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3章:竜の国 ユミルトゥス
空の散歩 1話
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満天の星空の下で、ファーストキス、なんて……ロマンチックもいいところよね。まるで、私自身が乙女ゲームの主人公になったみたい。
……いいえ、この世界では、誰でも主人公なのよね。
悪役令嬢のリディアとしての人生は、あの日に終わりを迎えて、今の私の人生に変わった。
ここから先は、未知の世界。
そもそも、アレクシス殿下のルートを私がやっていなかったことも含めて、ある意味運命だったのかもしれないわ。
アレクシス殿下はメインだと思っていたから、後回しにしていたのよね。
他の攻略キャラたちとヒロインの恋愛を楽しんで、さぁ最後のメインを楽しもうってときに、命を落とした。
「リディア嬢?」
「フィリベルトさま、どうか私のことは、『リディア』とお呼びください」
目を瞬かせる彼に、にっこりと微笑んでみせる。
この恋がどんなふうに形を変えていくのかはわからないけれど――……きっと、良い方向に私を変えてくれると信じているの。
「敬称はいらない、と?」
「ええ。年齢も同じくらいですし、私と貴方は婚約者ですもの。口調も、フィリベルトさまの楽にしていただいて、構いませんわ」
すらすらと言葉が出てきた。留学生のフィリベルトさまの年齢は、私よりも少し年上だと記憶している。
以前から敬語と砕けた口調が混じっていたし、おそらく砕けた口調のほうが彼の素だろう。
それなら、私の前では素になってほしい。
「……貴女が、それを許してくれるのなら、喜んで」
「ふふ、そうしてくださいな」
口元に手を添えてくすくすと笑うと、フィリベルトさまはずるずるとその場に座り込んでしまった。
そして、星空を見上げると、「あ」と言葉をこぼす。
「どうしました?」
「流星群。……そうか、今日だったか」
流星群? と空に視線を向けると――流れ星が次々と視界に入り、言葉を呑んだ。
「……きれい」
こんなにきれいな星空を、フィリベルトさまと一緒に見られるなんて、やっぱり私って幸せ者ね。
「この時期だとは聞いていたけれど、やっぱりこうして見ると感慨深いな」
「フィリベルトさまは、以前にも見たことが?」
「留学する前にね」
すくっと立ち上がり、フィリベルトさまは私に手を差し伸べる。
「どうせなら、特等席で見ないかい?」
「特等席?」
「そう。ここから呼べるんだ」
彼は親指と人差し指で輪を作り、唇に銜えてピュィ、と指笛を奏でる。
なにをしているのだろう? と不思議そうに目を丸くしていると、にゅっとなにかが顔を覗かせた。
「ムーン!?」
さっきの指笛は、ムーンを呼んだのね。あの音が聞こえるくらい、ドラゴンの耳はいいのかもしれない。
「ムーンに乗って、空の散歩をしよう、リディア」
紳士的に接してくれるフィリベルトさまも素敵だけど、こうして楽しそうに笑う彼も、また魅力的だと感じて、頬に熱が集まる。
ムーンに乗り込もうとしている彼の手を取って、私はワクワクしながら空の散歩はどんな感じかなと胸を高鳴らせた。
……いいえ、この世界では、誰でも主人公なのよね。
悪役令嬢のリディアとしての人生は、あの日に終わりを迎えて、今の私の人生に変わった。
ここから先は、未知の世界。
そもそも、アレクシス殿下のルートを私がやっていなかったことも含めて、ある意味運命だったのかもしれないわ。
アレクシス殿下はメインだと思っていたから、後回しにしていたのよね。
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「リディア嬢?」
「フィリベルトさま、どうか私のことは、『リディア』とお呼びください」
目を瞬かせる彼に、にっこりと微笑んでみせる。
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「敬称はいらない、と?」
「ええ。年齢も同じくらいですし、私と貴方は婚約者ですもの。口調も、フィリベルトさまの楽にしていただいて、構いませんわ」
すらすらと言葉が出てきた。留学生のフィリベルトさまの年齢は、私よりも少し年上だと記憶している。
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それなら、私の前では素になってほしい。
「……貴女が、それを許してくれるのなら、喜んで」
「ふふ、そうしてくださいな」
口元に手を添えてくすくすと笑うと、フィリベルトさまはずるずるとその場に座り込んでしまった。
そして、星空を見上げると、「あ」と言葉をこぼす。
「どうしました?」
「流星群。……そうか、今日だったか」
流星群? と空に視線を向けると――流れ星が次々と視界に入り、言葉を呑んだ。
「……きれい」
こんなにきれいな星空を、フィリベルトさまと一緒に見られるなんて、やっぱり私って幸せ者ね。
「この時期だとは聞いていたけれど、やっぱりこうして見ると感慨深いな」
「フィリベルトさまは、以前にも見たことが?」
「留学する前にね」
すくっと立ち上がり、フィリベルトさまは私に手を差し伸べる。
「どうせなら、特等席で見ないかい?」
「特等席?」
「そう。ここから呼べるんだ」
彼は親指と人差し指で輪を作り、唇に銜えてピュィ、と指笛を奏でる。
なにをしているのだろう? と不思議そうに目を丸くしていると、にゅっとなにかが顔を覗かせた。
「ムーン!?」
さっきの指笛は、ムーンを呼んだのね。あの音が聞こえるくらい、ドラゴンの耳はいいのかもしれない。
「ムーンに乗って、空の散歩をしよう、リディア」
紳士的に接してくれるフィリベルトさまも素敵だけど、こうして楽しそうに笑う彼も、また魅力的だと感じて、頬に熱が集まる。
ムーンに乗り込もうとしている彼の手を取って、私はワクワクしながら空の散歩はどんな感じかなと胸を高鳴らせた。
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