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4章
4章71話(371話)
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話が終わると、ソフィアさんは「二度寝するわぁ」と私とヴィニー殿下を部屋から出した。私たちは精霊たちに視線を向けて、それから同時に言葉を紡ごうとした。
「あの」
「あのさ」
言葉が重なって、「お先にどうぞ」という言葉まで同時に発して、ふたりでプッと噴き出した。クスクスと笑い合って、それからヴィニー殿下がぽんっと私の背中を叩く。
「少し、時間をもらえる?」
「はい、もちろんです、ヴィニー殿下」
ヴィニー殿下と一緒に歩き出す。向かう先はアル兄様の部屋のようだった。扉の前に立ち、扉を軽くノックすると、すぐにアル兄様の声が聞こえる。
「入っていいよ」
扉を開き、私から先に中に入る。ヴィニー殿下も部屋に入り、後ろ手で扉を閉めるとアル兄様に近付いて行った。
「アル、あれは出来た?」
「うん、もちろん! ちょっとずつ改良していった甲斐があっていい感じになったと思う」
ヴィニー殿下の問いに、アル兄様は笑顔を見せた。あまりにも爽やかな笑顔で、驚く。アル兄様、なにを作っていたのかしら……?
「リザに似合うものをって思うと、やっぱり悩んじゃうよね」
「うん、いろいろな色が似合うからね」
「でも、リザはヴィーの婚約者になったから、やっぱりこの色かなって」
ぽんぽんと会話を弾ませるふたりに、首を傾げた。ソルとルーナが辺りをきょろきょろと見渡して、アル兄様の机をじっと見つめる。その視線に気付いたのか、アル兄様が「あ、わかる?」と少し嬉しそうにはにかんだ。
「ソル、ルーナ?」
名前を呼ぶと、精霊たちは私に視線を移す。そしてぽふぽふと私の足を柔らかく触った。
「愛されているね、エリザベス」
「ソルとルーナの契約者だからな」
「ええ?」
どういうこと? と精霊たちを見てから、アル兄様とヴィニー殿下に顔を向ける。すると、アル兄様は笑みを深くした。
「ヴィーが選ぶのはリザだろうなって考えていたから、これを作っていたんだ」
アル兄様は机の上から大事そうに小さな箱を取り出して、ぱかっと開けた。
「ネックレス……?」
「アミュレットだよ。僕がデザインしたんだ」
「アル兄様が?」
「そう、ジーン嬢の力を借りてね」
一体、いつの間に用意していたのだろう? 全然気が付かなかった。
「いつか、リザがヴィーの婚約者になったら渡そうと思っていたんだ」
そう言って照れたように笑うアル兄様に、私はなんだか胸の奥が熱くなった。じわり、と涙が滲んだような気がする。
「ど、どうしたのリザ。イヤだった!?」
ふるふると首を横に振る。ただ、ただ、嬉しかった。
「……ありがとうございます、アル兄様」
「どういたしまして。ヴィー、リザに付けてくれる?」
「……僕が? 良いの?」
「アクセサリーを付けるのは、婚約者の役目でしょ?」
にっと笑うアル兄様に、ヴィニー殿下は目を瞬かせて、それから緩やかに首を縦に振る。アル兄様からネックレスを受け取り、私の背後に回った。
「あの」
「あのさ」
言葉が重なって、「お先にどうぞ」という言葉まで同時に発して、ふたりでプッと噴き出した。クスクスと笑い合って、それからヴィニー殿下がぽんっと私の背中を叩く。
「少し、時間をもらえる?」
「はい、もちろんです、ヴィニー殿下」
ヴィニー殿下と一緒に歩き出す。向かう先はアル兄様の部屋のようだった。扉の前に立ち、扉を軽くノックすると、すぐにアル兄様の声が聞こえる。
「入っていいよ」
扉を開き、私から先に中に入る。ヴィニー殿下も部屋に入り、後ろ手で扉を閉めるとアル兄様に近付いて行った。
「アル、あれは出来た?」
「うん、もちろん! ちょっとずつ改良していった甲斐があっていい感じになったと思う」
ヴィニー殿下の問いに、アル兄様は笑顔を見せた。あまりにも爽やかな笑顔で、驚く。アル兄様、なにを作っていたのかしら……?
「リザに似合うものをって思うと、やっぱり悩んじゃうよね」
「うん、いろいろな色が似合うからね」
「でも、リザはヴィーの婚約者になったから、やっぱりこの色かなって」
ぽんぽんと会話を弾ませるふたりに、首を傾げた。ソルとルーナが辺りをきょろきょろと見渡して、アル兄様の机をじっと見つめる。その視線に気付いたのか、アル兄様が「あ、わかる?」と少し嬉しそうにはにかんだ。
「ソル、ルーナ?」
名前を呼ぶと、精霊たちは私に視線を移す。そしてぽふぽふと私の足を柔らかく触った。
「愛されているね、エリザベス」
「ソルとルーナの契約者だからな」
「ええ?」
どういうこと? と精霊たちを見てから、アル兄様とヴィニー殿下に顔を向ける。すると、アル兄様は笑みを深くした。
「ヴィーが選ぶのはリザだろうなって考えていたから、これを作っていたんだ」
アル兄様は机の上から大事そうに小さな箱を取り出して、ぱかっと開けた。
「ネックレス……?」
「アミュレットだよ。僕がデザインしたんだ」
「アル兄様が?」
「そう、ジーン嬢の力を借りてね」
一体、いつの間に用意していたのだろう? 全然気が付かなかった。
「いつか、リザがヴィーの婚約者になったら渡そうと思っていたんだ」
そう言って照れたように笑うアル兄様に、私はなんだか胸の奥が熱くなった。じわり、と涙が滲んだような気がする。
「ど、どうしたのリザ。イヤだった!?」
ふるふると首を横に振る。ただ、ただ、嬉しかった。
「……ありがとうございます、アル兄様」
「どういたしまして。ヴィー、リザに付けてくれる?」
「……僕が? 良いの?」
「アクセサリーを付けるのは、婚約者の役目でしょ?」
にっと笑うアル兄様に、ヴィニー殿下は目を瞬かせて、それから緩やかに首を縦に振る。アル兄様からネックレスを受け取り、私の背後に回った。
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