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2章
2章109話(210話)
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ギリギリまでディアとジーンと一緒にダンスを練って、また後日、今度は動きを合わせてみる。日々の授業とそれの繰り返し。そして、今年は建国祭の後にアカデミーの舞踏会という順番になったそうだ。アカデミー生である私たちが、集中して舞姫の役割を果たせるようにという心遣いを頂いたみたい。
「こんなに優遇されていて良いのかしら?」
「あら、優遇されているのは私たちじゃなくてアカデミー生よ?」
「え?」
ジーンが口角を上げて内緒話をするように耳元に顔を近付けて、小声で話す。
「建国祭に集中したい貴族も多いし、平民はバイトが出来るの」
「バイト?」
こくりとうなずくジーン。……商売のチャンスって、もしかしてバイトにも掛かっていたのかしら。どんなバイトをするのだろうと考えていた私に、イヴォンが後ろから声を掛けてきた。
「どうしたの、廊下で立ち止まって」
「イヴォン。ちょっと建国祭のことをね」
ああ、とどこか納得したような顔でうなずくイヴォン。次の授業に向かう前に、ちょっとだけ廊下の隅で話すことになった。
建国祭のメインは舞姫と、パレード。さらに今年は旅芸人たちを招いているらしい。旅芸人ってどんな人たちなのか、それを見られる時間があるのか、少し気になるところ。
「建国祭って色々な人が見に来るから、働き甲斐があるのよね」
「イヴォン、バイトしたことがあるの?」
「あるわよ、建国祭が近くなるとバイト募集の張り紙が出されるの。私はそこで教会の手伝いに参加したわ。孤児たちが作ったものを売ったりね」
懐かしむように目元を細めて微笑むイヴォンに、私は首を傾げた。孤児たちが作ったものを売る……。どんなものを売っていたのかな。
「ハンカチに刺繍をしたり……、自分が作る側だったから、売る側のことを知れて良かったわ」
「マクラグレンもアクセサリーを売っていたのよ。貴族が主だったけれど、がんばれば平民にも手が届くくらいの物も含めてね」
「そうなんだ……」
舞姫としての役割はあるけれど、時間が決められていることだし、もしかしたら見に行く時間はあるのかも! そう考えると少しワクワクして来た。どんなものに出会えるのか、今から楽しみね。
「おっと、そろそろ次の授業に向かわないと、それじゃあね」
「うん、またね」
「授業、がんばりましょう」
イヴォンと別れて、私たちは音楽室に向かう。次の授業は音楽だ。
ソフィアさんが来てから、アカデミー内と女子寮の魔力が気にならなくなった。一体、ソフィアさんはなにをしたのだろう……? そんなことを考えながら、与えられた楽譜に目を通してパートごとに練習を始める。……ちらちらとこちらを窺うような視線を感じて、どうしたのだろうと顔を向けると、聞きたいことがあるのか口を開く生徒が数人。ただ、音にはならなかった。
……音楽の授業中に話すことではないと、結論付けたのかな? いや、ただ単に先生が見回っていたから? 用があるのなら、授業が終わった後に声を掛けられるかもしれないなと思い、今日の予定を頭の中で思い浮かべる。……次の授業は午後からだから、話す時間はあるわね。私から、声を掛けてみようかなと考えながら、音楽の授業を受けた。
「こんなに優遇されていて良いのかしら?」
「あら、優遇されているのは私たちじゃなくてアカデミー生よ?」
「え?」
ジーンが口角を上げて内緒話をするように耳元に顔を近付けて、小声で話す。
「建国祭に集中したい貴族も多いし、平民はバイトが出来るの」
「バイト?」
こくりとうなずくジーン。……商売のチャンスって、もしかしてバイトにも掛かっていたのかしら。どんなバイトをするのだろうと考えていた私に、イヴォンが後ろから声を掛けてきた。
「どうしたの、廊下で立ち止まって」
「イヴォン。ちょっと建国祭のことをね」
ああ、とどこか納得したような顔でうなずくイヴォン。次の授業に向かう前に、ちょっとだけ廊下の隅で話すことになった。
建国祭のメインは舞姫と、パレード。さらに今年は旅芸人たちを招いているらしい。旅芸人ってどんな人たちなのか、それを見られる時間があるのか、少し気になるところ。
「建国祭って色々な人が見に来るから、働き甲斐があるのよね」
「イヴォン、バイトしたことがあるの?」
「あるわよ、建国祭が近くなるとバイト募集の張り紙が出されるの。私はそこで教会の手伝いに参加したわ。孤児たちが作ったものを売ったりね」
懐かしむように目元を細めて微笑むイヴォンに、私は首を傾げた。孤児たちが作ったものを売る……。どんなものを売っていたのかな。
「ハンカチに刺繍をしたり……、自分が作る側だったから、売る側のことを知れて良かったわ」
「マクラグレンもアクセサリーを売っていたのよ。貴族が主だったけれど、がんばれば平民にも手が届くくらいの物も含めてね」
「そうなんだ……」
舞姫としての役割はあるけれど、時間が決められていることだし、もしかしたら見に行く時間はあるのかも! そう考えると少しワクワクして来た。どんなものに出会えるのか、今から楽しみね。
「おっと、そろそろ次の授業に向かわないと、それじゃあね」
「うん、またね」
「授業、がんばりましょう」
イヴォンと別れて、私たちは音楽室に向かう。次の授業は音楽だ。
ソフィアさんが来てから、アカデミー内と女子寮の魔力が気にならなくなった。一体、ソフィアさんはなにをしたのだろう……? そんなことを考えながら、与えられた楽譜に目を通してパートごとに練習を始める。……ちらちらとこちらを窺うような視線を感じて、どうしたのだろうと顔を向けると、聞きたいことがあるのか口を開く生徒が数人。ただ、音にはならなかった。
……音楽の授業中に話すことではないと、結論付けたのかな? いや、ただ単に先生が見回っていたから? 用があるのなら、授業が終わった後に声を掛けられるかもしれないなと思い、今日の予定を頭の中で思い浮かべる。……次の授業は午後からだから、話す時間はあるわね。私から、声を掛けてみようかなと考えながら、音楽の授業を受けた。
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