朝凪の口付け

One hundredth time「少し」

3話※

ねちねちと動かれる、そのたびにくねらせて浮いてしまう自分の腰が膣壁を圧迫して。
指との間に空いた隙間からか。
トロトロしたものが伝ってはお尻どころかシーツを汚した。

「あん……っメ…ぁあっ」

それが血液なのか愛液なのかは分からなかった。

そのあとに内部を塗り広げるような動きで変化をつける。
今度はじわっじわっと溢れては広がっていく気持ち良さに、かたく目を閉じて唇を噛む。

クチュックチュ、クチュ……

そんな音をさせながらぬめった太い指を回して擦り付ける。
焦りにも似た快楽の間隔が狭まってきて、ブルっ、と体を震わせた。

「……これでもそのうちイきそうだな」

私のまぶたの薄い皮膚に滑る唇の感触。

まるで繋がってるみたいに、中で彼に弄られてる部分が痺れた。
少し奥に進んだそれが、
タクマさんの指先と関節が、
私も知らない場所を触ってる。

痺れて、熱くて。

「…っ！ ……んッ」

続けざまにもうとっくに尖っていたらしい花芽に触れられる。
それは体を突き抜けるような感覚で。

二つの指に挟まれて、振動を送ってくるような動きは今の私には耐えられない。

「イッ…あぁ、やっ…！」

それでまた腰が跳ねて体を大きくこじ開けられた瞬間に小さく悲鳴をあげた。
直前に襲ってきた絶頂の波が強烈過ぎる。

タクマさんが入ってきた衝撃が、それをさらに押し上げる。

受け止めきれない。 

でも、傍流に無理矢理押し出された閃光のような瞬間。

細かな震えをなんども繰り返していた間に、唇が合わさった気がした。


ようやくまともな視界や正常な感覚が体に戻る頃。

私を気遣うような彼の瞳が目の前にあった。

「いちお、あんまり、痛くないようにしたつもり……だけど。 自爆だな、コレ」

「た……タ、クマ……さ…」

「グイグイ扱かれて、勝手に持ってかれる……辛くないな？」

こく、ん。 とぎこちなく頷くと、いつの間にまた泣いていたのか。
濡れたこめかみや頬に口付けをしてくれた。

その時始めて、タクマさんの額に薄らと汗が浮かんでいるのに気付いた。

とても優しくしてくれたんだと思う。


入っている彼で感じる違和感は凄いけど、それでも彼と繋がれたという多幸感の方が勝った。

「タク…さ……も、気持ち良くなっ…て」

「……いや、充分。 つか漏れるし、一旦抜く」

ふと、今までいっぱいいっぱいだったせいで、自分にばかりかまけてたことに気付いた。


タクマさんも、気持ちよくなれたかな……？

体を離したタクマさんに目だけを向ける。
腰の隙間から見えた彼のは、なんだかまだ上を向いてるみたいな感じだった。
というか、やっぱり男の人のアレってすごい。

見慣れないものにドキドキしながら目を泳がせてると、彼が抜き取った避妊具らしきものをティッシュに包んでゴミ箱に放る。

「あ、あの」

「ん？」と、目で聞きながら私の横に寝転んで、薄い肌掛けでくるんでくれる。
眠るにはまだ早い時間かも知れないけど、やっぱり緊張していたのか。
やっと私の体の力が抜けた気がしてほうっと息を吐いた。

「……いけた、の？ タクマさんも」

「少し」

少しって、なんだろう。

「やっぱ少し血付いてた。 ホントに平気か？」

「うん。  気持ち良い方が……すごくて。 あ、でもまだお腹になんかいるみたいな気も？」

「そっか。 素直でエロい体に育って良かったな」

「う、うん？  でも、タクマさんは……」

「処女相手に我忘れてズコバコやれるほど神経太かねぇし……途中でも、無事にくっ付けたんなら今晩はいい。 大丈夫そうなら、明日ちゃんとやりてえけど、出来れば」

「明日」

「大丈夫そうなら」

「じゃあ、明日は、タクマさんの好きにしてね？」

頭の下にあった腕からよじ登って、彼の胸に頬を擦り付ける。
しると自分の腿のあたりに硬く押される熱を感じた。

「……あれ？ またなんか」

「うるせぇな、さっさと寝るぞ……」


窓の外。
遠くからはコロコロと鳴く虫の音が聴こえる。

安寧と、しめやかに降りていく夜のとばりの中で。
初めてをタクマさんと過ごした。

「……私ね、すごく幸せだよ」

緩く回された腕が髪を撫でてきた。
うっとりと彼に委ね、タクマさんの温かさに涙ぐみそうになりながら目を閉じる。