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第34話 大都市ゴルトー
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数々の面倒な手続きをクリアして、ドミニクたちはようやくゴルトーへ入ることを許可された。
ただ、妖精族のエニスについてはその存在を隠しておくことに決め、ドミニクの手荷物の中に潜ませていた。
結局、あれこれとやっている間に一時間近く拘束されるハメになった。
「随分と厳重なんだな……」
「国にとっても重要な都市ですからね。犯罪組織の温床とならないよう、細心の注意を払っているんですよ」
アンジェの言う通り、厳しい検問の末に入ることはできたが、それでひと安心というわけではない。街の至るところに武装した兵士がおり、トラブルが起きた場合はすぐに駆けつけられるようになっている。
「なんというか……後ろめたいことをしているわけじゃないけど、ちょっと息苦しさを感じるな」
「兵士が多いのは検問所周辺くらいですよ。街の細部は監視用の結界魔法があって、街中での使用が禁じられている魔法を使用するとすぐに自警団の詰所へ連絡が行くようになっているらしいです」
「なるほどね。さすがは情報屋だ。その辺の事情に詳しいな」
「当然です。情報の有無は結果を大きく左右する重要なファクターですから」
「その通りだ。これからも期待しているよ」
「は、はい!」
かつて、まだジョネスにいた頃――名もなき三流冒険者だった頃は、その情報にとても助けられた経験を持つドミニク。今も、アンジェには全幅の信頼を寄せていた。
その後、手近な宿屋で部屋を確保し、久しぶりにベッドへ横になって眠ることができた。
◇◇◇
翌日。
ドミニクたちは朝一で冒険者ギルドを訪れる。
「うおっ!? ここがギルドか!?」
その規模の大きさに、ドミニクやアンジェ、イリーシャにシエナも開いた口がふさがらなかった。これまで立ち寄って来たどのギルドよりも賑やかで活気に溢れていたからだ。
「まさかこれほどとはな……」
「え、えぇ……私も驚きです」
しばらく圧倒されていると、
「おはようございます。こちらのご利用は初めてですか?」
ギルド職員と思われる若い女性が話しかけてきた。
「あ、は、はい」
「でしたら、あちらに掲示板がありますので、そちらでクエストをお選びください。決まったら受付までお願いします」
「あ、ど、どうも」
「って、ワシらはクエストをこなしに来たんじゃなくて、人を捜しに来たんじゃろ?」
「おっと、そうだった」
エヴァに指摘されてようやく思い出すドミニク。
彼女がギルドの職員ならば、銀狐について知っているはずだ。
「実は俺たち、ある人――というか、パーティーを捜していて」
「パーティー捜しですか?」
「あぁ。銀狐と呼ばれるパーティーなんだけど――」
「銀狐!?」
ドミニクが銀狐と口にした途端、それまで喧騒に包まれていたギルド内が一気に静まり返った。
「えっ? な、何?」
一転して張りつめた空気が漂うギルド内。そこへ、
「若いの、銀狐に入りたいのか?」
険しい顔つきのいかつい中年男性が言う。
その手には彼の主戦武器と思われる巨大な斧が握られていた。
ギラリと光るその斧を目にしたドミニクがゴクッと唾を呑み込み、事情を説明する。
「い、いえ、そういうわけじゃないんです」
「だったら悪いことは言わねぇ、関わるのはよしな。わざわざ自分からあんなクズ共の仲間になることなんかねぇさ」
「えっ? クズ共って……」
返ってきたのは意外な評価だった。
エニスたち妖精族に新しい住まいを教えるなど、支援活動をしているという母ヴェロニカ。そんな彼女と父親のギデオンが同時に所属していたパーティーということで、きっと評判はいいのだろうなと思っていた。
もしかしたら、そのクズっぷりに嫌気がさしてやめたのかもしれない。
いずれにせよ、一度会ってみないことには何も言えない。
「……あの」
「あん?」
「彼らが今どこにいるのか……教えてください」
ドミニクは銀狐に会うため、その居所を尋ねた。
ただ、妖精族のエニスについてはその存在を隠しておくことに決め、ドミニクの手荷物の中に潜ませていた。
結局、あれこれとやっている間に一時間近く拘束されるハメになった。
「随分と厳重なんだな……」
「国にとっても重要な都市ですからね。犯罪組織の温床とならないよう、細心の注意を払っているんですよ」
アンジェの言う通り、厳しい検問の末に入ることはできたが、それでひと安心というわけではない。街の至るところに武装した兵士がおり、トラブルが起きた場合はすぐに駆けつけられるようになっている。
「なんというか……後ろめたいことをしているわけじゃないけど、ちょっと息苦しさを感じるな」
「兵士が多いのは検問所周辺くらいですよ。街の細部は監視用の結界魔法があって、街中での使用が禁じられている魔法を使用するとすぐに自警団の詰所へ連絡が行くようになっているらしいです」
「なるほどね。さすがは情報屋だ。その辺の事情に詳しいな」
「当然です。情報の有無は結果を大きく左右する重要なファクターですから」
「その通りだ。これからも期待しているよ」
「は、はい!」
かつて、まだジョネスにいた頃――名もなき三流冒険者だった頃は、その情報にとても助けられた経験を持つドミニク。今も、アンジェには全幅の信頼を寄せていた。
その後、手近な宿屋で部屋を確保し、久しぶりにベッドへ横になって眠ることができた。
◇◇◇
翌日。
ドミニクたちは朝一で冒険者ギルドを訪れる。
「うおっ!? ここがギルドか!?」
その規模の大きさに、ドミニクやアンジェ、イリーシャにシエナも開いた口がふさがらなかった。これまで立ち寄って来たどのギルドよりも賑やかで活気に溢れていたからだ。
「まさかこれほどとはな……」
「え、えぇ……私も驚きです」
しばらく圧倒されていると、
「おはようございます。こちらのご利用は初めてですか?」
ギルド職員と思われる若い女性が話しかけてきた。
「あ、は、はい」
「でしたら、あちらに掲示板がありますので、そちらでクエストをお選びください。決まったら受付までお願いします」
「あ、ど、どうも」
「って、ワシらはクエストをこなしに来たんじゃなくて、人を捜しに来たんじゃろ?」
「おっと、そうだった」
エヴァに指摘されてようやく思い出すドミニク。
彼女がギルドの職員ならば、銀狐について知っているはずだ。
「実は俺たち、ある人――というか、パーティーを捜していて」
「パーティー捜しですか?」
「あぁ。銀狐と呼ばれるパーティーなんだけど――」
「銀狐!?」
ドミニクが銀狐と口にした途端、それまで喧騒に包まれていたギルド内が一気に静まり返った。
「えっ? な、何?」
一転して張りつめた空気が漂うギルド内。そこへ、
「若いの、銀狐に入りたいのか?」
険しい顔つきのいかつい中年男性が言う。
その手には彼の主戦武器と思われる巨大な斧が握られていた。
ギラリと光るその斧を目にしたドミニクがゴクッと唾を呑み込み、事情を説明する。
「い、いえ、そういうわけじゃないんです」
「だったら悪いことは言わねぇ、関わるのはよしな。わざわざ自分からあんなクズ共の仲間になることなんかねぇさ」
「えっ? クズ共って……」
返ってきたのは意外な評価だった。
エニスたち妖精族に新しい住まいを教えるなど、支援活動をしているという母ヴェロニカ。そんな彼女と父親のギデオンが同時に所属していたパーティーということで、きっと評判はいいのだろうなと思っていた。
もしかしたら、そのクズっぷりに嫌気がさしてやめたのかもしれない。
いずれにせよ、一度会ってみないことには何も言えない。
「……あの」
「あん?」
「彼らが今どこにいるのか……教えてください」
ドミニクは銀狐に会うため、その居所を尋ねた。
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