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第四章 鍛冶師の国
第二百三十一話 新レシピ《後編》
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窯の中に三等分されたインゴットの1つを入れたナギは、小さい分いつもよりも早く熱が加わると考えて少しも窯から視線を逸らす事なく見ていた。
それからほどなくして十分だと判断してナギは瞬時に取り出して壊さないように注視ながら鎚を振るった。
「っ!」
力加減をしながら、でも金属の形をゆっくりと変えられる程度の力を入れて鎚で打った。
カン!カン!とテンポよく甲高い音が鳴り響き、大きく火花が散る。そんな中でもナギは集中して瞬きすら忘多様に集中して無心に鎚を振るっていた。
熱を加えてその時の変化の違いなどから凹凸を感じ取って均一になるように、力強く丁寧に…それを無意識に行えるほどまでに深く集中する。
それから今までもやって来たように何度も窯の中へ戻して熱を加えて、取り出して叩く鍛造を続けていた。
ただいつもよりも作る物の大きさ自体が小さい事もあって普段から考えると数段速く作業は進んだ。
「ふぅ…似たような作業だからだいぶ手馴れてきた感はあるな。でも、安心できるような腕前にはまだまだほど遠いけど」
『無意識でも完成させられるようになるにはそれこそ、生活に必要なこと以外の時間のすべてを鍛冶に費やして数十年修行しないと無理じゃないですかね』
「それはさすがにストレスで腕前が上がる前に精神がどうにかなりそうだわ」
ある程度まで作業が終わるとナギは後ろでサポートしてくれていたソルテとこんな軽く話せるくらいには余裕があった。
それでも作業工程の1つが終わりに近づいたに過ぎないので2人は話もそこそこに集中力を改めて高める。
「さて、後は仕上げで軽く形を整えて研ぎだな」
確認するように口に出したナギは頭の整理をすると集中して、ほとんど形の感性している物を窯へと入れて軽く熱を加えて最後の形を整えた。ほとんど完成して投擲ナイフとしての形は完成していて、この仕上げによって武骨さなどが綺麗に削げ落ちて洗練された形へと変わった。
それでも研がれていないので刃がなく鈍いくすんだような見た目のままだ。
なので研いで刃作りをするわけだが、今回ナギは新しい砥石を使用せずに以前から使っていた初心者向けの砥石を使用した。本来ならナギとしても新しい物を使いたかったが、今作っている投擲ナイフは最悪使い捨ての武器なので下手にいい道具を使いたくなかったのだ。
変に妥協しない方がいい物が出来ることはちゃんと理解した上でナギは新しい道具を使用しない決定を下した。
だからこそ最初こそいい道具を使わない事に不満気だったソルテも納得して今は何も言わないのだ。
そして静かに黙々と研ぎ続けると綺麗な刃が出来上がり、最後に水で表面に着いた煤やらゴミを流して磨き上げれば一本目が完成した。
「…よし!初めて作った奴にしては上出来かな」
『そうですね。鑑定しないと性能的な事は言えないですけど、見た感じ店売りの物と比べても問題なさそうです‼』
完成したナイフを確認してナギとソルテは揃って満足そうに笑みを浮かべていた。
しばらく観察したナギはそっと作業台の横の安全な場所に置くと次のインゴットへ手を伸ばした。
「さて、鑑定はあとで纏めてやるとして今は残りの素材を使い切ってまずは追加で2本仕上げるとするか」
『はい!残しておいても気になりますしね』
「そういうこと、次はレシピ通りにやりながらより慎重に最適化していくか」
真剣な表情でそう言ったナギは先ほどまでの楽しそうな空気が嘘のような張り詰めた空気を身に纏う。
後は先ほどと同じように窯で熱して叩いて鍛造から成型までやって、終われば刃作りをして最後には磨いてきれいに仕上げるだけだ。
もっとも言葉にすると数秒も掛からないように聞こえるが、実際に作業として通しでやると一つの作業に最低でも20分近い時間が必要だった。
それでも鍛冶スキルのレベルがかなり上がっているナギの作業速度はかなり早く、すべてを通しでやっても40分も掛かるかどうかと言うところだった。これには単純に事前にインゴットの製作が住んでいたのも大きく役立っていた。
ただ今回は初めてのレシピに乗っている物をやりやすいように最適化しているのもあって、それなりの時間がかかっていた。
刃の厚さもどの程度にするかはナギの匙加減で変わるのだが、これは薄くすれば鋭さを増すが投擲した時に破損する可能性が高まると言う事と同義なのだ。他にも色々変化を加えることが可能な事が多々あって、その変化を最適だと思うものに調整していた。
なので最初に作った投擲用ナイフはレシピ通りの厚さになっていて、今回のは少し薄くするように意識しながら多めに叩いていた。もっとも何も考えずに叩き続けると薄くなりすぎてしまうので細心の注意を払いながら、定期的に確認して鎚の打つ力と場所を変えて成型した。
しばらく打ち続けては定期的に細かく確認して進めていた。
「…こんな物かな。これ以上は強度に問題が出そうだしな…」
ある程度の調性を終えてナギはそう言うと仕上げとして最後に形を整えて刃作りへと移った。
ここでも刃の厚さを薄くしたので研ぎ方も合わせて少し変えて回数などを減らしてなど、細かく確認しながら刃を付けていった。下手に縦にしたりすると刃は潰れてしまうので角度の調性にはかなり神経を使うのだ。
すでに何度となく経験していて慣れているナギも毎回の事だが少しは疲れるようだった。
それから数分後にはようやく刃作りが終わり、最終的に汚れを流してから磨いて二本目の投擲ナイフが完成した。
「よし、最初のに比べると厚みはなくなったけど鋭さは増したかな?」
『そうですね。威力自体はこっちの方が高いとは思います。他にも飛距離自体も出るとは思いますけど、やっぱり耐久が心配ですね』
「確かに耐久は低いかもな。少し薄くしすぎたところはあったけど…まぁはじめのうちはレシピが有っても手探りなのは変わらないから仕方ないしな」
ナギとしても耐久値が下がっている事は不安に思っていたが、今回は初めて作る上にいろいろ試している段階なので耐久値に関しては妥協していた。
なんにせよ2本目の投擲ナイフが完成したので一旦休憩を挟むことにした。
「ふぅ…いつもなら休憩はもう少し後なんだけど、今日は特に予定もないしなゆっくりやろう」
『確かにいつも何か急いでいたような気がしますね~』
「あぁだから予定のない日くらいは、のんびりやってもいいだろう」
『賛成です!』
いつもは本当に休む暇すらないようなスケジュールで鍛冶作業に没頭するような事ばかりだった。
それだけにサポートに徹していたソルテもMPは無くなるギリギリで亡くなる前にMP回復ポーションで回復して、またすぐに作業に復帰と言うなかなかにブラック企業のような忙しさだった。
だからと言うべきか今回のゆっくりやろうと言うナギの提案にソルテは心底嬉しそうに頷いて答えた。
その反応に苦労させた心当たりがありすぎるナギは申し訳なく感じているのか苦笑いを浮かべていた。
しかし謝ったり反省したりするような事もなく、忙しければ結局ハードスケジュールになるだろうなと思って…その事を伝えてもいい事は無いのでナギは静かに一緒に休むのだった。
程なくして十分に休んだ2人は最後の1本分の素材を使って完成させて問題がなさそうだと判断すると、消耗品でもある投擲ナイフなので鑑定は後回しにして追加で7本分作ることになった。
なので最終的にはゆっくりした事もあって現実で夜遅くまでナギとソルテの2人は投擲ナイフを作る事になるのだった。
それからほどなくして十分だと判断してナギは瞬時に取り出して壊さないように注視ながら鎚を振るった。
「っ!」
力加減をしながら、でも金属の形をゆっくりと変えられる程度の力を入れて鎚で打った。
カン!カン!とテンポよく甲高い音が鳴り響き、大きく火花が散る。そんな中でもナギは集中して瞬きすら忘多様に集中して無心に鎚を振るっていた。
熱を加えてその時の変化の違いなどから凹凸を感じ取って均一になるように、力強く丁寧に…それを無意識に行えるほどまでに深く集中する。
それから今までもやって来たように何度も窯の中へ戻して熱を加えて、取り出して叩く鍛造を続けていた。
ただいつもよりも作る物の大きさ自体が小さい事もあって普段から考えると数段速く作業は進んだ。
「ふぅ…似たような作業だからだいぶ手馴れてきた感はあるな。でも、安心できるような腕前にはまだまだほど遠いけど」
『無意識でも完成させられるようになるにはそれこそ、生活に必要なこと以外の時間のすべてを鍛冶に費やして数十年修行しないと無理じゃないですかね』
「それはさすがにストレスで腕前が上がる前に精神がどうにかなりそうだわ」
ある程度まで作業が終わるとナギは後ろでサポートしてくれていたソルテとこんな軽く話せるくらいには余裕があった。
それでも作業工程の1つが終わりに近づいたに過ぎないので2人は話もそこそこに集中力を改めて高める。
「さて、後は仕上げで軽く形を整えて研ぎだな」
確認するように口に出したナギは頭の整理をすると集中して、ほとんど形の感性している物を窯へと入れて軽く熱を加えて最後の形を整えた。ほとんど完成して投擲ナイフとしての形は完成していて、この仕上げによって武骨さなどが綺麗に削げ落ちて洗練された形へと変わった。
それでも研がれていないので刃がなく鈍いくすんだような見た目のままだ。
なので研いで刃作りをするわけだが、今回ナギは新しい砥石を使用せずに以前から使っていた初心者向けの砥石を使用した。本来ならナギとしても新しい物を使いたかったが、今作っている投擲ナイフは最悪使い捨ての武器なので下手にいい道具を使いたくなかったのだ。
変に妥協しない方がいい物が出来ることはちゃんと理解した上でナギは新しい道具を使用しない決定を下した。
だからこそ最初こそいい道具を使わない事に不満気だったソルテも納得して今は何も言わないのだ。
そして静かに黙々と研ぎ続けると綺麗な刃が出来上がり、最後に水で表面に着いた煤やらゴミを流して磨き上げれば一本目が完成した。
「…よし!初めて作った奴にしては上出来かな」
『そうですね。鑑定しないと性能的な事は言えないですけど、見た感じ店売りの物と比べても問題なさそうです‼』
完成したナイフを確認してナギとソルテは揃って満足そうに笑みを浮かべていた。
しばらく観察したナギはそっと作業台の横の安全な場所に置くと次のインゴットへ手を伸ばした。
「さて、鑑定はあとで纏めてやるとして今は残りの素材を使い切ってまずは追加で2本仕上げるとするか」
『はい!残しておいても気になりますしね』
「そういうこと、次はレシピ通りにやりながらより慎重に最適化していくか」
真剣な表情でそう言ったナギは先ほどまでの楽しそうな空気が嘘のような張り詰めた空気を身に纏う。
後は先ほどと同じように窯で熱して叩いて鍛造から成型までやって、終われば刃作りをして最後には磨いてきれいに仕上げるだけだ。
もっとも言葉にすると数秒も掛からないように聞こえるが、実際に作業として通しでやると一つの作業に最低でも20分近い時間が必要だった。
それでも鍛冶スキルのレベルがかなり上がっているナギの作業速度はかなり早く、すべてを通しでやっても40分も掛かるかどうかと言うところだった。これには単純に事前にインゴットの製作が住んでいたのも大きく役立っていた。
ただ今回は初めてのレシピに乗っている物をやりやすいように最適化しているのもあって、それなりの時間がかかっていた。
刃の厚さもどの程度にするかはナギの匙加減で変わるのだが、これは薄くすれば鋭さを増すが投擲した時に破損する可能性が高まると言う事と同義なのだ。他にも色々変化を加えることが可能な事が多々あって、その変化を最適だと思うものに調整していた。
なので最初に作った投擲用ナイフはレシピ通りの厚さになっていて、今回のは少し薄くするように意識しながら多めに叩いていた。もっとも何も考えずに叩き続けると薄くなりすぎてしまうので細心の注意を払いながら、定期的に確認して鎚の打つ力と場所を変えて成型した。
しばらく打ち続けては定期的に細かく確認して進めていた。
「…こんな物かな。これ以上は強度に問題が出そうだしな…」
ある程度の調性を終えてナギはそう言うと仕上げとして最後に形を整えて刃作りへと移った。
ここでも刃の厚さを薄くしたので研ぎ方も合わせて少し変えて回数などを減らしてなど、細かく確認しながら刃を付けていった。下手に縦にしたりすると刃は潰れてしまうので角度の調性にはかなり神経を使うのだ。
すでに何度となく経験していて慣れているナギも毎回の事だが少しは疲れるようだった。
それから数分後にはようやく刃作りが終わり、最終的に汚れを流してから磨いて二本目の投擲ナイフが完成した。
「よし、最初のに比べると厚みはなくなったけど鋭さは増したかな?」
『そうですね。威力自体はこっちの方が高いとは思います。他にも飛距離自体も出るとは思いますけど、やっぱり耐久が心配ですね』
「確かに耐久は低いかもな。少し薄くしすぎたところはあったけど…まぁはじめのうちはレシピが有っても手探りなのは変わらないから仕方ないしな」
ナギとしても耐久値が下がっている事は不安に思っていたが、今回は初めて作る上にいろいろ試している段階なので耐久値に関しては妥協していた。
なんにせよ2本目の投擲ナイフが完成したので一旦休憩を挟むことにした。
「ふぅ…いつもなら休憩はもう少し後なんだけど、今日は特に予定もないしなゆっくりやろう」
『確かにいつも何か急いでいたような気がしますね~』
「あぁだから予定のない日くらいは、のんびりやってもいいだろう」
『賛成です!』
いつもは本当に休む暇すらないようなスケジュールで鍛冶作業に没頭するような事ばかりだった。
それだけにサポートに徹していたソルテもMPは無くなるギリギリで亡くなる前にMP回復ポーションで回復して、またすぐに作業に復帰と言うなかなかにブラック企業のような忙しさだった。
だからと言うべきか今回のゆっくりやろうと言うナギの提案にソルテは心底嬉しそうに頷いて答えた。
その反応に苦労させた心当たりがありすぎるナギは申し訳なく感じているのか苦笑いを浮かべていた。
しかし謝ったり反省したりするような事もなく、忙しければ結局ハードスケジュールになるだろうなと思って…その事を伝えてもいい事は無いのでナギは静かに一緒に休むのだった。
程なくして十分に休んだ2人は最後の1本分の素材を使って完成させて問題がなさそうだと判断すると、消耗品でもある投擲ナイフなので鑑定は後回しにして追加で7本分作ることになった。
なので最終的にはゆっくりした事もあって現実で夜遅くまでナギとソルテの2人は投擲ナイフを作る事になるのだった。
応援ありがとうございます!
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