338 / 353
4章
4章110話(410話)
しおりを挟むその後、制服に着替えてそれぞれの教室に向かい、先生から今日の舞踏会のことを説明された。
「良いですか、淑女としての矜持を持ち、本当の夜会に参加する気持ちで挑みなさいね。――それと、心から楽しんで」
そんな先生の言葉に、私たちは「はい!」と元気よく言葉を出す。
「それじゃあ、先生からは以上です。みんな、今日は着飾るんだよ」
と、言い残して先生は教室を去る。今日の授業はなく、みんな舞踏会の話で盛り上がっている。まだ時間がある――とは、なかなか思えなかった。だって、いきなり今日だと知ったのだもの!
ダンスのリストは一応踊れるものがある。最初と最後は確実に踊れる自信がある。セリーナ先生、本当にありがとうございます……!
「リザ、ディア、ジェリーのところに行きましょう」
「そうね、髪飾りも渡したいし」
かたんと椅子から立ち上がって、ジュリーを探しに教室から出た。まだ、教室にいるかしら? と廊下を歩いていると、友人と一緒にこちらに歩いてくるジュリーが見えた。ジュリーは私に気付くと、ぱぁっと表情を明るくさせて、友人になにかを話してから近付いてきた。
「ジェリー、ご友人はいいの?」
「はい、リザお姉様。大丈夫です。こちらに来るなんてどうしたのですか?」
「ジーンがあなたに頼みたいことがあるの」
ジーンがこくりとうなずき、ジェリーに髪飾りが入った箱を手渡す。彼女は首を傾げながら受け取り、「中を見ても?」とジーンに尋ねる。ジーンは「ええ、ぜひ見てちょうだい」と中を見ることを促した。
ジェリーは箱を開けて、髪飾りを見ると首を捻る。
「えっと、これは?」
「今日の舞踏会でぜひ使って欲しいの」
にっこりと微笑むジーンに、ジェリーはちらりとこちらを見た。私が小さくうなずくと、ジェリーはぱたんと箱の蓋を閉めてジーンに笑顔を見せた。
「わかったわ。使わせてもらうね」
「ありがとう!」
ジーンが明るく言葉を発する。受け取ってもらえて良かった、と安堵していると、
「リザ姉様、少しお時間よろしいですか?」
「え、ええ。舞踏会の準備にはまだ早いし……」
夜会をイメージしているから、開始は夜だ。まだ時間がある。そう思って返事をすると、ジュリーは私をじっと見つめて手を差し出す。
「なら、私に付き合ってくださいな」
私はジーンとディアを見て、それから彼女の手を取った。
手を繋いで歩き出す私たちを、ジーンとディアは「行ってらっしゃい」と見送った。
どこに向かっているのかしら? と歩きながら考える。階段を上がっていくから、屋上かしら? と思ったら、屋上の手前の階段で足を止めた。
応援ありがとうございます!
10
お気に入りに追加
8,761
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。