【完結】婚約破棄された悪役令嬢は、一途な愛を注ぎこまれています。

秋月一花

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3章:竜の国 ユミルトゥス

フィリベルトさまと食事 1話

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 ムーンが広い場所に降り、フィリベルトさまが私を抱き上げて地面へ。

 トン、と地面に降ろしてもらい、ムーンに顔を向ける。

「空の散歩、楽しかったわ。ありがとう、ムーン」

 ムーンはこくっと首を縦に動かした。

 私の言葉を理解してくれているみたい。

 竜ってどこまでの知能があるのかしら。

 人と同じくらい? それとも、もっと高いのかな?

「リディア、お腹は空いていない?」
「……そういえば、空きました」

 お腹に手を当てて微笑むと、「じゃあ一緒に食べよう」と手をきゅっと握ってきた。

 指と指を絡めて。

 ゆっくりと歩いて中に入ると、公爵夫妻がドレスアップした姿で玄関前にいた。

「あ、フィリベルト、リディアちゃん。私たち、これから夜会に参加するから、お留守番よろしくね」
「夜会、ですか?」
「ええ。社交界にも顔を出さないとね。きっとリディアちゃんの話題でいっぱいよ」

 え? と目を大きく見開く。

 どうして、私の話題でいっぱいに? とエステルさまとフィリベルトさまを交互に見ると、彼はさっと私の視線から逃れ、エステルさまはおかしそうにくすくすと口元を隠して笑う。

「留学生として、というよりは、フィリベルトの婚約者がくる、ということで話題になっていたんだよ」
「……? 今日、この地についたばかりなのに、ですか?」
「それより前にこいつから手紙をもらっていたからね。噂を広めておいたんだ」

 ……う、噂を広めておいた? わざと?

「学園でもきっと注目の的よ」

 人に注目されるのは慣れているけれど、好奇の視線に晒されることを覚悟しないといけないわね。

 内心苦笑を浮かべつつ、エステルさまとアーノルドさまを見つめながら口を開く。

「お時間は大丈夫ですか?」
「あ、いけない。遅刻はダメよね」
「行ってくるよ、二人とも。リディア嬢、ゆっくり休んでくれ」
「ありがとうございます。夜会、楽しんできてくださいませ」

 フィリベルトさまは「いってらっしゃい」とだけ。

 公爵夫妻を見送って、フィリベルトさまは歩き出す。

「こっちが食堂だよ」

 食堂まで案内され、中に入るとメイドたちが気づいて、すっと頭を下げた。

「食事の準備を頼む」
「かしこまりました」

 すっと椅子を引かれて、そこに座った。その隣に彼が座ると、すぐに食事が運ばれてくる。

 さっき頼んだばかりなのに!? と目をみはった。

 ……でも、とってもいい匂いで、食欲を刺激される。

「美味しそうですね」
「口に合えばいいのだけど……」

 他国の本格的な食事って、初めて食べるかもしれないわ。

 スープやサラダ、メインディッシュはステーキ、かな。

 他にもいろいろな料理が食堂のテーブルに並んでいるけれど、さすがに完食は無理そうだ。
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