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37、誤解
しおりを挟む朝目覚めて思った事は、お腹が空いた、という事でしょうか。
寝る前にあーだこーだと難しいことを考えたお陰か何なのか、かなりエネルギーを使ったようです。
お腹が空きすぎて目が覚めました。
さっさと学園へ行く準備をしてお腹の虫を満足させるために食堂へ向かいます。
食堂は既に半分ほど席が埋まっていましたが、例の如く春日井くんが手を振って俺を呼んでくれています。
何時ものTHE朝食セットを注文して春日井くんの待つ席へ行きかけて、足が止まりました。
春日井くんの隣に生徒会長さん、俺が座るであろう席の両隣には不破先輩と生駒先輩が居たからです。
何でしょうか、あのキラキラしい一団は。
俺、あそこに行かなきゃならないんでしょうか……。
心なしか、他の生徒さんがキラキラ一団の皆さんを熱っぽい視線で見つめている気がします。
でも呼ばれているんですよね…。
お腹も空いてます…。
今日は1日、苦労する日になりそうです…。
俺は意を決して止まっていた足を動かします。
何時ものように春日井くんの前……不破先輩と生駒先輩の間に座ります。
「おはようございます。皆さんが一緒に居るなんて珍しいですね」
「俺が飯食ってたらそこの1年が座ったんだよ」
「俺が来たときにはこの席しか空いてなくて」
「俺は春日井くんと田中くんに用事があってね。春日井くんと居れば田中くんは来るだろう?」
「俺は生徒会長に聞きたいことあったんだよね」
不破先輩、春日井くん、生徒会長さん、生駒先輩が順番に話してくれるので、目まぐるしく顔を動かしてしまいました。
成る程、と納得して両手を合わせてご飯を食べ出します。
何はともあれ、お腹の虫を満足させなくては。
「ミノル、髪濡れてんぞ」
「寝癖が酷くて何時もシャワー浴びてるんです。お腹空いちゃってたんで髪は乾かすの忘れてました」
「朝練で使ってないタオルあるからこれで髪拭いて、ミノルくん」
不破先輩に指摘された髪を軽く弄って言うと、生駒先輩が大きなスポーツバッグから真新しいタオルを取り出して渡してくれます。
いらない、と断ろうとしましたが、生徒会長さんが一足先に口を開きました。
「髪が濡れたままじゃ風邪を引いてしまうかもしれないだろう?有難く使わせてもらったらいいと思うよ」
「田中くんの髪綺麗だから痛むの勿体ないと思うよ」
春日井くんまで…。
お断りしづらくなってしまいました。
「えっと…ありがとうございます、生駒先輩。有難く使わせて頂きます」
生駒先輩が差し出してきたタオルを受け取り、軽く頭を下げてお礼を言います。
生駒先輩は気にした素振りを見せずに笑顔を浮かべただけでしたが、新しいタオルを買ってお返しせねばなりませんね。
そうこうしてる間に朝食を食べ終えてしまいましたが…どうも足りないです。
昨日の考え事はそんなにエネルギー消費が酷かったんでしょうか?
「田中くん、もしかして足りない?」
不満気にお腹を押さえる俺を見て、春日井くんがお箸を持つ手の動きを止めてしまいました。
「あ……いえ、大丈夫です」
「でも、何時もの可愛い笑顔がないよ?」
「……かわ…え?」
何を言ってるんですかね、春日井くんは。
「なになに?どう言う事?」
生駒先輩、食い付かないで下さい。
「田中くん、お腹いっぱいの時は満足そうに可愛い笑顔浮かべるんすよ」
春日井くんがまた変な事言ってます。真に受けちゃダメですよ、生駒先輩。
「確かにミノルは食い物食って満足したらかわいー顔するよな」
不破先輩までおかしな事言い出したんですが。
ちょ、生徒会長さんも頷かないで下さい。
「そうなんだ?!じゃあまだお腹いっぱいじゃないんだね、ミノルくん」
「た、確かに…お腹いっぱいじゃないですが…皆さんが言う可愛い?笑顔は浮かべた記憶が無いですよ?」
俺が慌てて皆さんの誤解を解こうとしますが、逆に驚いた顔をされました。何故ですか!
「無自覚かよ…」
「天然かな…」
「気付いてなかったんだ…」
何やらぶつぶつと呟く声が聞こえます。
無自覚ってなんですか。
天然ってなんですか。
何に気付いてないというんですか!
俺の分からないところで何かに驚いて納得している3人をよそに、生駒先輩はまた何やらスポーツバッグをガサゴソしてます。
その大きなスポーツバッグには何が詰め込まれてるんですか。
夢と希望ですか?
大量のタオルじゃないんですか?
汗臭いユニフォームとかならいらないですからね。
お腹空いた…。
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