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大六章 死神戦

第二百七十四話 暗闇の森《1》

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 そして装備も整えて鑑定も終わったナギは疲れたこともあってログアウトして、次に何があってもいいように休息をとるのだった。
 次の日もとくに予定などなかったので家事などを片付けてログインしたナギは不足していた回復アイテムを買いに向かっていた。

「ハハハ!昨日は悪かったな」

『別に気にはしませんけど、本当に主様は周囲の反応とかを気にした方がいいですよ?』

「う~ん…これでも少しは気にしているんだけどな」

 結局は昨日は最後の方ではソルテを放置する形になってしまったのでナギは謝罪したのだが、特に気にしていなかったソルテはむしろ前からも思っていたことを含めて注意した。ただナギも考えなしに生きているわけではなく少しは自分の悪いところを改善しようとはしていた。
 単純に気持ちに比例して改善できるような問題ではなかったというだけの事だ。

 それだけに注意されても困ったように頬を掻くだけだった。
 少し微妙な空気になってしまってはソルテも同じ話題を続けようとは思わなかったようで、別の話題へと話は自然と変わっていた。

『そういえ調薬スキルも持っているんですし、ご自分で作ろうとは思わないんですか?』

「将来的には考えているけど、今はまず鍛冶を一定以上鍛えてからだと思ってる。目安としては自力で武器と防具を制作できるようになる事って言ったところか」

『なるほど、確かに幾つも同時にやると器用貧乏になっちゃいますからね~』

「そういう事だッ⁉」

 話がひと段落したところでナギは何かに気が付いたのか瞬時に背後へと振り返った。
 しかし誰かの姿はなかったが不自然な空気が流れている事を感じたナギは警戒した様子で周囲を見回した。急なナギの変化に驚いたソルテはコートの奥に逃げ込み、更には慣れた様子で周囲へと探査を放った。
 地面に接している誰かが隠れているのならすぐに発見できる…はずだった。

『…周辺には誰もいないみたいです!』

「という事は地面とは接していない上空か、ソルテの探査を誤魔化せるほどのやばい相手ってことだな」

 相手の居場所をある程度絞り込んだナギは視線を上方へと向けた瞬間の事だった。

『見つけた』

「⁉」

 背後から急に声が聞こえて慌てて振り返ろうとした時には視界は遮られ、次に視界が戻った時には見覚えのない森の中にいた。
 そこは日の光どころか月明りすらない完全の闇に包まれ時折、風によって揺れた木々が揺れて不気味な音を立てていた。ただナギは暗視スキルを持っているので薄具く感じる程度で周囲は見えていた。

「…つまり面倒事が発生したってことだな」

『みたいですね~』

 こんな状況でも慣れ切った様子でナギとソルテの2人はのんきに話しながら周囲を一応警戒していた。
 なにせこんな時の出現場所はたいてい安全になっている事が多くかった。だからと言って完全には安心できないと思っているからこそ警戒も怠らなかった。

「さて、今回は棺を取り戻すことが目的のようだしクリア条件は守りきることか、あるいは敵の撃破って感じか…」

『でしょうね。私は戦闘では役立たずなので隠れてますよ』

「もちろんだ。死なれたら困るしな」

 そう言ってナギは顔を出して周囲を見ていたソルテをコートの奥へと押し込んだ。
 今着ているコートは見た目は変わらないが中にはソルテが入る事のできる場所が用意されていた。

 これは戦闘中でも連れ歩いている事を聞いたゴド爺さんが急遽付けてくれたソルテの保護スペースだった。他のポケットと比べても丈夫に作られているので、ちょっと攻撃が掠った程度では中のソルテまではダメージはいかないようになっていた。
 おかげでソルテを大きく気にすることなくナギは戦闘のみに集中できるようになっていた。

 そしておとなしく何かアクションがあるのを待っていると目の前に急にボロボロのローブを身に纏った存在が現れた。

『どうも、異邦の者よ』

「どうも死神の方」

『すでに我らの事は知っているようだな』

「えぇ、なので先に答えておきましょうか。棺は返しませんよ便利なのでね」

 今回の事が何を原因に起きているのか理解しているナギは失礼だとは思いながらも先に要求を断った。すでに契約も結んでいる以上は自分の物であり、もはや扱い方まで決まっている物を手放すつもりなどなかったからだ。
 ただ答えも含めて死神も予想は付いていたようで、どこか笑ったような様子だった。

『だろうな。だからこそ、もし汝がここより脱出できたなら所持することを我は許そう』

「なるほど…」

 死神の答えを聞いたナギは考えるように黙ると今の言葉の意味を考えていた。

「つまり貴方達も一枚岩ではないという事ですか」

『ふっ…さて、何のことかわからんな。まぁせいぜい頑張ることだな』

「おっと、ヒントは無しなのか?」

『これくらい自力で突破できないのなら、我らの物を所持する資格はないという事だ』

 最後の最後でのナギの失礼な要求にも死神は逆に挑発的に返して霧のように消えていなくなった。
 ちょっとだけ挑発の意味もあって声をかけたのに挑発し返されたナギは悔しそうな表情を浮かべていた。

「くそ…なんか負けた気分だな!」

『やっぱりすごいですね神様って、あの主様が口でいいようにやられるんですから』

「喧しいわ。はぁ…とにかくヒントが貰えないなら自力で手がかりを探すか、魔物がいないとも限らないから探査は怠るなよ?」

『わかってますよ~』

 さすがにノーヒントで初見のフィールドなだけにナギは警戒心を最高まで高め、何度も戦闘に連れられている酒にソルテも索敵の大切さは理解していた。なので話し方などは普段通りだったが2人はいつも以上に神経を研ぎ澄ませながら森の探索を開始した。
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