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3章:竜の国 ユミルトゥス
乙女な部屋 2話
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前世の私は庶民だった。そういう乙女系のものを買ったのは大人になって、稼ぎ始めてから。
とはいえ、ちょこっと可愛らしい置物を配置するくらいだったけど。
ここまで乙女全開の部屋は……なかなかお目にかかれないだろう。
「……エステルさまは、可愛らしいものがお好きなのですか?」
「ええ。可愛いものも肌触りがいいものも大好きよ」
彼女はスタスタと部屋の中に入り、ソファの上に置いてある淡いピンク色のハート形のクッションを持ち上げて、私に見せた。
「このクッション、手触りがとてもいいの。触ってみて?」
にこにこと差し出されたクッションを受け取って、撫でてみる。
エステルさまの言う通り、手触りのよいクッションで、まるで長毛の猫を撫でているような感覚だ。猫カフェ、好きだったなぁ。
前世の記憶を思い出してから、いろんなことがごちゃ混ぜになっている感じがする。
ゲームの『リディア』は、どのルートでも気高い女性だった。
凛としていて、ハッキリと自分の意見を口にする。
その姿はとても凛々しかった。
そう、他の人のルートでも、たまに出てきていたのよね。
きっと、一番出番が多かったのは、アレクシス殿下のルートだったんだろうけど……
私はプレイしていないから……あ、でも、学園での記憶はちゃんとあるのよね。
リディアとして生きていた記憶をたどると、ゲームと共通のルートはあった。
学園生活だからね、テストや学園祭などのイベントの記憶があるの。
「……エステルさま。こちらの学園は、どのような場所ですか?」
気になって問いかけると、エステルさまはぱちくりと目を瞬かせた。
「そうねぇ」
下唇に人差し指を置いて、天井を仰ぐ彼女に、思わず視線の先を追ってしまう。
「自由、だったかしら」
「自由、ですか?」
返ってきた言葉は、意外なものだった。
自由な学園ってどういうこと?
「十代の多感な時期だからね。恋に燃え上がる子もいたし、家を継げないから、と勉強に燃え上がる子もいたわ。懐かしいわねぇ」
「恋に、燃え上がる?」
エステルさまはにっこりと微笑んで、こくりとうなずいた。
「ほら、貴族って政略結婚が多いじゃない? 家のことだから仕方ないって諦めている人たちも多かったけれど、それでも一度くらい好きな人と付き合いって子も多かったのよ」
目をきらめかせながら語るエステルさま。
彼女はきっと、恋の話も好きなんだろうな。
顎の下で両手を組んで、懐かしむように目元を細める姿は、とても乙女の顔をしていた。
「私とアーノルドが出会ったのも、学園だったのよ」
「えっ! 学園で?」
「ダンスパーティーの日に、足を挫いた私を抱き上げてくれたの。彼のたくましさに惚れちゃったのよね」
きゃ、と恥ずかしそうに頬を染めるエステルさまに、彼女たちの馴れ初めがどんなものだったのか、知りたいという欲求が出てきた。
だって、あんまりにも可愛らしい反応をするのだもの。
「そこから、お付き合いをするようになったのですか?」
「……いいえ、その頃の私には、幼い頃からの婚約者がいたの。でもね、その人は浮気性で、『運命の相手を探すため』と女性をとっかえひっかえしていたわ」
はぁ、と重くため息を吐く。
……エステルさまにも、幼い頃からの婚約者がいたのね……
しかも、その人が浮気性の人だったなんて……!
「ある日、耐えきれなくなった私が、学園の片隅で泣いているところに、偶然通りがかったアーノルドが声をかけてきたの」
「まぁっ!」
思わず甲高い声を上げてしまった。
だって、泣いているエステルさまを発見して、声をかけてくれるなんて、ドラマチック!
とはいえ、ちょこっと可愛らしい置物を配置するくらいだったけど。
ここまで乙女全開の部屋は……なかなかお目にかかれないだろう。
「……エステルさまは、可愛らしいものがお好きなのですか?」
「ええ。可愛いものも肌触りがいいものも大好きよ」
彼女はスタスタと部屋の中に入り、ソファの上に置いてある淡いピンク色のハート形のクッションを持ち上げて、私に見せた。
「このクッション、手触りがとてもいいの。触ってみて?」
にこにこと差し出されたクッションを受け取って、撫でてみる。
エステルさまの言う通り、手触りのよいクッションで、まるで長毛の猫を撫でているような感覚だ。猫カフェ、好きだったなぁ。
前世の記憶を思い出してから、いろんなことがごちゃ混ぜになっている感じがする。
ゲームの『リディア』は、どのルートでも気高い女性だった。
凛としていて、ハッキリと自分の意見を口にする。
その姿はとても凛々しかった。
そう、他の人のルートでも、たまに出てきていたのよね。
きっと、一番出番が多かったのは、アレクシス殿下のルートだったんだろうけど……
私はプレイしていないから……あ、でも、学園での記憶はちゃんとあるのよね。
リディアとして生きていた記憶をたどると、ゲームと共通のルートはあった。
学園生活だからね、テストや学園祭などのイベントの記憶があるの。
「……エステルさま。こちらの学園は、どのような場所ですか?」
気になって問いかけると、エステルさまはぱちくりと目を瞬かせた。
「そうねぇ」
下唇に人差し指を置いて、天井を仰ぐ彼女に、思わず視線の先を追ってしまう。
「自由、だったかしら」
「自由、ですか?」
返ってきた言葉は、意外なものだった。
自由な学園ってどういうこと?
「十代の多感な時期だからね。恋に燃え上がる子もいたし、家を継げないから、と勉強に燃え上がる子もいたわ。懐かしいわねぇ」
「恋に、燃え上がる?」
エステルさまはにっこりと微笑んで、こくりとうなずいた。
「ほら、貴族って政略結婚が多いじゃない? 家のことだから仕方ないって諦めている人たちも多かったけれど、それでも一度くらい好きな人と付き合いって子も多かったのよ」
目をきらめかせながら語るエステルさま。
彼女はきっと、恋の話も好きなんだろうな。
顎の下で両手を組んで、懐かしむように目元を細める姿は、とても乙女の顔をしていた。
「私とアーノルドが出会ったのも、学園だったのよ」
「えっ! 学園で?」
「ダンスパーティーの日に、足を挫いた私を抱き上げてくれたの。彼のたくましさに惚れちゃったのよね」
きゃ、と恥ずかしそうに頬を染めるエステルさまに、彼女たちの馴れ初めがどんなものだったのか、知りたいという欲求が出てきた。
だって、あんまりにも可愛らしい反応をするのだもの。
「そこから、お付き合いをするようになったのですか?」
「……いいえ、その頃の私には、幼い頃からの婚約者がいたの。でもね、その人は浮気性で、『運命の相手を探すため』と女性をとっかえひっかえしていたわ」
はぁ、と重くため息を吐く。
……エステルさまにも、幼い頃からの婚約者がいたのね……
しかも、その人が浮気性の人だったなんて……!
「ある日、耐えきれなくなった私が、学園の片隅で泣いているところに、偶然通りがかったアーノルドが声をかけてきたの」
「まぁっ!」
思わず甲高い声を上げてしまった。
だって、泣いているエステルさまを発見して、声をかけてくれるなんて、ドラマチック!
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