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3章:竜の国 ユミルトゥス
留学準備 4話
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「――これを」
「これは?」
とてもきれいな青い宝石のネックレスを差し出されて、首をかしげる。
あれ? このネックレス、どこかで見たことがあるような……あああ、そうだ、これは……肖像画で見たことがある――……バッとお父さまを見上げた。
「リディアの母……私の妻が大切にしていたネックレスだ。持っていきなさい」
「ですが……! これはお母さまの形見ではありませんか……!」
「だからだ。この形見を通して、ユミルトゥスを見せてやってくれ」
「お父さま……」
お父さまは、私の首にネックレスをつけてくれた。
お母さまは、私がまだ幼い頃に病気で亡くなったしまった。後妻を、という声もあったようだけれど、お父さまは『彼女と同じように愛せない』と断っていたことを知っている。
そっと、ネックレスに触れる。冷たい宝石の感触が指先に伝わり、静かに息を吐いた。
「よく似合っている」
「……ありがとうございます、お父さま。とても、とても大切にします……!」
思わず涙ぐんでしまった。お母さまが亡くなったあと、お母さまの部屋はそのまま残された。
お父さま以外入ることは許されず、ずっと開かずの間になっていた部屋。
きっと、私のためにこのネックスレスを探してきてくれたものだろう。
「――そのネックレスは、妻が産まれたときに、両親から贈られたものらしい。彼女もきっと、リディアを見守りたいだろうと思ってな」
「私、たくさん……たくさん、ユミルトゥスを見て回りますわ。お母さまと一緒に」
目を伏せて口角を上げると、お父さまは「ああ」と一言だけつぶやいた。
それとほぼ同時に、来客を知らせる鐘が鳴る。
――ああ、迎えがきたのね。
ローレンとチェルシーが玄関の扉を開けた。
そこにいたのはやはりフィリベルトさまで――……いつも着ていた制服ではなく、黒のタイトな服に、金色の刺繍がとても似合っていた。もしかしたら、ユミルトゥスの制服なのかもしれない。
彼にはこちらの制服のほうが似合っているな、と頭の片隅で思ったけれど、気を取り直してフィリベルトさまに向けカーテシーをした。
「ごきげんよう、フィリベルトさま。迎えにきてくださってありがとうございます」
「おはようございます、リディア嬢、みなさん。もしや、待たせてしまいましたか?」
「いや、我らが早めに玄関にきていただけだ。フィリベルトさん、リディアをよろしくお願いします。ローレンとチェルシーも」
「はい、大切にお預かりします」
この数ヶ月で、お父さまの彼の呼び方が、『フィリベルトくん』から『フィリベルトさん』に変わった。それは、お父さまが彼のことを気に入ったということなのよね。
フィリベルトさまは、すっとお父さまに頭を下げた。
彼は、あの日――陛下と一緒に食事をした日から、熱心にこの屋敷まで足を運んでくれて、お父さまともいろいろ話して、今ではすっかり仲良くなったみたい。
もう、第二の息子、とばかりに可愛がっているのよね。
『彼なら、リディアを任せても大丈夫だろう。あとは、お前の気持ち次第だよ』
と、言われたこともある。
アレクシス殿下との婚約は無事に白紙になったし、お父さまも陛下も、私とフィリベルトさまの婚約は『本人が合意したなら、認める』というスタンス。
フィリベルトあまのご両親には、彼自身が手紙を出してやり取りを繰り返していたらしく、ユミルトゥスについたらまず、彼のご両親に挨拶をする予定。
学園は寮があるらしいから、ユミルトゥスでは寮生活をするの。
フィリベルトさまは家から通うのかしら?
「これは?」
とてもきれいな青い宝石のネックレスを差し出されて、首をかしげる。
あれ? このネックレス、どこかで見たことがあるような……あああ、そうだ、これは……肖像画で見たことがある――……バッとお父さまを見上げた。
「リディアの母……私の妻が大切にしていたネックレスだ。持っていきなさい」
「ですが……! これはお母さまの形見ではありませんか……!」
「だからだ。この形見を通して、ユミルトゥスを見せてやってくれ」
「お父さま……」
お父さまは、私の首にネックレスをつけてくれた。
お母さまは、私がまだ幼い頃に病気で亡くなったしまった。後妻を、という声もあったようだけれど、お父さまは『彼女と同じように愛せない』と断っていたことを知っている。
そっと、ネックレスに触れる。冷たい宝石の感触が指先に伝わり、静かに息を吐いた。
「よく似合っている」
「……ありがとうございます、お父さま。とても、とても大切にします……!」
思わず涙ぐんでしまった。お母さまが亡くなったあと、お母さまの部屋はそのまま残された。
お父さま以外入ることは許されず、ずっと開かずの間になっていた部屋。
きっと、私のためにこのネックスレスを探してきてくれたものだろう。
「――そのネックレスは、妻が産まれたときに、両親から贈られたものらしい。彼女もきっと、リディアを見守りたいだろうと思ってな」
「私、たくさん……たくさん、ユミルトゥスを見て回りますわ。お母さまと一緒に」
目を伏せて口角を上げると、お父さまは「ああ」と一言だけつぶやいた。
それとほぼ同時に、来客を知らせる鐘が鳴る。
――ああ、迎えがきたのね。
ローレンとチェルシーが玄関の扉を開けた。
そこにいたのはやはりフィリベルトさまで――……いつも着ていた制服ではなく、黒のタイトな服に、金色の刺繍がとても似合っていた。もしかしたら、ユミルトゥスの制服なのかもしれない。
彼にはこちらの制服のほうが似合っているな、と頭の片隅で思ったけれど、気を取り直してフィリベルトさまに向けカーテシーをした。
「ごきげんよう、フィリベルトさま。迎えにきてくださってありがとうございます」
「おはようございます、リディア嬢、みなさん。もしや、待たせてしまいましたか?」
「いや、我らが早めに玄関にきていただけだ。フィリベルトさん、リディアをよろしくお願いします。ローレンとチェルシーも」
「はい、大切にお預かりします」
この数ヶ月で、お父さまの彼の呼び方が、『フィリベルトくん』から『フィリベルトさん』に変わった。それは、お父さまが彼のことを気に入ったということなのよね。
フィリベルトさまは、すっとお父さまに頭を下げた。
彼は、あの日――陛下と一緒に食事をした日から、熱心にこの屋敷まで足を運んでくれて、お父さまともいろいろ話して、今ではすっかり仲良くなったみたい。
もう、第二の息子、とばかりに可愛がっているのよね。
『彼なら、リディアを任せても大丈夫だろう。あとは、お前の気持ち次第だよ』
と、言われたこともある。
アレクシス殿下との婚約は無事に白紙になったし、お父さまも陛下も、私とフィリベルトさまの婚約は『本人が合意したなら、認める』というスタンス。
フィリベルトあまのご両親には、彼自身が手紙を出してやり取りを繰り返していたらしく、ユミルトゥスについたらまず、彼のご両親に挨拶をする予定。
学園は寮があるらしいから、ユミルトゥスでは寮生活をするの。
フィリベルトさまは家から通うのかしら?
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