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2章
2章110話(210話)
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音楽の授業が終わり、さてどうやって声を掛けようかなとクラスメイトを見つめる。楽譜を持って出て行こうとする彼女たちに、私は「あ、待って」と次の言葉を見つける前に声を掛けてしまった。彼女たちは動きを止めて、それから顔を見合わせて微笑みを浮かべる。
「えっと、なにか話したいことがあったんじゃないかと思って……」
結局はそのまま尋ねてしまった。彼女たちは一瞬目を大きく見開いて、それから照れたように頬を赤らめる。
「その、エリザベス様にお願いしたいことがあって……」
「私に?」
「はい。……あの、また、アミュレットの作り方を教えてくれませんか?」
私は目を丸くして彼女たちを見た。アミュレットの作り方を教えたのは記憶に新しい。そして、クラスメイトたちは作ったアミュレットを身につけているはずだ。……もう効果が切れた?
不安そうな表情を浮かべていたのであろう私を安心させるように、アミュレットを取り出して「もっと作りたいのです」と言葉を続けた。
「もっと?」
「家族にも渡したくて……」
そろそろ誕生日なの、と微笑む姿はとても綺麗で、私の心がとても温かくなったのを感じた。私の教え方で良ければ、と約束をして、今度の休日まで宝石を用意して欲しいと頼む。私が快く引き受けたからか、彼女はぱぁっと表情を明るくして何度もうなずいた。
それを見ていたのか、次の授業に向かう彼女たちを見送っている私に近付いて来たジーンとディアが、「良かったね」と声を掛けてきた。
「そうね。アミュレットがこうやって広がっていくのは、なんだか嬉しいわ」
「しかも子から親への誕生日プレゼント!」
「きっとお喜びになるわ」
そう言ってくれた二人に、私は「うん」と言葉を返して音楽室を後にした。午後からは精霊学科の授業がある。その前に、少し休憩しようかなとディアとジーンに声を掛けた。すると、二人とも次の授業があるようだ。……それなら、とテラスに向かい、知っている人がいないかを探る。男女共に休憩しに来ている人が結構いた。……でも、なんだろう、この魔力の感じ……。
じっと目を凝らして魔力の流れを確かめる。色々な魔力が絡まり合っているのが見えた。……どうして、こんな場所に? 私が息を飲むと、ソルとルーナが姿を見せた。
「……今日はここじゃないほうが良い」
「……そうみたいね」
ソルとルーナに止められて、私はじりじりと後退する。そして、魔力が少なそうな場所へと走っていくと、グレン先生の畑に辿り着いた。グレン先生が畑仕事をしているのを見て、なぜかホッとして先生に近付く。
「グレン先生、畑仕事ですか?」
「ん? ああ、エリザベスか。こっち来い」
手招きされて近付く。そして、水やりをお願いされたので、ソルとルーナに手伝ってもらって水やりをした。そのご褒美に、つやつやのトマトを頂いた。どうやって食べようと悩んでいると、背後から声を掛けられた。
「リザ?」
「シー兄様!」
見回りから戻って来たのだろう。数人の同僚を連れてシー兄様が私に近付き、トマトに視線を向けるとグレン先生に「オレらにもなんかくださーい」とねだりに行った。……こんなに自由にしているシー兄様って、結構貴重かも……なんて考えていると、騎士の一人が「ここ暑いでしょ?」と日陰に連れて行ってくれた。
シー兄様は大量にトマトを手に入れたようで、みんなに配っていた。
豪快にかぶりつく人たちを見て、私はかぷっとトマトに歯を立てた。……なにもつけていないトマトなのに、とても甘かった。それを見ていたシー兄様が、私の頭をくしゃくしゃと撫でて、「うまいだろ?」と微笑んだので、私はこくりとうなずいた。
「えっと、なにか話したいことがあったんじゃないかと思って……」
結局はそのまま尋ねてしまった。彼女たちは一瞬目を大きく見開いて、それから照れたように頬を赤らめる。
「その、エリザベス様にお願いしたいことがあって……」
「私に?」
「はい。……あの、また、アミュレットの作り方を教えてくれませんか?」
私は目を丸くして彼女たちを見た。アミュレットの作り方を教えたのは記憶に新しい。そして、クラスメイトたちは作ったアミュレットを身につけているはずだ。……もう効果が切れた?
不安そうな表情を浮かべていたのであろう私を安心させるように、アミュレットを取り出して「もっと作りたいのです」と言葉を続けた。
「もっと?」
「家族にも渡したくて……」
そろそろ誕生日なの、と微笑む姿はとても綺麗で、私の心がとても温かくなったのを感じた。私の教え方で良ければ、と約束をして、今度の休日まで宝石を用意して欲しいと頼む。私が快く引き受けたからか、彼女はぱぁっと表情を明るくして何度もうなずいた。
それを見ていたのか、次の授業に向かう彼女たちを見送っている私に近付いて来たジーンとディアが、「良かったね」と声を掛けてきた。
「そうね。アミュレットがこうやって広がっていくのは、なんだか嬉しいわ」
「しかも子から親への誕生日プレゼント!」
「きっとお喜びになるわ」
そう言ってくれた二人に、私は「うん」と言葉を返して音楽室を後にした。午後からは精霊学科の授業がある。その前に、少し休憩しようかなとディアとジーンに声を掛けた。すると、二人とも次の授業があるようだ。……それなら、とテラスに向かい、知っている人がいないかを探る。男女共に休憩しに来ている人が結構いた。……でも、なんだろう、この魔力の感じ……。
じっと目を凝らして魔力の流れを確かめる。色々な魔力が絡まり合っているのが見えた。……どうして、こんな場所に? 私が息を飲むと、ソルとルーナが姿を見せた。
「……今日はここじゃないほうが良い」
「……そうみたいね」
ソルとルーナに止められて、私はじりじりと後退する。そして、魔力が少なそうな場所へと走っていくと、グレン先生の畑に辿り着いた。グレン先生が畑仕事をしているのを見て、なぜかホッとして先生に近付く。
「グレン先生、畑仕事ですか?」
「ん? ああ、エリザベスか。こっち来い」
手招きされて近付く。そして、水やりをお願いされたので、ソルとルーナに手伝ってもらって水やりをした。そのご褒美に、つやつやのトマトを頂いた。どうやって食べようと悩んでいると、背後から声を掛けられた。
「リザ?」
「シー兄様!」
見回りから戻って来たのだろう。数人の同僚を連れてシー兄様が私に近付き、トマトに視線を向けるとグレン先生に「オレらにもなんかくださーい」とねだりに行った。……こんなに自由にしているシー兄様って、結構貴重かも……なんて考えていると、騎士の一人が「ここ暑いでしょ?」と日陰に連れて行ってくれた。
シー兄様は大量にトマトを手に入れたようで、みんなに配っていた。
豪快にかぶりつく人たちを見て、私はかぷっとトマトに歯を立てた。……なにもつけていないトマトなのに、とても甘かった。それを見ていたシー兄様が、私の頭をくしゃくしゃと撫でて、「うまいだろ?」と微笑んだので、私はこくりとうなずいた。
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