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14 撮影誘致とイラスト
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水萌里は味噌汁の他にハムがたんまりと乗ったサラダとお新香を並べる。ハムは旭市の銘柄豚の一つである『いも豚』のハムだ。
「これだけか? 腹減っちまうよ」
洋太が情けない顔で腹をなでた。
「今日のお土産はミニトマトジュースだけじゃないのだぁ!」
水萌里が空いている椅子の上に乗せた買い物かごにはたくさんのおにぎりが入っていた。
「ここのおにぎりがすっごく美味しかったのよ。前は売り切れちゃってたから今日はリベンジ成功よ」
洋太は水萌里がどんどんとテーブルに乗せていくおにぎりの具を物色していった。
「さらにっ、デザートはこれっ!」
豆大福をデンと置く。
真守が自分のおにぎりを選んでいき、水萌里も自分の席に座っておにぎりを選んだ。
「残りは洋太の明日の朝ごはんでいい?」
「もちろん。おにぎりは好きだ! いただきます」
基本的に嫌いなものがない洋太だが、いちいち好きだという姿がかわいい。洋太に頷いてから真守に向いた。
「これもジュースと同じところ?」
「そうよ。干潟中学校の近くにあるヤマザキショップ干潟石毛店っていうところなんだけど、コンビニっぽいけど、ちょっと違ってて、スーパーとも違っててぇ。気軽にランチが買えるお店ね!
視察に来たときにランチを買ったの。その時に見たような気がしたから行ってきたのよ。大正解だったわ」
「上手いな、この米!」
「だよねっ! おにぎりがおいしったの」
「………………その店の名前聞いたことがあるような……ないような……」
おにぎりをむしゃむしゃと食べながらも真守はブツブツと言った。あっと声を出してゴクリと飲み込む。
「旭市観光物産協会の江野さんが紹介してくれるって言ってたおっぺし隊の隊長のお店だ!」
「…………お?」
「おっぺし」
「…………」
江野にやられた件を水萌里としてすっかり気を良くした真守は二つ目のおにぎりを食べ始めた。
「水萌里が気に入ったドラマがあっただろう。あれって旭市が撮影場所なんだよ」
「前にもそう言っていたわね」
「ロケーション誘致って市役所がやっているんだけど、それだけじゃ手が足りないんだって。だから「旭を押す会」の「旭おっぺし隊」が協力してるんだそうだ。その隊長のお店が干潟のヤマザキショップだと聞いた気がする」
旭市役所お墨付きの『あさひロケーションサービス協議会』は映画・ドラマ・コマーシャル等の撮影に対する協力及びロケーションの誘致活動を行うことにより、旭市の魅力、認知度及びイメージの向上を図り、併せて市民の地域に対する誇り及び愛着心の醸成を目的とした協議会で、旭市役所企画政策課内に事務局を設けている。官民一体で撮影を支援しており、その民間部分を『旭おっぺし隊』が担っているのだ。
「そうなんだ」
水萌里は店主らしい男性とイメージが合わず不思議に思ったが反論するようなことでもないので聞き流した。水萌里の感は正しく、真守が話しているのは店主男性の弟のことだ。
「それにしても、そこであのジュースが売られているって不思議だね」
「確かにそうね。でも、とても美味しいって女性店員さんに勧められたし、生産者さんもとっても可愛らしい似顔絵付きで紹介されていたわ」
陳列台には仲良そうに笑っている夫婦の似顔絵が貼られている。お似合いの二人だなと思わせるに充分な温かみのあるそれはイラストレーター『まめやし』の作品で、とても好評だ。『まめやし』の作品はノーマル画だけでなく鉛筆画や版画風画、チビキャラ画などから選べるし、アイコン用もある。
その絵を見て「私たちも書いてもらいたいな」と思った水萌里だったが、現在の状況を心理状態も含めて自分自身もうまく消化できておらず二人には言えずにいた。
そんな水萌里にも友人ができ、一緒に出かけたマルシェ『結びまつり』でマルチな才能のいくつかを見せた『まめやし』とまさかの知り合いになり、絵を書いてもらうことになるのはまだ先の話である。
農家である若夫婦の絵を思い出した水萌里は自然に頬を緩ませた。絵を見ただけなのにその夫婦を気に入ってしまうほど『まめやし』のイラストは素敵だった。
「サンドイッチも美味しかったし、また行きたいわ」
「母さん。朝の分ないぞ」
二人の話も聞かずに一心不乱で食事をしていた洋太は味噌汁のおかわりもすでに自分でしている。そんな洋太の言葉に水萌里は目をパチクリとさせてから大笑いした。
「いいのよ。美味しく食べてなくなったならよかったわ。そろそろ豆大福にする」
「そうだな。これは二個食べていいのか?」
よもぎ大福と白大福が入っているものを二パック買ってきていた。
「いいわよ」
水萌里は三人分のお茶を用意する。
「真守さんも両方食べて。私、おにぎり二つ食べたらお腹いっぱいよ」
「なら、明日の朝に一つもらうよ」
真守はよもぎ大福を取り出して皿に盛った。
「そういえば、俺もおにぎりが美味しいお店を知っているんだよ」
「どこだ!?」
洋太が身を乗り出した。二人の話を聞きながら壁にある旭市の地図を見ると「干潟中学校」はここからは随分と遠く、バイク練習中の洋太にはまだ無理そうな場所であったため残念に思っていたのだった。神力で自転車をバイクのスピードにできなくはないが、神力は大っぴらには使えない。
☆☆☆
ご協力
あさひロケーションサービス協議会事務局(旭市役所企画政策課)様
イラストレーターまめやし様(ご依頼はまめやし様のインスタDMへ)
マルシェ結びまつり様
「これだけか? 腹減っちまうよ」
洋太が情けない顔で腹をなでた。
「今日のお土産はミニトマトジュースだけじゃないのだぁ!」
水萌里が空いている椅子の上に乗せた買い物かごにはたくさんのおにぎりが入っていた。
「ここのおにぎりがすっごく美味しかったのよ。前は売り切れちゃってたから今日はリベンジ成功よ」
洋太は水萌里がどんどんとテーブルに乗せていくおにぎりの具を物色していった。
「さらにっ、デザートはこれっ!」
豆大福をデンと置く。
真守が自分のおにぎりを選んでいき、水萌里も自分の席に座っておにぎりを選んだ。
「残りは洋太の明日の朝ごはんでいい?」
「もちろん。おにぎりは好きだ! いただきます」
基本的に嫌いなものがない洋太だが、いちいち好きだという姿がかわいい。洋太に頷いてから真守に向いた。
「これもジュースと同じところ?」
「そうよ。干潟中学校の近くにあるヤマザキショップ干潟石毛店っていうところなんだけど、コンビニっぽいけど、ちょっと違ってて、スーパーとも違っててぇ。気軽にランチが買えるお店ね!
視察に来たときにランチを買ったの。その時に見たような気がしたから行ってきたのよ。大正解だったわ」
「上手いな、この米!」
「だよねっ! おにぎりがおいしったの」
「………………その店の名前聞いたことがあるような……ないような……」
おにぎりをむしゃむしゃと食べながらも真守はブツブツと言った。あっと声を出してゴクリと飲み込む。
「旭市観光物産協会の江野さんが紹介してくれるって言ってたおっぺし隊の隊長のお店だ!」
「…………お?」
「おっぺし」
「…………」
江野にやられた件を水萌里としてすっかり気を良くした真守は二つ目のおにぎりを食べ始めた。
「水萌里が気に入ったドラマがあっただろう。あれって旭市が撮影場所なんだよ」
「前にもそう言っていたわね」
「ロケーション誘致って市役所がやっているんだけど、それだけじゃ手が足りないんだって。だから「旭を押す会」の「旭おっぺし隊」が協力してるんだそうだ。その隊長のお店が干潟のヤマザキショップだと聞いた気がする」
旭市役所お墨付きの『あさひロケーションサービス協議会』は映画・ドラマ・コマーシャル等の撮影に対する協力及びロケーションの誘致活動を行うことにより、旭市の魅力、認知度及びイメージの向上を図り、併せて市民の地域に対する誇り及び愛着心の醸成を目的とした協議会で、旭市役所企画政策課内に事務局を設けている。官民一体で撮影を支援しており、その民間部分を『旭おっぺし隊』が担っているのだ。
「そうなんだ」
水萌里は店主らしい男性とイメージが合わず不思議に思ったが反論するようなことでもないので聞き流した。水萌里の感は正しく、真守が話しているのは店主男性の弟のことだ。
「それにしても、そこであのジュースが売られているって不思議だね」
「確かにそうね。でも、とても美味しいって女性店員さんに勧められたし、生産者さんもとっても可愛らしい似顔絵付きで紹介されていたわ」
陳列台には仲良そうに笑っている夫婦の似顔絵が貼られている。お似合いの二人だなと思わせるに充分な温かみのあるそれはイラストレーター『まめやし』の作品で、とても好評だ。『まめやし』の作品はノーマル画だけでなく鉛筆画や版画風画、チビキャラ画などから選べるし、アイコン用もある。
その絵を見て「私たちも書いてもらいたいな」と思った水萌里だったが、現在の状況を心理状態も含めて自分自身もうまく消化できておらず二人には言えずにいた。
そんな水萌里にも友人ができ、一緒に出かけたマルシェ『結びまつり』でマルチな才能のいくつかを見せた『まめやし』とまさかの知り合いになり、絵を書いてもらうことになるのはまだ先の話である。
農家である若夫婦の絵を思い出した水萌里は自然に頬を緩ませた。絵を見ただけなのにその夫婦を気に入ってしまうほど『まめやし』のイラストは素敵だった。
「サンドイッチも美味しかったし、また行きたいわ」
「母さん。朝の分ないぞ」
二人の話も聞かずに一心不乱で食事をしていた洋太は味噌汁のおかわりもすでに自分でしている。そんな洋太の言葉に水萌里は目をパチクリとさせてから大笑いした。
「いいのよ。美味しく食べてなくなったならよかったわ。そろそろ豆大福にする」
「そうだな。これは二個食べていいのか?」
よもぎ大福と白大福が入っているものを二パック買ってきていた。
「いいわよ」
水萌里は三人分のお茶を用意する。
「真守さんも両方食べて。私、おにぎり二つ食べたらお腹いっぱいよ」
「なら、明日の朝に一つもらうよ」
真守はよもぎ大福を取り出して皿に盛った。
「そういえば、俺もおにぎりが美味しいお店を知っているんだよ」
「どこだ!?」
洋太が身を乗り出した。二人の話を聞きながら壁にある旭市の地図を見ると「干潟中学校」はここからは随分と遠く、バイク練習中の洋太にはまだ無理そうな場所であったため残念に思っていたのだった。神力で自転車をバイクのスピードにできなくはないが、神力は大っぴらには使えない。
☆☆☆
ご協力
あさひロケーションサービス協議会事務局(旭市役所企画政策課)様
イラストレーターまめやし様(ご依頼はまめやし様のインスタDMへ)
マルシェ結びまつり様
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