208 / 353
3章
3章70話(280話)
しおりを挟む空は晴天。エド、ちゃんと見ていてくれるかな? と視線だけを動かす。残念ながら、エドの姿は見つけられなかった。
そのうちに、音楽が鳴り始める。その音楽に合わせて、身体を動かす。ダンスのステップを踏んで、ディアが大きくジャンプをした。
「ソル、ルーナ!」
私の声にソルとルーナが魔法を使う。彼女の属性に合わせて、水の魔法だ。水の球体がふわふわと彼女と共に舞う。ディアが空中で一回転してから、着地した。ふわふわと浮かんでいる水の球体のひとつをふよん、と突いた。
それが合図のように、数多くの水の球体がパァンっと弾けた。
ミストのようなものが観客に降り注ぐ。狙ったかのように虹も出てきた。私たちはぎゅっと手を握って、次のステップを踏む。ジーンが私に目配りしてきたから、小さくうなずいた。
「――お願い」
「みんなを乾かして」
小声でつぶやく私たち。その願いを叶えるように、ふわりと温かい風が濡れた人たちを包み込み、濡れた服や髪を乾かした。
手を離して、もう一度ステップを踏み、ディアを真ん中にして彼女から少し下がった場所で足を止め、ポーズを決める。音楽もそこで止まった。何度練習しても、最後まで気を抜けないわよね、ダンスって。
ポーズを解いて、丁寧にお辞儀をするとわぁぁあ、と歓声が聞こえた。
みんなに手を振りながらステージから控室へ戻る。控室に入り、みんなでハイタッチをした。
「良い感じだったよね!」
「うん、ディアの回転すっごく綺麗だった!」
「あ、ありがとう……。精霊たちの魔法のおかげで虹も出たわね」
きゃあきゃあとはしゃぐ私たち。すると、ノックの音が聞こえてきた。
「どうぞ」
ジーンが一番に反応して、声を掛ける。ガチャリと扉が開いて、ひょこっとエドが姿を見せてくれた。
「エド!」
「リザ姉様!」
ぱぁっと表情を明るくして、エドが私ことを呼んだ。パタパタと彼に近付いて、エドの手をぎゅっと握る。
「体調は大丈夫?」
「うん、もうすっかり! せっかくのお祭りなのに、風邪ひいてあんまり見られなくて残念……」
しゅん、と項垂れるエドに、彼の頭をくしゃりと撫でた。
「建国祭はまだ終わっていないわ。明日、体調が大丈夫そうなら、一緒に見て回ろう?」
「本当っ? わーい、楽しみにしてるね!」
目をキラキラと輝かせて、エドが笑う。その笑みを見てそっと彼の頬に手を触れさせた。
うん、熱はないみたいね。
「今日は屋敷に戻ったら、手洗いうがいをしてゆっくり休むのよ」
「うん! あ、リザ姉様のお友達にも、挨拶していっていい?」
「もちろんよ」
入口近くに居たエドを招き入れて、ジーンとディアの前に立たせた。
「えっと、とても素敵なダンスでした。ジーン嬢、クラウディア王女」
ジーンとディアはきょとんとした顔をした。エドの言葉に、ふたりは視線を交わしてそれから「ふふっ」と表情を綻ばせた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
8,761
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。