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第三章 神の悪戯
第百八十六話 廃坑の迷宮:第一区域《2》
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そしてゾンビを全滅させた後も順調に進んだナギは何度かゾンビやコウモリなんかと戦いながらも進むことが出来た。しかも途中には採掘ポイントも複数あって、そこではナギとソルテの2人はテンション爆上がりして採掘に専念した。
そうしたちょっとした寄り道もありながら道中は順調に進むことが出来てはいた。
あまりにも簡単すぎる現状にナギは不信感を持ち始めていた。
「…」
『どうしたんですか?』
「簡単すぎるな~と思ってな」
『そうですか?』
順調に進んでいるなか警戒心を強めるナギにソルテは不思議そうに見上げていた。
そんな風に見られてもナギは正面への警戒を緩めず、更には通り過ぎたはずの背後にすら警戒をしていた。警戒しすぎているようにも見えるナギのその様子にソルテは不安そうに見つめ、もしかして本当になにかあるのかも?と思いついの妖精の力を使って周囲の索敵に力を入れるのだった。
そうして進むとソルテはある事に気が付いてコートから出てナギを止めた。
『ちょっと止まってください!』
「…何かあったのか?」
『はい、周囲を索敵している時に偶然気が付いたんですけど、来た道も含めて複数の隠し通路が存在しているようです。正確に言えば封鎖された坑道だとは思いますけど…』
「そこをあのロキが隠し通路として改変したと言うことか」
『それで間違いないと思います』
話を聞いたナギはすぐにロキが何をしたのか予想を立てて、それにソルテも同意した。
周囲の索敵をするために土に干渉する事で調べている時に気が付いた隠し通路。そこを封鎖された坑道だとソルテが断言できたのは、その周囲の岩肌に崩落した形跡を感じることが出来たからだ。
そんな話を聞いては簡単に進むのは危険だと判断してナギは引き返しながら隠し通路を確認することにした。
「これから一度戻るけど、途中で隠し通路を見つけたら教えてくれ」
『わかりました!』
短くそう伝えるとナギは警戒を緩める事無く来た道を戻る。
目印に付けた傷は消えることはないのでそれを頼りに戻っていると、さっそくソルテが隠し通路を見つけて静かにそこへと案内した。
「…軽く見ただけだと気が付きようがないな。いや、近寄ってみた今もそこまではっきりとは分からないけどな」
『もの凄く上手に隠されてますからね~一応ですけど、中には敵の反応はないですよ』
「そうか…ならとりあえず、砕けないないか試してみるか!」
近寄って調べても偽装を見破る事の出来なかったナギは手に持っていたピッケルで壁を破壊できないか確認することにした。この時のナギは知らなかったが偽装を見破るのは盗賊などのジョブに着く者が習得している【看破】や【発見】などのスキルが必要となる。
そしてナギが振り下ろしたピッケルはガガンッ!と初めて聞く硬い物を削り砕くような音を発した。
「っ!手がしびれるかと思ったぁ~~!」
AOでは痛みなどは感じないのだが衝撃は感じるので、初めて感じる硬い壁を全力で殴った衝撃に思わず声を上げた。今までも硬い敵に対して切りつけたりはしているのだが、戦闘中のナギは意識が通常時とはかなり変化しているので気にしていないではなく、気が付いてすらいなかった。
ただ今回は戦闘が少し前から一度も無いので初めてちゃんと感じた衝撃に驚いたと言う事だ。
「ふぅ…とにかく壁は砕く事はできそうだな。ピッケルの消耗が気になるけど、まぁ大量に買い込んだし問題ないだろ!」
『本当に大量に買いましたからね…』
疲れたように同意したソルテはピッケルを買った時の事を思い出していた。イベント報酬で小金持ちになったな阿木は鉱石は今後も使うからと言って、ゴド爺さんに頼んでピッケルをまとめ買いしていたのだ。
その数は1本500Gほどだったが10本以上まとめ買いしたので所持金はほぼなくなっていた。一応ソルテは買いすぎだと注意したのだが、消耗品は大量概しておきたいタイプだったナギは無視して買い込んだ。
ただ結果的にだが今回はピッケルの出番は多くなりそうなので問題はなくなったのだ。
「それじゃ頑張って壊しますか‼」
そう言って気合を入れたナギだったが本当に大変だったのはここからだった。目の前の壁は固い事もそうだったが想像以上に分厚く出来ていたようで、二つが合わさった結果砕くのに時間が想定よりも多く必要とした。
しかもいくら破壊しても周囲の景色が何か変化するわけでもないので、端的に言うと長時間も同じ場所を掘っていると飽きが来る。それでもナギは何とか無心を貫いて必死にピッケルを振り続けて何とか砕く事に成功した。
「あぁ……今日はもう帰ってもいいかな?」
『気持ちは分かりますけど、せめて開いた隠し通路くらいは確認しましょうよ?』
「…確かにそうだな。じゃ、ここだけ確認して今日は終わるか」
すでに壁を砕くので燃えつき始めているナギは気の抜けた感じで答えながら開けた壁の奥へと入っていった。
そこは良くある展開として壁面が不思議と光っていた…なんて言う事はなかったが、先ほどまでとは比べ物にならない数の採掘ポイントが無数に存在していた。しかもその採掘ポイントを示す光がいつもより少し強く光って見えたのだ。
『おぉ~!これは当たりですよ‼』
「あたり?」
その通路の光景を見たソルテは興奮した様子で叫んでいた。ただ言った内容が理解できなかったナギが不思議そうにすると、興奮した様子のままぐっ!と一気に近寄って来て説明を始めた。
『あたりと言うのはですね!ここのように普通の採掘可能の証拠の光が強く光る時や色が違ったり、明滅するなど普段とは違う反応を示している場所の事を言うんです!そんな場所では通常では出ないような希少な鉱石なんかが高確率で出るんですよ‼鹿Ⅿ品質なんかも軒並み【良】以上です!』
「マジでか⁉」
『はい!でも見つかるのは数百近い採掘場所を巡っても、ひと月に一つ見つかればいい方なんですが…』
「ここには溢れるほどあった訳か」
そう言ってナギとソルテの2人が視線を通路に戻すとそこに存在する採掘ポイントは見える範囲だけでも、ほとんどが明滅したりと当りと言われる物が大量に存在していた。
さすがにこの状況には興奮していたソルテも何かを感じたのか一気に冷静になっていた。
そしてナギも目の前のレアな採掘ポイントには露骨すぎるほどに罠の気配を感じた。
「もうこれは確実に罠だろうなぁ」
『そうですよね~残念ですけど、諦めますか?』
「…いや、入り口付近だけ採掘して何か起きればすぐに走って逃げよう」
『いいんですか?』
「あぁ、またここに来れる保証もないからな」
普段のナギならもう少し慎重に行動したかもしれないが今は少し疲れているし、なによりも目の前にあるレアアイテムの可能性を見逃すのはもったいない気がしたのだ。
更に言えば再度ここに来てもこの通路へと戻ってこれる保証もない。だからこそ今回は危険を冒してでも採掘して行くことにしたのだ。
ナギとソルテの2人は最大限に警戒しながら入り口付近の採掘ポイント13か所ほどを採掘すると、ついに何かが作動した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「っ⁉逃げるぞ!」
『はい!』
そして通路が揺れて奥から何かが向かって来るのを感じ取ったナギが叫びながら走り出し、すぐに反応したソルテもナギのコートの端にしがみつく形で逃げ出す。
後ろで何が起きているのか?後ろから迫るのは一体?などなど浮かぶ疑問は数知れない。だが今のナギには後ろを確認する余裕など欠片も無い。
なにせ後ろから迫る何かの正体はわからないが本能がしきりに『早く逃げろ!』とうるさく感じるほどに訴えてくるのだ。経験からこういう時の本能は裏切らないと確信しているナギは何かに追われる感覚を常に味わいながら何とかセーフエリアまで走り抜けたのだ。
そして逃げ切る事の出来たナギとソルテはもはや採掘した物の確認をする元気など残っておらず、話す元気もそんなに残っていなかったようでその日はナギはログアウトして融けるように眠った。
そうしたちょっとした寄り道もありながら道中は順調に進むことが出来てはいた。
あまりにも簡単すぎる現状にナギは不信感を持ち始めていた。
「…」
『どうしたんですか?』
「簡単すぎるな~と思ってな」
『そうですか?』
順調に進んでいるなか警戒心を強めるナギにソルテは不思議そうに見上げていた。
そんな風に見られてもナギは正面への警戒を緩めず、更には通り過ぎたはずの背後にすら警戒をしていた。警戒しすぎているようにも見えるナギのその様子にソルテは不安そうに見つめ、もしかして本当になにかあるのかも?と思いついの妖精の力を使って周囲の索敵に力を入れるのだった。
そうして進むとソルテはある事に気が付いてコートから出てナギを止めた。
『ちょっと止まってください!』
「…何かあったのか?」
『はい、周囲を索敵している時に偶然気が付いたんですけど、来た道も含めて複数の隠し通路が存在しているようです。正確に言えば封鎖された坑道だとは思いますけど…』
「そこをあのロキが隠し通路として改変したと言うことか」
『それで間違いないと思います』
話を聞いたナギはすぐにロキが何をしたのか予想を立てて、それにソルテも同意した。
周囲の索敵をするために土に干渉する事で調べている時に気が付いた隠し通路。そこを封鎖された坑道だとソルテが断言できたのは、その周囲の岩肌に崩落した形跡を感じることが出来たからだ。
そんな話を聞いては簡単に進むのは危険だと判断してナギは引き返しながら隠し通路を確認することにした。
「これから一度戻るけど、途中で隠し通路を見つけたら教えてくれ」
『わかりました!』
短くそう伝えるとナギは警戒を緩める事無く来た道を戻る。
目印に付けた傷は消えることはないのでそれを頼りに戻っていると、さっそくソルテが隠し通路を見つけて静かにそこへと案内した。
「…軽く見ただけだと気が付きようがないな。いや、近寄ってみた今もそこまではっきりとは分からないけどな」
『もの凄く上手に隠されてますからね~一応ですけど、中には敵の反応はないですよ』
「そうか…ならとりあえず、砕けないないか試してみるか!」
近寄って調べても偽装を見破る事の出来なかったナギは手に持っていたピッケルで壁を破壊できないか確認することにした。この時のナギは知らなかったが偽装を見破るのは盗賊などのジョブに着く者が習得している【看破】や【発見】などのスキルが必要となる。
そしてナギが振り下ろしたピッケルはガガンッ!と初めて聞く硬い物を削り砕くような音を発した。
「っ!手がしびれるかと思ったぁ~~!」
AOでは痛みなどは感じないのだが衝撃は感じるので、初めて感じる硬い壁を全力で殴った衝撃に思わず声を上げた。今までも硬い敵に対して切りつけたりはしているのだが、戦闘中のナギは意識が通常時とはかなり変化しているので気にしていないではなく、気が付いてすらいなかった。
ただ今回は戦闘が少し前から一度も無いので初めてちゃんと感じた衝撃に驚いたと言う事だ。
「ふぅ…とにかく壁は砕く事はできそうだな。ピッケルの消耗が気になるけど、まぁ大量に買い込んだし問題ないだろ!」
『本当に大量に買いましたからね…』
疲れたように同意したソルテはピッケルを買った時の事を思い出していた。イベント報酬で小金持ちになったな阿木は鉱石は今後も使うからと言って、ゴド爺さんに頼んでピッケルをまとめ買いしていたのだ。
その数は1本500Gほどだったが10本以上まとめ買いしたので所持金はほぼなくなっていた。一応ソルテは買いすぎだと注意したのだが、消耗品は大量概しておきたいタイプだったナギは無視して買い込んだ。
ただ結果的にだが今回はピッケルの出番は多くなりそうなので問題はなくなったのだ。
「それじゃ頑張って壊しますか‼」
そう言って気合を入れたナギだったが本当に大変だったのはここからだった。目の前の壁は固い事もそうだったが想像以上に分厚く出来ていたようで、二つが合わさった結果砕くのに時間が想定よりも多く必要とした。
しかもいくら破壊しても周囲の景色が何か変化するわけでもないので、端的に言うと長時間も同じ場所を掘っていると飽きが来る。それでもナギは何とか無心を貫いて必死にピッケルを振り続けて何とか砕く事に成功した。
「あぁ……今日はもう帰ってもいいかな?」
『気持ちは分かりますけど、せめて開いた隠し通路くらいは確認しましょうよ?』
「…確かにそうだな。じゃ、ここだけ確認して今日は終わるか」
すでに壁を砕くので燃えつき始めているナギは気の抜けた感じで答えながら開けた壁の奥へと入っていった。
そこは良くある展開として壁面が不思議と光っていた…なんて言う事はなかったが、先ほどまでとは比べ物にならない数の採掘ポイントが無数に存在していた。しかもその採掘ポイントを示す光がいつもより少し強く光って見えたのだ。
『おぉ~!これは当たりですよ‼』
「あたり?」
その通路の光景を見たソルテは興奮した様子で叫んでいた。ただ言った内容が理解できなかったナギが不思議そうにすると、興奮した様子のままぐっ!と一気に近寄って来て説明を始めた。
『あたりと言うのはですね!ここのように普通の採掘可能の証拠の光が強く光る時や色が違ったり、明滅するなど普段とは違う反応を示している場所の事を言うんです!そんな場所では通常では出ないような希少な鉱石なんかが高確率で出るんですよ‼鹿Ⅿ品質なんかも軒並み【良】以上です!』
「マジでか⁉」
『はい!でも見つかるのは数百近い採掘場所を巡っても、ひと月に一つ見つかればいい方なんですが…』
「ここには溢れるほどあった訳か」
そう言ってナギとソルテの2人が視線を通路に戻すとそこに存在する採掘ポイントは見える範囲だけでも、ほとんどが明滅したりと当りと言われる物が大量に存在していた。
さすがにこの状況には興奮していたソルテも何かを感じたのか一気に冷静になっていた。
そしてナギも目の前のレアな採掘ポイントには露骨すぎるほどに罠の気配を感じた。
「もうこれは確実に罠だろうなぁ」
『そうですよね~残念ですけど、諦めますか?』
「…いや、入り口付近だけ採掘して何か起きればすぐに走って逃げよう」
『いいんですか?』
「あぁ、またここに来れる保証もないからな」
普段のナギならもう少し慎重に行動したかもしれないが今は少し疲れているし、なによりも目の前にあるレアアイテムの可能性を見逃すのはもったいない気がしたのだ。
更に言えば再度ここに来てもこの通路へと戻ってこれる保証もない。だからこそ今回は危険を冒してでも採掘して行くことにしたのだ。
ナギとソルテの2人は最大限に警戒しながら入り口付近の採掘ポイント13か所ほどを採掘すると、ついに何かが作動した。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴッ!
「っ⁉逃げるぞ!」
『はい!』
そして通路が揺れて奥から何かが向かって来るのを感じ取ったナギが叫びながら走り出し、すぐに反応したソルテもナギのコートの端にしがみつく形で逃げ出す。
後ろで何が起きているのか?後ろから迫るのは一体?などなど浮かぶ疑問は数知れない。だが今のナギには後ろを確認する余裕など欠片も無い。
なにせ後ろから迫る何かの正体はわからないが本能がしきりに『早く逃げろ!』とうるさく感じるほどに訴えてくるのだ。経験からこういう時の本能は裏切らないと確信しているナギは何かに追われる感覚を常に味わいながら何とかセーフエリアまで走り抜けたのだ。
そして逃げ切る事の出来たナギとソルテはもはや採掘した物の確認をする元気など残っておらず、話す元気もそんなに残っていなかったようでその日はナギはログアウトして融けるように眠った。
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