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4章
4章14話(314話)
しおりを挟む「今、ちょうど探しに行くところでした」
私がヴィニー殿下とアル兄様の顔を見ながらそう言うと、ふたりは顔を見合わせて小さくうなずいた。もしかしたら、私が起きたことを知って会いに来てくれたのかもしれない。そう考えると、ほんの少し胸の中が温かくなった気がする。
シー兄様も私に会いに来てくれたので、みんな一緒に部屋に入ってもらい、それぞれ適当な場所に座る。
「それで、どうして僕らを探そうと思ったの?」
と首を傾げてアル兄様が問いかけてきた。私は胸元に手を置いて、彼らを見た。
「実は――」
私は紙をふたりに見せた。夢の内容を記した紙に視線を落としたアル兄様とヴィニー殿下は、その内容をじっくりと眺めて、それから私とジェニーに対して、こう言った。
「きみたちのことを、巫子の力で視てみたい」
――と。
私とジェリーは視線を合わせて、ふたりに対して「構いません」と答えた。
「それじゃ、ふたりともマジックバリアを解いてくれる?」
「僕らも解いて、視てみるから」
「わ、わかりました」
マジックバリアを解くことは久しぶりだ。気が付いたら常に使っているのが当たり前になっていたから……。ジェリーと共にマジックバリアを解くと、ヴィニー殿下とアル兄様も解いた。ふたりの魔力が星のように散っていくのを見て、綺麗だな、とぼんやり考える。
ふたりはじっと私たちのことを見つめる。恐らく、数分も経っていない。アル兄様が息を呑み、それからぎゅっと拳を握りわなわなと震わせているのを見て、「アル兄様……?」と声を掛ける。
「――僕はそんなことのために、リザを助けたわけじゃない!」
びりびりと鼓膜を揺らすアル兄様の声。激昂したように叫ぶアル兄様を宥めるようにヴィニー殿下が背中を撫でた。
「……アル兄様、なにを見たの……?」
そう問いかける私に、アル兄様は自分を落ち着かせるように深呼吸をし、視えた未来の一部を話し出した。
「……僕が視たのは、リザが意識を失い倒れる場面だ。……僕がリザを助けたのは、命を大切にして欲しいからだったのに……」
そこで一度言葉を切り、ぐっと唇を噛んで耐えるように目を伏せ、
「大切な妹が倒れるなんて、イヤだよ……」
と、小さな声で続けた。……大切にされていることは、きちんと理解しているし、とてもありがたく思っている。だから、私が倒れる場面を視たというアル兄様に、なんて言葉を掛けたら良いのかわからなかった。
「……リザは倒れただけ、なんだよな?」
肩を落とすアル兄様に声を掛けたのはシー兄様だった。アル兄様はカッとしたように顔を赤くし、シー兄様に「だけってなんだよ!」と声を荒げる。
シー兄様はアル兄様の肩に手を置き、言葉を紡いだ。
「落ち着け、次期アンダーソン公爵。命を落としたわけじゃないなら、リザが助かる方法があるはずだ」
冷静なシー兄様の言葉に、アル兄様は目を瞠る。そして、アル兄様は考えるように黙り込んでしまった。
「……それじゃあ、僕はアルとは違う場面を視たようだね」
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