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4章
4章4話(304話)
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そして、しっかりとした口調で「絶対に帰って来てね」と真剣な面持ちで口にするエドに、大きくうなずいた。
「もちろんよ。私たちが留守の間、ちゃんとお母様たちを守ってね」
「うん!」
エドの力強い返事に、微笑んだ。お母様とお父様に顔を向けると、ふたりとも穏やかに微笑んでいた。ふたりは顔を見合わせて、それからお父様がぽん、とお母様の背中を押す。
「みんな、わたくしたちはここで待っているから、気をつけて行ってきなさい」
「はい、お母様」
私とアル兄様が同時に言葉を紡ぐ。シー兄様は「この子たちの護衛は任せて」と胸をドンと叩く。お母様は少し困ったように眉を下げ、ぽんとシー兄様の肩に手を置いた。
「あなたもよ、シリル。自分を守ることを疎かにしちゃダメ」
「……はい」
シー兄様は驚いたように目を瞬かせて、それから表情を凛々しいものに変えて声を出す。――絶対に、無事で帰ってこなきゃね。
エドが私の手を離した。私はディアに視線を向ける。ディアも一緒に来てくれることになっているから、彼女の服装は私と同じようなワンピースだった。
「クラウディア王女、本当によろしいのですか?」
お父様が丁寧な口調で尋ねる。ディアはキョトンとした表情を浮かべたがすぐに「もちろんですわ」と答えた。
「わたくしが役立つことはないと思いますが……、一緒に行きたいのです。カナリーン王国には前から興味がありましたから」
にこっと微笑むディアに、お父様は「リザたちのことを頼みます」と頭を下げた。それに慌てたのはディアだ。
「顔をお上げになってください、ジャック様。大丈夫ですわ、リザたちはとても仲がよいのですもの。今回だって、協力して乗り越えられますわ」
穏やかな声色でそう言うディア。お父様は『とても仲がよい』と聞いてぱぁっと表情を明るくさせた。嬉しそうに見える。
「……そうですね。きっと、乗り越えられるでしょう」
お父様の呟きに、胸がトクンと鳴った。私たちを信じてくれる人がいる。それがとても……嬉しかった。
「……そろそろ行かないと。行こう、みんな」
アル兄様の言葉に、私たちはうなずき、玄関を開けた。すでに馬車の準備はされていて、ヴィニー殿下ともうひとり……なぜか、ジェリーの姿があった。
私が驚いていると、「リザ姉様!」とジェリーが笑顔で大きく手を振っている。私は家族を振り返り、「行ってきます!」と言ってから、ジェリーに駆け寄った。
「どうしてジェリーがここに?」
「彼女もカナリーン王国に関係しているから、来てもらった。『呪いの書』と一緒にね」
さらっとヴィニー殿下に説明されて、私は目を大きく見開いた。
「馬車は二台用意したから、僕とシリル兄様、それからクラウディア王女が一緒に乗るよ。いいよな、ヴィー?」
「ああ、それでいいよ。ふたりとも、一緒に乗ってくれる?」
「あ、はい、もちろんです……」
そう言うわけで、私はヴィニー殿下とジェリーと一緒に馬車に乗ることになった。
荷物を馬車に置き、私たちも乗ると、すぐに御者が馬を走らせる。馬車の窓から遠ざかっていくアンダーソン邸を眺めていると、家族が大きく手を振ってくれているのが見えた。
「もちろんよ。私たちが留守の間、ちゃんとお母様たちを守ってね」
「うん!」
エドの力強い返事に、微笑んだ。お母様とお父様に顔を向けると、ふたりとも穏やかに微笑んでいた。ふたりは顔を見合わせて、それからお父様がぽん、とお母様の背中を押す。
「みんな、わたくしたちはここで待っているから、気をつけて行ってきなさい」
「はい、お母様」
私とアル兄様が同時に言葉を紡ぐ。シー兄様は「この子たちの護衛は任せて」と胸をドンと叩く。お母様は少し困ったように眉を下げ、ぽんとシー兄様の肩に手を置いた。
「あなたもよ、シリル。自分を守ることを疎かにしちゃダメ」
「……はい」
シー兄様は驚いたように目を瞬かせて、それから表情を凛々しいものに変えて声を出す。――絶対に、無事で帰ってこなきゃね。
エドが私の手を離した。私はディアに視線を向ける。ディアも一緒に来てくれることになっているから、彼女の服装は私と同じようなワンピースだった。
「クラウディア王女、本当によろしいのですか?」
お父様が丁寧な口調で尋ねる。ディアはキョトンとした表情を浮かべたがすぐに「もちろんですわ」と答えた。
「わたくしが役立つことはないと思いますが……、一緒に行きたいのです。カナリーン王国には前から興味がありましたから」
にこっと微笑むディアに、お父様は「リザたちのことを頼みます」と頭を下げた。それに慌てたのはディアだ。
「顔をお上げになってください、ジャック様。大丈夫ですわ、リザたちはとても仲がよいのですもの。今回だって、協力して乗り越えられますわ」
穏やかな声色でそう言うディア。お父様は『とても仲がよい』と聞いてぱぁっと表情を明るくさせた。嬉しそうに見える。
「……そうですね。きっと、乗り越えられるでしょう」
お父様の呟きに、胸がトクンと鳴った。私たちを信じてくれる人がいる。それがとても……嬉しかった。
「……そろそろ行かないと。行こう、みんな」
アル兄様の言葉に、私たちはうなずき、玄関を開けた。すでに馬車の準備はされていて、ヴィニー殿下ともうひとり……なぜか、ジェリーの姿があった。
私が驚いていると、「リザ姉様!」とジェリーが笑顔で大きく手を振っている。私は家族を振り返り、「行ってきます!」と言ってから、ジェリーに駆け寄った。
「どうしてジェリーがここに?」
「彼女もカナリーン王国に関係しているから、来てもらった。『呪いの書』と一緒にね」
さらっとヴィニー殿下に説明されて、私は目を大きく見開いた。
「馬車は二台用意したから、僕とシリル兄様、それからクラウディア王女が一緒に乗るよ。いいよな、ヴィー?」
「ああ、それでいいよ。ふたりとも、一緒に乗ってくれる?」
「あ、はい、もちろんです……」
そう言うわけで、私はヴィニー殿下とジェリーと一緒に馬車に乗ることになった。
荷物を馬車に置き、私たちも乗ると、すぐに御者が馬を走らせる。馬車の窓から遠ざかっていくアンダーソン邸を眺めていると、家族が大きく手を振ってくれているのが見えた。
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