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10.公爵家の罪
しおりを挟むそれからレイは体調が回復したアンテーノール侯爵と共にイクシオン公爵家を徹底的に調べた。
この居住区域から出ることのない私は知らないが、あの冷たい皇帝の仮面を被って頑張っているのだろう。
部屋に戻ってくると、彼はヘトヘトで直ぐにベッドに入って私を抱き込んで眠る。
私と眠るようになって、忙しくても体調はマシになったよと笑っていた。
~~アンドリュー視点~~
母上はヒステン族長の娘だった。
太古の昔から森を護り、自然と共存してきたとされる一族。
母はイクシオン公爵家の罪が許せなかったのかもしれない。
だからこうしてイクシオン公爵家を調べて…毒殺された?
「アンテーノール侯爵、相談したいことがある。夜、私室の方へ来てくれ。」
赤宮であろうと、全ての人間を信用する事は出来ない。
間諜がいるのは分かっているからだ。
私は安全な私室へとアンテーノール侯爵を呼び出した。
自分の潜り込ませた間諜の居ない場所での密談。皇太后は不穏な動きだと捉え警戒を強めるだろう。
ジェンナと再会出来た。
母の調べた資料も見つけた。
もう後手には回らない。
そう決めていた。
~・~・~・~・~
私室に訪れたアンテーノール侯爵に母の鏡台から出てきた紙束を見せた。
「これは?」
「ジェンナが持っていたペンダントが鍵になっていて、母の残した資料が見つかった。月影の木の売買の記録、取引先が細かく調べられている。」
「ふむ。……20年近く前の物ですな。」
侯爵はゆっくりと紙を捲りながら難しい顔で書類を見ている。
その表情は厳しいままで、20年も前の資料に困惑しているようだ。
……やはりダメか……
「古すぎるか?」
「……むぅ、これは……。」
侯爵は何か気付いたように顔を上げ、書類の一箇所を指差して俺に見せてきた。
「この商会は、今でも公爵家と取引があります。表向きは、怪しい商品の取り扱いは無いですが、最近販路を拡大して、業績も良いですね。この商会から調べてみましょう。」
近年のイクシオン公爵家は潤沢な資金を使い多くの貴族を取り込み政治に関与してきた。
その資金の源が月影の木の違法売買だとしたら……。
「私は何をすれば良い?」
「陛下……、体調は大丈夫なんですか?」
「ジェンナが来てくれて今は眠れている。今までよりは動けるだろう。早く決着を着けたい。」
皇宮でも少しずつ信頼出来る人間を増やしてきた。
そして、最近やっと執務室にも入ることの出来る側近がイクシオン公爵と通じていたことが発覚した。
今まで情報がどこから洩れるのか掴めなかったが、ジェンナが来てハルシャワ伯爵令嬢が押し掛けることで、不自然な動きをする人間をあぶり出す事が出来たのだ。
「ある程度赤宮内の間諜も把握出来ていますし、動けると思います。イクシオン公爵を断罪するのは貴族からの反発も多いでしょう。陛下、お覚悟はよろしいですか?」
「ああ。分かっている。」
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