本来なら」
「本来なら? 違う場合もあるってこと?」
シェイドの言葉にアル兄様が首を傾げて問う。シェイドはさっとヴィニー殿下の後ろに隠れてしまった。
「……もしも、もしもよ? ジェリー・ブライトが本来のジェリー・ファロンだとしたら……ファロン家の血を引いているのなら……、マザー・シャドウと魔力の相性はどうなるの……?」
「良いだろうな。ファロン家の血筋となら」
「……なーんか、ルーナ、怖いこと想像しちゃったんだけど……。もしかして、エリザベスも?」
ルーナに問われて、私はルーナに向けて小さくうなずいた。三人が私のことを見て、「どういうこと?」と問う。
「マザー・シャドウの肉体は滅んだ、として……。ジェリーからマザー・ファロンの魔力を感じたの。それはつまり、ジェリーの身体にジェリーの魂とマザー・シャドウの魂が入っていて、私に悪意を向ける時はマザー・シャドウのほうなんじゃないかと……」
「……そんなことが可能なの?」
「不可能ではない。禁じられた魔法だがな」
ソルがきっぱりと言い切った。それを聞いていたヴィニー殿下は、少し口を閉ざした。そして、なにかを考えるように目を伏せて、それから顔を上げる。
「アル、力を貸して欲しい」
「ヴィー?」
「ブライト商会に、ファロン家の産婆がいる。彼女の血の記憶を見て欲しい。そうすれば、彼女が本当に『ジェリー・ファロン』なのかがわかるだろう」
「……それは良いけど、その人協力してくれるの?」
「協力してもらうんじゃない、協力させるんだ。なんのための地位だ?」
ヴィニー殿下がにやりと微笑む。それを見て、アル兄様もにやりと口角を上げた。……シー兄様が少し呆れたように二人を見ていた。
姿を変える魔法ではなく、誰かの身体に入り込む魔法……。そんな魔法があったなんて知らなかった。
そして私たちは、今度の休みにその人のところに行く約束をし、しっかりと自己防衛をすることを誓い合って解散した。……私とルーナの勘違いなら良いのだけど……。もしも、彼女の身体にマザー・シャドウの魂が入り込んでいるのなら……。
……いえ、まだ確定したわけではないわ。まずは確認することから始めないとね。
「そ、ソル? ルーナ?」
「シェイド!」
「久しぶり~!」
……あ、仲間に会えて嬉しかったのね……。シェイドの周りをくるくると駆け回るルーナに、じーっと見つめるソル。シェイドはぺこっと頭を下げた。……なんというか、精霊たちって個性的なのね……?
「……それで、気になることって?」
こほんとヴィニー殿下が咳払いをひとつしてから尋ねた。シェイドはわたわたと身振り手振りをしながら小声で話す。
「……闇の魔力を、感じました……」
「闇の魔力?」
「はい……。あのクラスの闇の魔力使いには、ひとり心当たりが……」
「……マザー・シャドウ……」
シェイドはこくこくとうなずいた。……王族の『影』を産んでいた彼女。自身は闇の属性を持っていたのかしら……?
「しかし、おかしいのです……。あの女性の肉体はもう……滅んでいるはず……」
「え?」
……不老にはなったけれど、不死ではないと……ソフィアさんの言葉を思い出した。……姿を変えたとしても、魔力で見破れるはず。……でも……、なんだろう、なにかが引っかかるような……。
「肉体が滅ぶと魂はどうなるんだ?」
「……天に召されます。……本来なら」
「本来なら? 違う場合もあるってこと?」
シェイドの言葉にアル兄様が首を傾げて問う。シェイドはさっとヴィニー殿下の後ろに隠れてしまった。
「……もしも、もしもよ? ジェリー・ブライトが本来のジェリー・ファロンだとしたら……ファロン家の血を引いているのなら……、マザー・シャドウと魔力の相性はどうなるの……?」
「良いだろうな。ファロン家の血筋となら」
「……なーんか、ルーナ、怖いこと想像しちゃったんだけど……。もしかして、エリザベスも?」
ルーナに問われて、私はルーナに向けて小さくうなずいた。三人が私のことを見て、「どういうこと?」と問う。
「マザー・シャドウの肉体は滅んだ、として……。ジェリーからマザー・ファロンの魔力を感じたの。それはつまり、ジェリーの身体にジェリーの魂とマザー・シャドウの魂が入っていて、私に悪意を向ける時はマザー・シャドウのほうなんじゃないかと……」
「……そんなことが可能なの?」
「不可能ではない。禁じられた魔法だがな」
ソルがきっぱりと言い切った。それを聞いていたヴィニー殿下は、少し口を閉ざした。そして、なにかを考えるように目を伏せて、それから顔を上げる。
「アル、力を貸して欲しい」
「ヴィー?」
「ブライト商会に、ファロン家の産婆がいる。彼女の血の記憶を見て欲しい。そうすれば、彼女が本当に『ジェリー・ファロン』なのかがわかるだろう」
「……それは良いけど、その人協力してくれるの?」
「協力してもらうんじゃない、協力させるんだ。なんのための地位だ?」
ヴィニー殿下がにやりと微笑む。それを見て、アル兄様もにやりと口角を上げた。……シー兄様が少し呆れたように二人を見ていた。
姿を変える魔法ではなく、誰かの身体に入り込む魔法……。そんな魔法があったなんて知らなかった。
そして私たちは、今度の休みにその人のところに行く約束をし、しっかりと自己防衛をすることを誓い合って解散した。……私とルーナの勘違いなら良いのだけど……。もしも、彼女の身体にマザー・シャドウの魂が入り込んでいるのなら……。
……いえ、まだ確定したわけではないわ。まずは確認することから始めないとね。
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