5 / 100
第5話 正式就任
しおりを挟む
カーティス村の村長が住んでいるという家は、他の村人と大差ない普通のサイズだった。
大都市になると、権力者の家は大きく派手になる傾向だが、ここはそうでもないらしいな。
「ガナンさん、いますか?」
ドイル様自ら家のドアをノックして不在かどうか確認している。
これもよそでは見かけない光景だ。
普通は一緒に来ている使用人がやったりするもんな。
ブラーフさん曰く、ドイル様自身の要望でそうなっているらしい。
不思議な人だなぁと思っていたら、村長のガナンさんがゆっくりと出てきた。年齢はブラーフさんよりもさらに年上で、七十代くらいに見える優しそうなお爺ちゃんだ。
「おぉ、ドイル様。今日はどうされました?」
「この村に常駐することになった聖騎士殿をお連れしたんです」
「あぁ……そういう話でしたなぁ」
のんびりとした口調で語るガナン村長は俺たちを家の中へと招き入れた。使用人を数人連れて入ると椅子に座るよう促される。家にはもうひとり奥さんもいて、お茶を淹れてくれるようだ。
「うちの庭で採れたハーブを使ったお茶です」
「いいですねぇ。好きなんですよ、ハーブティー」
世間話で盛り上がる中、話題は俺のことへ移った。
「先ほど聖騎士殿とおっしゃっていましたが……なんでまたそのようなお偉い騎士様がこの村に? 私は騎士団の仕事について疎いですが、そういう地位の方は王都でもっと重要な仕事に携わるものだとばかり思っておりました」
「いろいろと事情がありまして」
やんわりとはぐらかしてくれたドイル様。
俺としては助かる。
「彼は王都暮らしが長いので、こういった土地での生活には何かと不慣れだと思います。フォローをしていただければ僕も嬉しいです」
「よ、よろしくお願いします」
「構いませんよ。人が増えるのはこの村にとって喜ばしい。それも、若くて強い聖騎士殿となれば尚更です」
ガナン村長は俺を迎え入れてくれた。
……情けない話だが、正直、ドイル様の言うように、これほどのどかで平和な田舎町だと何をしてよいのかよく分からなかった。これまでは向かってくる敵を倒せばいいというシンプルな任務ばかりだったが、ここではそういうわけにもいかないからな。村長に直接話を通してもらえたのは本当にありがたい。
その後、俺を歓迎する宴を開いてくれることになり、夜にはすべての村人が集まってどんちゃん騒ぎとなった。
何より驚いたのが、領主のドイル様がこの場にも普通に参加していることだった。
普通、こうした状況になったら村人たちは委縮してしまいそうなものだが、彼らはまったくそのような素振りを見せず、村や自分たちの近況をドイル様に話して聞かせた。
ドイル様も、村人たちの言葉に耳を傾けて笑顔を見せるなど、とても楽しそうにしている。
「変わった村だな、ここは」
「やはり王都から来られる方にはそう映りますかな」
ボソッと呟いたつもりだったが、たまたま近くにいたガナン村長の耳にはしっかり届いていたようだ。
「えぇ、ビックリしていますよ」
「それがここのいいところなんです。領主様が我ら領民をとても大切にしてくださる……かつてこの地を訪れた行商人も、他では見かけない光景とそれは驚かれていました」
「でしょうね」
まあ、それも王都から遠く離れた辺境の地だからこそできるんだろうな。
……でも、できれば他の領地でも、こういう楽しい雰囲気で人々が暮らせるようになってほしいとは思う。
そして――明日から俺はこの場にいる人たちを守るために剣を振るうことになるのだ。
ハッキリ言って、そんな機会があるかどうかは分からないが……俺の無実が証明されて王都に戻るまでは、ここでの仕事をキッチリこなしていこう。
大都市になると、権力者の家は大きく派手になる傾向だが、ここはそうでもないらしいな。
「ガナンさん、いますか?」
ドイル様自ら家のドアをノックして不在かどうか確認している。
これもよそでは見かけない光景だ。
普通は一緒に来ている使用人がやったりするもんな。
ブラーフさん曰く、ドイル様自身の要望でそうなっているらしい。
不思議な人だなぁと思っていたら、村長のガナンさんがゆっくりと出てきた。年齢はブラーフさんよりもさらに年上で、七十代くらいに見える優しそうなお爺ちゃんだ。
「おぉ、ドイル様。今日はどうされました?」
「この村に常駐することになった聖騎士殿をお連れしたんです」
「あぁ……そういう話でしたなぁ」
のんびりとした口調で語るガナン村長は俺たちを家の中へと招き入れた。使用人を数人連れて入ると椅子に座るよう促される。家にはもうひとり奥さんもいて、お茶を淹れてくれるようだ。
「うちの庭で採れたハーブを使ったお茶です」
「いいですねぇ。好きなんですよ、ハーブティー」
世間話で盛り上がる中、話題は俺のことへ移った。
「先ほど聖騎士殿とおっしゃっていましたが……なんでまたそのようなお偉い騎士様がこの村に? 私は騎士団の仕事について疎いですが、そういう地位の方は王都でもっと重要な仕事に携わるものだとばかり思っておりました」
「いろいろと事情がありまして」
やんわりとはぐらかしてくれたドイル様。
俺としては助かる。
「彼は王都暮らしが長いので、こういった土地での生活には何かと不慣れだと思います。フォローをしていただければ僕も嬉しいです」
「よ、よろしくお願いします」
「構いませんよ。人が増えるのはこの村にとって喜ばしい。それも、若くて強い聖騎士殿となれば尚更です」
ガナン村長は俺を迎え入れてくれた。
……情けない話だが、正直、ドイル様の言うように、これほどのどかで平和な田舎町だと何をしてよいのかよく分からなかった。これまでは向かってくる敵を倒せばいいというシンプルな任務ばかりだったが、ここではそういうわけにもいかないからな。村長に直接話を通してもらえたのは本当にありがたい。
その後、俺を歓迎する宴を開いてくれることになり、夜にはすべての村人が集まってどんちゃん騒ぎとなった。
何より驚いたのが、領主のドイル様がこの場にも普通に参加していることだった。
普通、こうした状況になったら村人たちは委縮してしまいそうなものだが、彼らはまったくそのような素振りを見せず、村や自分たちの近況をドイル様に話して聞かせた。
ドイル様も、村人たちの言葉に耳を傾けて笑顔を見せるなど、とても楽しそうにしている。
「変わった村だな、ここは」
「やはり王都から来られる方にはそう映りますかな」
ボソッと呟いたつもりだったが、たまたま近くにいたガナン村長の耳にはしっかり届いていたようだ。
「えぇ、ビックリしていますよ」
「それがここのいいところなんです。領主様が我ら領民をとても大切にしてくださる……かつてこの地を訪れた行商人も、他では見かけない光景とそれは驚かれていました」
「でしょうね」
まあ、それも王都から遠く離れた辺境の地だからこそできるんだろうな。
……でも、できれば他の領地でも、こういう楽しい雰囲気で人々が暮らせるようになってほしいとは思う。
そして――明日から俺はこの場にいる人たちを守るために剣を振るうことになるのだ。
ハッキリ言って、そんな機会があるかどうかは分からないが……俺の無実が証明されて王都に戻るまでは、ここでの仕事をキッチリこなしていこう。
応援ありがとうございます!
33
お気に入りに追加
1,853
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる