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第四章 鍛冶師の国

第二百二十六話 工場見学《前編》

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 そして晩御飯やらの残った家事を終わらせたナギは再度ログインするとAOは昼頃で明るかった。
 おかげで鍛冶の国としての本来の賑わいを見せていた。大通りでは大量の武器屋鉱石を乗せた馬車が多く行きかい、そう言う者達を相手にする露天商も並んで多くの人であふれていた。

 夜とは違う光景を見てナギは感動していたが、すぐにある事に気が付いて動きを止めた。

「あ、ログイン場所が変わってるな。何が理由で変わったんだ?街を移動したからか?」

 今回ログインして現れたのは鍛冶の国に最初に現れた水晶の前…などではなく、まだ行った覚えのない中央通りの中にある広場のような広い場所だった。
 そこでは強い武器を求めた冒険者が強面の店員に武器屋から放り出されているのも遠めに見えて、色んな意味で新鮮な光景だった。

 だからかナギは近くのベンチに座ると周囲を見ながらこの後の事を考えていた。

「今日はどうしようかな。さすがにいきなりフィールドに出るのは面白くないし、なにより紹介状貰った場所が思ったより大量に残ってるんだよな~」

 そう言ってナギは受け取った紹介状を取り出して中に入っていた紹介状を確認する。枚数は昨日の鍛冶専門店の分を抜いてもまだ5枚はあって、すべてが鍛冶に関係のある店や施設への紹介状となって一緒に地図が付属されていた。
 地図を一つ一つ確認すればすべてが微妙に離れていて、1つの場所で話を聞いたりして居れば時間はかなり消費する事になるので1日に回れるのは二か所が限界といったところだった。

「さて、今日はひとまず何処に行くべきかな~」

 そして地図を見ながらナギは今日行く場所を楽しそうに悩んでいた。
 しばらく推薦状に書かれている説明や地図の場所を見て優先順位を決めて、ようやくどこに行くのか決められたのかナギは唐突に立ち上がると移動を開始した。
 最初は大通りを城の方へと進んでいたが、少しすると曲がってしばらくして煙突が大量に並んで煙の立ち上る通りへと移り変わっていた。

 途中には職人が多く出入りしている生産ギルドらしい建物も見えたのだが、今回の目的地ではなかったようでスルーして更に進むとナギの目の前に一際は巨大な建物が現れた。
 目も前の巨大な建物にナギは圧倒された様子だったが少し辺りを見渡して警備員のように武器を携えて立っている人の元へと向かった。

「すませ~ん!ここってゴルゴダ皇国公認工房『タタラ工房』で間違いないですか?」

「あぁ…ここはタタラ工房で間違いないが、何か用か?」

 いきなり話しかけて来たナギに警備は露骨なほどに警戒を露わにしていた。
 その反応に自分が確かに不振に見えなくもない行動をしている自覚があるだけにナギは苦笑いを浮かべながら、元々すぐに渡せるように準備していた紹介状を渡した。
 急に何か取り出した事に反射的に武器へと手を伸ばした警備の者だったが、差し出された物よく見て拍子抜けしたような表情で受け取った。

「…なるほど、紹介状持ちだったのか。なら責任者を呼んでくるから少し待て」

「わかりました」

 待つように言われて素直に頷いたナギを確認すると紹介状を受け取った警備は、もう一人にこの場を任せて工房の中へと入っていった。
 おかげで完全に警備と2人になって気まずい空気が流れた。
 そんな居心地の悪い中で待つこと数分、ようやく戻って来た警備の後ろには作業服を着た煤で汚れた中年の男を連れて戻って来た。

「君が紹介状を持ってきたと言う事で間違いないかい?」

「そうです」

「うん、俺はこの工房で第二班長をしている『ハルトス』だ。この紹介状だと工房内の見学だけと言う事になるが、問題ないかね?」

「はい!」

「貴方達は警備に戻ってくれて大丈夫です」

「「はっ!」」

「では、案内しますので後について来てください」

 最終確認を取ったハルトスは未だに後ろで待機していた警備の者達に仕事に戻るように指示を出して、すぐにナギを伴って工房の奥へと入っていった。
 そこは人が出入りするための普通の扉だったが、少し横に移動したところには馬車などが出入りする資材搬入用の巨大な扉も見えていた。ナギは横目に資材搬入の馬車の荷物を見ていたが遅れそうになっていることに気が付いて小走りに通路の奥へと入っていった。

 通路に入ってからは壁が厚いのか音がなく会話もないので完全な無音で歩く事10分ほど経つと鉄の扉が出てきて、それを開いて中に入った。

「改めましてここがゴルゴダ皇国公認工房『タタラ工房』!そして第二鍛冶場になります」

「おぉ~‼」

 勢いよく振り向いたハルトス自身に満ち溢れた様子でこの場所を紹介した。
 それを耳にしながらもナギは目の前の光景にただひたすらに圧倒されていた。

 なにせそこには果てしなく広い工房内にいくつもの煙突付きの窯が並んでいて猛烈な勢いで火が噴き出し続けていた。しかも窯の周辺では多くの職人達が協力して鍛造で作業を続けて、周囲には見習いなのか素材を運んダリとした手伝いをしている者達の姿もいてとにかく多くの人が慌ただしく動き回っていた。
 他にも遠くて見にくいが窯とは違う大きな溶鉱炉のような物も見えて、その周りでは鋳型を使用した大量生産が行われているようだった。
 他にもナギが見たことのないような素材や道具が無数に溢れていて感動していた。 

 そんなナギの様子に気が付いたハルトスは今までの少し事務的な表情から一転して楽しそうな笑みを浮かべた。

「ふふふ!こんな場所では何です。下に下りて近くで見学しましょう、ただ危険な場所も多いので触ったりはしないように注意してください」

「ぜひお願いします‼」

 もはや待ちきれないと言った様子のナギの姿に微笑ましそうにしながらハルトスは先導して更に下の作業場へと降りた。
 より近付いたことで作業中の音が良く聞こえ、窯などから噴き出る炎の温度を肌で感じられるようになってきていた。もはや興奮しきった子供のようなナギは降りた端から落ち着きなく周囲に視線を動かし続けて、すぐに案内が再開できないと判断したハルトスは落ち着くまで下手に触らないように監視するだけにとどめるのだった。
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