上 下
193 / 294
第三章 神の悪戯

第百八十八話 廃坑の迷宮:第一区域《踏破完了》

しおりを挟む
 セーフエリア内に会った隠し通路を進むナギは他にも悪質な罠などがないかと警戒しながら進む。
 しかしこの通路は一本道でしばらく進むと目の前には、これまたあからさまに『ボス部屋です!』と言った感じの鉄扉が存在していた。

「これ…開けたら爆発したりしないよな?」

『さ、さすがにそこまではしないと思いますよ?ほら、一応どう達成するのかに興味あるみたいですし…』

 もはや人間不信ならなぬ『ロキ不審』になっているナギが警戒して扉を開けていいか悩んでいると、さすがにソルテはそこまでの事はしないと思っているのかそう言った。
 それでも警戒は必要と思ったナギは無駄にたまっている石ころを扉に投げつけて確認して、何も起こらないのを確認するとゆっくりと手を扉に着いた。すると特に力入れてないのに巨大な扉がひとりでに開き始めた。

「ほら、こういうことするじゃん」

『まぁ…ただ開いただけですしね。罠って訳ではないと思いますよ?親切なんですよ‼』

 もはやロキの仕掛けたこの迷宮のすべてを信じられなくなってきているナギにまたしてもソルテが何とか頑張ってもらおうと励ます。
 その言葉に背中を押されながらナギは嫌そうにしながらも部屋の中へと入った。
 大きくとにかく広い大部屋になっていたその部屋は明かりがないのか最初は暗かった。だがナギが中央近くへと進み出ると壁際に会った松明が一斉に付き始めた。

 そうすると奥には入り口と同じような扉が見えて、その前に守護するように木製の騎士像が三体並んでいた。
 騎士像は一体一体が2m以上の大きさで持つ武器は大盾と片手剣・槍・杖の組み合わせを変えた三体だった。

「あの杖持ちは木造なのに魔法を使うって事か…めんどくさ」

『そんなこと言ってる暇なさそうですよ?』

 騎士像の持つ武器を確認したナギはうんざりしたようにしていたが、ソルテの言葉に反応して正面を確認した。
 そこでは騎士像が達が武器を構えて今にも攻撃して来ようとしていた。

「何であんなやる気に満ちてるんだろうか…」

『ああいうゴーレムタイプと呼ばれる無機物系の魔物はあんな感じですよ。特にボス部屋にいる個体は、部屋に入った相手を倒す事を優先しますからね…これ普通の魔物なら別なんですけど』

「そう言う感じなのか、まぁとにかくこいつらを倒さないと進めないのはたしたと言う事だし…ぶっ壊してやろうじゃないか!」

 もういろいろストレスもたまって来ていたナギは明確にぶっ壊してもいい敵が現れ、しかも倒さないと進めないと言う条件がある事も影響して少しテンションが狂い始めていた。
 そしてナギのその宣言を合図にしたように3体の騎士像も一斉に攻めて来た。

 槍持ちと剣持ちの騎士像が挟み込むように走って向かい、後ろで杖持ちが何か魔術を放つ準備をしているようだった。もちろんそうなれば真ん中を走り抜けて杖持ちを狙うのがナギである。
 しかしそうなれば挟み込むように槍持ちと剣持ちが方向を変えて向かってきた。

「そうくるよな…ソルテ」

『わかりました!』

 そんな動きも完璧に予想できていたナギが冷静に呼びかけると、元気よく返事をしたソルテは向かって来る2体の足元に土壁を出現させた。より正確に言えば踵の下から押し上げるような形で出現させたのだ。
 すると走っている最中に踵が持ち上げられれば急に体を制御できなかった2体は、さすがにボスだけあって倒れ伏す事はなかったが手をついて動きを止めることになった。

 そんな2体の様子を確認することなくナギは一度も足を止めたりしないで真っ直ぐに杖持ちへと向かっていた。
 だがナギが到着する前に杖持ちの準備していた魔術が完成したのか杖の先に光が集中し始める。

「っ!」

 するとナギの足元が急激に泥沼のように変化したのだ。その変化を感じ取ったナギは咄嗟の判断で空歩を使用して上空へと退避して難を逃れた。

「これは何の魔術スキルだ?」

『これは土と水の複合属性の沼魔術ですね』

「めんどくさい予感しかしない属性だな…」

 ソルテから聞いた名称と目の前の光景からどんなことが出来るのか予想を立てたナギは心底面倒くさそうにそう言い放つ。だからと言って攻撃を止める訳はなく短刀を構えて空中を真っ直ぐに進んで攻撃を継続する。
 しかし一瞬でも時間が稼げれば体勢を立て直すには十分で、槍持ちと剣持ちの2体は空中を移動しているナギに向けて攻撃を加える。

「ちっ…邪魔くさい!」

 口調が悪くなっていくナギだが攻撃を的確に避け・弾いて凌いでいたが、さすがに進むことはできず一度距離をとることになった。何より空歩はMPを消費する上に制限時間があるので長時間使用する事もできない。
 そんな理由から距離を取ったナギは作戦を接近から遠距離へと変更する。

『ファイヤーボール×6』

 一気に6つの火球を創り出したナギは両手をギュッ!と握ると火球は一斉に圧縮され、それを確認したナギは騎士像の持つ武器の方目掛けて一発ずつ放つ。
 ドガンッ!ドガンッ!ドガンッ!と三連続で爆発音が響くが、素早く反応した騎士像達は反対の手に持つ盾で綺麗に防いでいた。それでも一発の威力が強くなっている圧縮した火球によって盾は上に弾かれて、更に周囲は土煙で覆われていた。
 そんな中でも敵の位置を正確に記憶しているナギは煙など気にしないで残りの火球を放った。

 再度ドガンッ!と言う爆発音が3回連続して響き渡り、更には何か硬い物が落ちたようなキンッ…と言う甲高い音も聞こえた。
 しばらくして土煙が晴れると3体の騎士像は杖持ちは何とか盾を引き戻して耐えたようだったが、他の槍と剣を持つ2体はかなりのダメージを負っているように見えた。槍持ちはその槍を杖代わりに何とか立っているような状態で、剣持ちに至っては持っている剣を使用して防いだようで優位つの武器を吹き飛ばされて盾だけを持っているような状況だった。

 しかも最初に言った通り騎士像たちはあくまでもなのだ。そのため火魔術とは相性が最悪と言ってよく、3体は大小の差はあったが火傷のような状態異常になっていた。
 消えないで燻る火種によって3体の騎士像は思うように動けないのか壊れた人形のように、ガクガクとしか動けなかった。

「これは木属性だからって事なのか?」

『そうですね。属性の相性って言うのはどんな属性にも存在しますからね』

「なるほど、それは今後も注意が必要そうだな…」

 冷静に今の状況を分析しながらナギは視線だけは騎士像から逸らさずに様子を確認していた。
 すると杖持ちが何かの魔術を使用したようで3体の騎士像を水色のオーラが覆い、しばらくすると付いていた火種が完全に消えて火傷のようなものを幾分か良くなっていた。

『あれは水魔術のレベル5で覚える【アクアヒール】ですね』

「あぁ…よく聞くような感じの奴か、なら回復の隙も与えずに倒し尽くせば問題ないな。最初の狙い通りに杖餅優先で行くぞ!」

『わかりました!』

 回復した3体を見てもナギはさして動揺することなく、むしろ反対にやる気を滾らせてナギとソルテの2人は勢いよく飛び出した。それに合わせて騎士像も武器を構えて進撃の用意をする。
 しかしナギは前衛の槍と剣持ちの2体を完全に無視して杖持ちのみを狙って進んだ。

 それだけ見れば最初のように阻まれるようにも思えるが、いくら回復しようともダメージは確かに存在し剣持ちにいたっては武器すら手放している状況では何とか体を間にねじ込んで邪魔するのが精一杯だった。
 もっともナギには空歩も存在するため上空を通って簡単に奥へと進んで行った。

 その間に杖持ちも準備していた魔術を使用して妨害しようとする。使用したのは発動速度も速く数も撃ちやすいボール系と呼ばれる物で、水の玉が幾つも上空のナギに目掛けて放った。
 だが別に常に空中にいる必要はないのですぐに地面へと降りてしまえば、水の玉ははるか頭上を通り過ぎるだけである。

「それじゃお前はさっさと消えてくれ!正直めんどくさい!」

 そんな格好つける事も無く自分の本心を駄々洩れに叫ぶと同時にナギは、背後に待機させていた火球を杖持ちの顔面へと撃ち込んだ。しっかり圧縮してあった火球を無防備な顔面に喰らった杖持ちはのけ反るように倒れる。
 そして目の前でそんな隙だらけな相手にナギが容赦などするはずもなく、火のエンチャント施した短刀で首・胸・額などの生物的急所を徹底的に切りつけて、起き上がろうとすれば待機させておいた火球で押さえつけた。

 他にも救援に来ようとした槍持ちと剣持ちの2体にはソルテが土壁を創り出して近寄らせなかった。
 そうこうしている間に杖持ちのHPが尽きて最初に倒されるのだった。
 

 そして一番の邪魔ものだった杖持ちさえ倒せれば他の2体はナギに取っては脅威ではなく、短刀を仕舞って新しい武器の手甲と脚甲を使用した戦い方の研究に使用した。
 結果的に約30分ほどで倒し切りボス部屋の先へと進むのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【BL】死んだ俺と、吸血鬼の嫌い!

BL / 完結 24h.ポイント:262pt お気に入り:240

花冷えの風

BL / 連載中 24h.ポイント:326pt お気に入り:11

異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:42pt お気に入り:390

楽しい幼ちん園

BL / 連載中 24h.ポイント:582pt お気に入り:133

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:789pt お気に入り:3,917

幼なじみは鬼神。そして私は巫女でした

キャラ文芸 / 連載中 24h.ポイント:106pt お気に入り:45

それは俺たちの仕事じゃない! ―国際警察官は今日も大変―

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:113pt お気に入り:124

処理中です...