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今度こそ、ソロデビューです!?

よん。『牛ほどある大きな2.5頭身の黒猫さんは、自身のお髭を抜いて私の手のひらに載せてくれた』──雪だるまもそうだったけど体の一部が証なの?

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     🐈

 牛ほどある大きな2.5頭身の黒猫さんは、自身のお髭を抜いて私の手のひらに載せてくれた。
 本人が牛ほどもあるので、お髭も太く長い。鉛筆ほどの太さで、30㎝はある。先細りでピンとしていた。

「えっと、ヤマネコさん? 喚ぶ時はなんてお呼びすれば?」
『好きに呼ぶがええ。ヤマネコでもノアでもクロでも』
「そういうもの?」
『そのスニャイム族も、無限収納袋の インフィニティインベントリ 中の蜥蜴も、お主が思う名で呼んでおるであろう? 名は契約だからの、好きに呼ぶがええ』
「じゃ、大きくて黒いからクロちゃんで」
「いや、大きいはどこいった?」
『ホッホッホ。ではの。面白い事に行き合うよう祈っとるよ』

 ゆらっと姿がボヤけて歪むと、空間に溶け込むようにその姿が消えたように見えたけど、どこか目的地に行ったのかな?

「コハク様は、面白好きなのに気難しくてお天気屋なヤマネコ様とも仲良くお話をなされるのですね」
「にゃんこにしたら大きくて頭と身体の大きさのバランスがおかしかったけど、お話のできる、いいヤマネコさんだったよ?」
「そう思われる所がすでに素晴らしいです。さすがスニャイム様のあるじ様」

 なんか、凄いチットちゃん達を持ち上げるけど、実は、妖精の中では、スニャイム族って特殊だとか高貴だとか言うのかな?
 こう、町の年頃の女の子達が、騎士や王子様を語るような、熱の入った目で、チットちゃんやチルちゃんを語るのだ。
 まあ、キールさんもなんだけど、だから余計、妖精族での身分とか実力差とか、あるのかなと思った。
 小さいとか可愛いは、人間の基準であって、巨大な獣の妖精より小さな昆虫に近い妖精のほうが強かったりするし。

 その後も、ときおり何かが近くを通ったりするけれど、皆無関心なのか人間が嫌いなのか、好奇心旺盛なはずの妖精とすれ違うこともなく、
「そろそろ郷の近くになります」
というルーナ姫の声に前を見ると、暗い星空が上下左右に広がっていたのに、天上の川ミルキーウェイのような道の先に、明かりが見えた。

 初めて、星の光を集めたような道に、分かれ道が出来る。

「すみません、皆さん、そのまま目を閉じて、じっとなさっててください。何か聴いても目を開けず、何か触れても声を立てず、耐えてください。申し訳ありません」

 緊張した声で、ルーナ姫様が警告してくる。
 なんか良くないこと? と思ったけど、心の不安が現実になる事もあると言ってたのを思い出し、チットちゃんチルちゃんと出会った頃、三人で薬草採取に行った時のことや、お祖母ちゃん仕込みの、おやつ作りの事なんかの、楽しい事を考えることにした。

 こんな不思議空間なのに、どこからかクッキーを焼くいいニオイがしてくる。お腹空きそう。キールさんのお家についたら、クッキー焼こ。

 隣で、ラジエさんが身動ぐ気配がする。けど、目を開けたり声を出したらイケないって言われてたので我慢する。

 時間にしたらたぶんほんの数分、10分には満たないと思われる間じっとしてると、
「すみません、お待たせしました。郷はそこです。参りましょう」
というルーナ姫様の声に、みんながほっと息をついた。
 私は、クッキーの匂いがお腹空きそうになったけど、みんなはどうだったのかな?

 あとで訊いてみたら、みんな違う事を言うので、頭の中は?でいっぱいになった。







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