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2章
2章108話(209話)
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とりあえず、創作していたダンスをディアが踊ってみせた。滑らかに動くディアの身体。思わず魅入ってしまう。これはもう、人気投票はディアが一番なのでは? と少しわくわくして来た。踊り終えたディアは、難しい顔をしていた。あれだけ綺麗に踊っていたのに、どうして?
「……ちょっと修正がいるわね」
「え?」
「みんなバラバラの動きのところも作りましょうか」
「え?」
ディアとジーンがそう言って話し合いを始めた。そしてどんどんとダンスが変化していく。よくこんなに思いつくなぁと考えていると、二人が私のほうをじっと見た。
「リザはどう思う?」
「毎年、貴族用の舞台は同じだから、ここの動きの時に広がって……」
ジーンはもう観客のことまで考えているのね。……毎年舞姫のダンスを見るために、遠方からも王都に来るらしい。建国祭は十日間あり、舞姫は決められた時間に決められた舞台で踊ることになる。最終日は建国祭のフィナーレを飾るために、夜に踊るらしい。その時に人気投票の結果も出るとか。平民部門は昼に発表されるらしい。……まだ先のことだけど、なんだかもう緊張して来たわ……。
「……それぞれに見せ場を作るのね?」
「ソロパートも組み合わせたほうが曲とも合わせやすいしね」
「十日間、同じダンスを見せるのも申し訳ないし、日替わりでちょこっと変えていこうと思って」
「……よく思い付くね……?」
「こういうのは得意なの」
にこやかに微笑むディアと、衣装の色を変えていくのもわかりやすいかもね、とディアの描いた絵を眺めながら呟くジーン。二人ともとってもやる気だ。そして、すごく楽しそうにしている。気持ちが怖気ついている私のほうが、おかしいのかしら……?
「……二人は、人前で踊ることに抵抗はないの?」
ディアとジーンは顔を見合わせて、首を傾げた。どうして私がそんなことを聞くのかがわからないというように。人前で踊ることなんてなかったから、私は今から緊張しているのだけど、この二人はそんな気配を感じない。
「あら、入学祝いパーティーでもダンスしていたじゃない?」
「それもヴィンセント殿下と。みんな注目していたわよ?」
「それとこれとは別問題よ……。だってあの時はみんなダンスしていたじゃない。今回は、私たちしか踊らないのよね? 入学祝いパーティーよりもかなり注目を浴びるというわけで……」
私がそう説明すると、ジーンが目をきらりと輝かせてがしっと両手を握って来た。
「そうよ、とっても注目を浴びるわ! それはつまり、商売のチャンス!」
「……え?」
「アクセサリーはマクラグレンからのを使ってね」
……もしかして、ジーンが舞姫を引き受けてくれたのは、商品を宣伝するためでもあったのかもしれない……。
「これは好機だもの。宣伝はしっかりとしないとね。……それに、エリザベスにとっても、注目されることに慣れるのは良いことだと思うの」
「それは、どういう……?」
「公爵令嬢として、表に立つ時に役立つと思うわ。私たちだって、アンダーソン家の人たちだって、ずっとエリザベスの傍にいられるわけではないからね」
……確かに。今はアカデミーで暮らしているから、みんなと一緒にいられるけれど、卒業してからはそうじゃなくなる。私がひとりで行動する時もあるだろう。『公爵令嬢』として。……そのために、視線に慣れろと伝えているのね……。
「それに、舞姫も立派な『公爵令嬢』としての『公務』ではなくて?」
ぱちんと片目を閉じるジーンに同調するように、ディアがうなずいた。……人から注目されることは、大分慣れて来たと思う。アンダーソン家の養女になってからは特に。
「……それに、せっかくの舞姫だもの。選ばれるだけで栄誉あることなのよ」
「……それは、他の貴族の令嬢たちに申し訳ないような……」
本来なら私じゃない人が舞台に立っていただろう。それに思うとこころがある令嬢も多いだろう。私がアンダーソン家の養女にならなければ、舞姫になることはなかっただろうし。
「貴族って立場を、きちんとエリザベス自身が理解しないと。丁度いい機会を頂いたと思って、舞姫がんばりましょう?」
私を諭すように微笑むジーンに、ディアがパチパチと拍手を送っていた。貴族としての立場を理解する、か。……そうね、今までは公爵令嬢として恥じないような振る舞いを出来るように、とがんばって来たけれど、貴族だからというよりは、アンダーソン家の人たちに迷惑を掛けたくないというのが本音だった。――私が貴族として、どんな風に生きたいのかを考えてみるいい機会なのかもしれない。
「……ちょっと修正がいるわね」
「え?」
「みんなバラバラの動きのところも作りましょうか」
「え?」
ディアとジーンがそう言って話し合いを始めた。そしてどんどんとダンスが変化していく。よくこんなに思いつくなぁと考えていると、二人が私のほうをじっと見た。
「リザはどう思う?」
「毎年、貴族用の舞台は同じだから、ここの動きの時に広がって……」
ジーンはもう観客のことまで考えているのね。……毎年舞姫のダンスを見るために、遠方からも王都に来るらしい。建国祭は十日間あり、舞姫は決められた時間に決められた舞台で踊ることになる。最終日は建国祭のフィナーレを飾るために、夜に踊るらしい。その時に人気投票の結果も出るとか。平民部門は昼に発表されるらしい。……まだ先のことだけど、なんだかもう緊張して来たわ……。
「……それぞれに見せ場を作るのね?」
「ソロパートも組み合わせたほうが曲とも合わせやすいしね」
「十日間、同じダンスを見せるのも申し訳ないし、日替わりでちょこっと変えていこうと思って」
「……よく思い付くね……?」
「こういうのは得意なの」
にこやかに微笑むディアと、衣装の色を変えていくのもわかりやすいかもね、とディアの描いた絵を眺めながら呟くジーン。二人ともとってもやる気だ。そして、すごく楽しそうにしている。気持ちが怖気ついている私のほうが、おかしいのかしら……?
「……二人は、人前で踊ることに抵抗はないの?」
ディアとジーンは顔を見合わせて、首を傾げた。どうして私がそんなことを聞くのかがわからないというように。人前で踊ることなんてなかったから、私は今から緊張しているのだけど、この二人はそんな気配を感じない。
「あら、入学祝いパーティーでもダンスしていたじゃない?」
「それもヴィンセント殿下と。みんな注目していたわよ?」
「それとこれとは別問題よ……。だってあの時はみんなダンスしていたじゃない。今回は、私たちしか踊らないのよね? 入学祝いパーティーよりもかなり注目を浴びるというわけで……」
私がそう説明すると、ジーンが目をきらりと輝かせてがしっと両手を握って来た。
「そうよ、とっても注目を浴びるわ! それはつまり、商売のチャンス!」
「……え?」
「アクセサリーはマクラグレンからのを使ってね」
……もしかして、ジーンが舞姫を引き受けてくれたのは、商品を宣伝するためでもあったのかもしれない……。
「これは好機だもの。宣伝はしっかりとしないとね。……それに、エリザベスにとっても、注目されることに慣れるのは良いことだと思うの」
「それは、どういう……?」
「公爵令嬢として、表に立つ時に役立つと思うわ。私たちだって、アンダーソン家の人たちだって、ずっとエリザベスの傍にいられるわけではないからね」
……確かに。今はアカデミーで暮らしているから、みんなと一緒にいられるけれど、卒業してからはそうじゃなくなる。私がひとりで行動する時もあるだろう。『公爵令嬢』として。……そのために、視線に慣れろと伝えているのね……。
「それに、舞姫も立派な『公爵令嬢』としての『公務』ではなくて?」
ぱちんと片目を閉じるジーンに同調するように、ディアがうなずいた。……人から注目されることは、大分慣れて来たと思う。アンダーソン家の養女になってからは特に。
「……それに、せっかくの舞姫だもの。選ばれるだけで栄誉あることなのよ」
「……それは、他の貴族の令嬢たちに申し訳ないような……」
本来なら私じゃない人が舞台に立っていただろう。それに思うとこころがある令嬢も多いだろう。私がアンダーソン家の養女にならなければ、舞姫になることはなかっただろうし。
「貴族って立場を、きちんとエリザベス自身が理解しないと。丁度いい機会を頂いたと思って、舞姫がんばりましょう?」
私を諭すように微笑むジーンに、ディアがパチパチと拍手を送っていた。貴族としての立場を理解する、か。……そうね、今までは公爵令嬢として恥じないような振る舞いを出来るように、とがんばって来たけれど、貴族だからというよりは、アンダーソン家の人たちに迷惑を掛けたくないというのが本音だった。――私が貴族として、どんな風に生きたいのかを考えてみるいい機会なのかもしれない。
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