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11、英雄辺境貴族と出会う

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ーーさあ、これから出発だ……と言う瞬間、屋敷の呼び鈴が鳴った。

ーー!?
ヘンリーは焦った。
仕事場にいないことが、もうバレたのか、とか、
ギルドの仕事がもう終わっているのがバレたのか、とか、
逃げようと屋敷に帰ってきているのがバレたのか、とか、
ーー悪い方悪い方へと考えてしまう。

チラリとルルとララの方を見ると、
『確認してきます』
とルルが確認に行ってくれる。
すぐに戻ってきたルルから、と言う。

「……きじょきゅ(貴族)……」
思わず生唾を飲むと、フェイにすると、自分をのせたままフェイが玄関まで移動してくれる。

魔法を使うのにまだ不安があったから、直接
門の外が見える窓からそっと外を確認する。さすがにフェイにび高さの調は難しいかもしれないと、時間がかかるかもしれないと、そう思って、うつ伏せになったフェイを踏み台にして窓の外を覗いた。

ーー確かにのが何とか見える。

「(誰だろう?)」
すぐにはその人が誰かわからなかったけど、《》には何も引っ掛かってこないので、とりあえずは《》でもなく《》でもないことがわかる。

「(とりあえず、中に入ってもらうかな? 本人は勿論、あの場所も目立つから……)」
そう思ったヘンリーは、ルルに馬車ごと中に入ってもらうように命じた。

ーーその人物も門を開けて現れたルルに大人しく従って馬車にのって門を潜って玄関の前までやって来る。

「(ここから見る限り、あまり豪華な馬車じゃないな)」
そう思いながら、質素な馬車からその人が降りて玄関に入ってくるのを待った。

ーー応接間に通したその人物にルルに《》を聞くように指示する。
やっぱり、なその人はメイドのルルの質問に嫌な顔ひとつもしないで答えてくれる。

「……はい。実は英雄であらせられるヘンリー殿に
と頭を下げる姿に、その人が誰か思い出す。

「あ」
思わず声を出してしまうと、ドアの隙間から覗いていた自分に気が付いたその人は、からに変わって、
「やあ、 」
と、わざわざ膝をついて目線を合わせるように声をかけてくれる。

「(滅茶苦茶いい人だ)」
そんな些細なことに感動してしまう。

ーーでも、
「(……ど、どうしよう。人に会った時の対処法を考えていなかった)」
心の中だけで焦っていたと思っていたけど、でもその焦りはもろに顔にでていたらしく、心配してくれたのか抱き上げて不安を取り除こうとしてくれる。

?」
自分を心から気遣ってくれる優しい質問に、
「おりぇ、ふぇんりぃーれしゅ(俺、ヘンリーです)」
と素直に答えてしまった。

「しまった」と思った時には遅く、
「え!? ?」
と驚いたように聞き返されていた。

ーー奇妙な沈黙が流れていく。
もう、誤魔化せないかもしれないのと、正直、のもあって素直に事情を話すことにしたのだった。


ーー過労死寸前まで仕事を押し付けられていたこと、
それを回避するために仕事をやめたこと、
今、ギルドに時間稼ぎしてもらってること、
魔力を分散させようとあいて大魔法使ったら失敗して幼児になってしまったことを、は難しいのでことで説明をした。

ーー話し終えると、
正直どうしたらいいのかわからず、とりあえず泣き止むまで待ってみる。

「……コホンッ。失礼しました」
その人は軽く咳払いをしてから、
「改めまして、ここより辺境の地にて領主を勤めさせていただいております、スチュワート・アーヴァイン伯爵と申します」
と胸に手を当てて丁寧に挨拶してくれる。

ーーどうやら、ちゃんと話を信じてくれたようだ。
その優しい目を真っ正面から見つめると、世の中にはまだまだこんなにもがいるのだと実感して改めて心が温かくなってくるのだった。
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