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3章
3章45話(255話)
しおりを挟む街はまだまだ建国祭で盛り上がっていた。
様々な人たちが楽しそうに笑っている姿を見て、私たちもなんだか楽しくなってしまう。
心の底から楽しいと思っていてくれているのなら、良いなぁ。
「それでジェリー、何を買いたいの?」
ジーンの質問に、ジェリーはハッとしたように顔を上げて、「リボンを……」と呟いた。
「リボン?」
「お母様の髪に似合うリボンを差し上げたいのです。お父様にはネクタイピンを……」
ディアの提案を受け入れたからか、買うものを変更したようだ。
「お母様の好きな色は?」
「ええと、いろいろあるんですよね……。あ、でも銀と金が好きって前に聞きました」
その言葉を聞いて、私はふふっと笑ってしまった。
「リザお姉様?」
「あ、ごめんなさい。銀と金って、ジェリーの色よね」
「……リザお姉様の色でもありますわ」
私たちの銀色の髪に、黄金の瞳。
ジェリーのお母様が好きな色は、彼女の色そのものだ。
「それじゃあ、銀色のリボンに金の刺繍をしたものが良いかもしれないわね」
「ジェリー、刺繍は得意?」
「え、そこそこ……でしょうか。一応、それなりには出来ると思います」
「なら、銀のリボンと金の刺繍糸を買って、自分で好きなデザインを刺繍するのはどうかしら? 全体ではなく、左右にワンポイントなら結婚記念日に間に合うんじゃないかと思うのだけど……」
ジーンの提案に、ディアは「それは素晴らしいですわね!」と両手を合わせて微笑んだ。
「なるほど……。そっか、プレゼントって、買ったものを渡すだけではないんですね……」
感心したようなジェリーの声に、私もそういうプレゼントがあるのか、と感心した。
ジーンとディアは、こうやってすぐに思いつく。きっと考え方が柔軟なのだろう。
「……あの、ジェリー。私からも良いかな?」
「はい、リザ姉様」
「ジェリーのご両親の結婚記念日に、私からも贈り物をして良いかしら?」
きょとんとした表情を浮かべて、それから私の言葉を理解すると「ええっ!?」と大きな声を出した。
慌てて自分の口を手で塞ぐジェリーに、私は微笑みかけた。
「ブライト家の人たちを巻き込んでしまって、本当に申し訳ないと思っていたの。……それに、私が言うのはおかしいとは思うのだけど、ジェリーを大切に育ててくれた人たちだから……」
――ジェリーは息を飲んだように静かになった。
そして、「リザお姉様……」とどこか歓喜の声を上げた。
「ダメ、かな?」
「いいえ、いいえっ。とても嬉しいですし、両親もきっと喜んでくれると思います!」
私の前まで来て、手を取ってぎゅっと握るジェリーに、ジーンとディアが微笑ましそうな視線を向けていた。
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