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第23話 予想外
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モンスターが潜んでいると噂されていた湖。
カーティス村への被害を考慮したドイル様からの依頼により調査へ訪れた俺とエリナとリンデルは、ついにその正体を目撃する。
それはあまりにも意外すぎる存在だった。
「グオオオオオオオオッ!!!!」
湖から咆哮をあげて現れたのは――なんとドラゴンだった。
体長は十メートル以上。全身を青い鱗で覆われており、背中には大きな翼が生えている。それを勢いよく広げると、翼についた水滴がまるで雨のように降り注いだ。
「「なっ!?」」
まさかドラゴンが潜んでいたとは夢にも思っていなかった俺とエリナは声を合わせて驚愕する。大抵のモンスターならば、俺たちふたりでどうとでも対処はできたのだろうが、相手がドラゴンとあっては事情が変わってくる。
「せ、先輩……どうします?」
「ど、どうするって……」
本来、ドラゴンほどの大物を討伐するとなったら、それこそ入念な準備が必要になる。強力な武器の数々に、それを扱う大勢の騎士。それと、ドラゴンの動きを封じるためなら魔法使いの存在も不可欠になるため、魔法兵団との協力は必須だろう。
たったふたりで、それも武器は剣だけという状況ではもはや絶望しかない。
「…………」
これからの対応を考えているうちに、ドラゴンが俺たちの存在に気づいた。
「こ、こっちを見てみますよ、先輩!」
「落ち着け。こういう時こそ冷静になるんだ」
それは半分くらい己に言い聞かせるためのセリフであった。正直、俺自身が突然のドラゴン登場に戸惑い、軽くパニックになっている。
もしこんなに大きなドラゴンがカーティス村へと舞い降りたら――
「っ!?」
村のみんながどうなるのか、という思考が脳裏によぎった瞬間……俺の中で迷いは消え去った。
「エリナ……よく聞くんだ」
「えっ? せ、先輩?」
「俺が時間を稼ぐ。だから、おまえは村へ戻ってみんなを避難させるんだ。牧場近くの森に身を隠せば、ドラゴンの目は誤魔化せるし、あの巨体では追ってくることもできないはず」
「そ、そんな! それじゃあ先輩――」
「行くんだ!」
ドラゴンが相手では、全員が助かる道はない。
ならばせめて、ひとりでも多く助かる道を選択する。
それが俺のたどり着いた答えだった。
エリナもそんな俺の覚悟を理解してくれたようで、泣きながらその場を駆けだした。
「おまえもエリナについていくんだ、リンデル」
「わふぅ……」
「大丈夫。またきっと会えるから」
リンデルも最初は頑なに動こうとはしなかったが、エリナが走りだしたことで俺の気持ちを汲み取ってくれる気になったらしく、彼女のあとを追っていった。
「さて……どうしたものかな」
ひとりになり、俺は改めてドラゴンへと向き直る。
相手に目立った動きは見られず、膠着状態が続いていた。俺としては理想的な展開だ。少しでも時間を稼いでくれたら、それだけ村人たちが遠くへ逃げられ、助かる命の数が増える。
それからもしばらくして――
「あぁ……ちょっといいか?」
静寂は謎の声によって破られた。
カーティス村への被害を考慮したドイル様からの依頼により調査へ訪れた俺とエリナとリンデルは、ついにその正体を目撃する。
それはあまりにも意外すぎる存在だった。
「グオオオオオオオオッ!!!!」
湖から咆哮をあげて現れたのは――なんとドラゴンだった。
体長は十メートル以上。全身を青い鱗で覆われており、背中には大きな翼が生えている。それを勢いよく広げると、翼についた水滴がまるで雨のように降り注いだ。
「「なっ!?」」
まさかドラゴンが潜んでいたとは夢にも思っていなかった俺とエリナは声を合わせて驚愕する。大抵のモンスターならば、俺たちふたりでどうとでも対処はできたのだろうが、相手がドラゴンとあっては事情が変わってくる。
「せ、先輩……どうします?」
「ど、どうするって……」
本来、ドラゴンほどの大物を討伐するとなったら、それこそ入念な準備が必要になる。強力な武器の数々に、それを扱う大勢の騎士。それと、ドラゴンの動きを封じるためなら魔法使いの存在も不可欠になるため、魔法兵団との協力は必須だろう。
たったふたりで、それも武器は剣だけという状況ではもはや絶望しかない。
「…………」
これからの対応を考えているうちに、ドラゴンが俺たちの存在に気づいた。
「こ、こっちを見てみますよ、先輩!」
「落ち着け。こういう時こそ冷静になるんだ」
それは半分くらい己に言い聞かせるためのセリフであった。正直、俺自身が突然のドラゴン登場に戸惑い、軽くパニックになっている。
もしこんなに大きなドラゴンがカーティス村へと舞い降りたら――
「っ!?」
村のみんながどうなるのか、という思考が脳裏によぎった瞬間……俺の中で迷いは消え去った。
「エリナ……よく聞くんだ」
「えっ? せ、先輩?」
「俺が時間を稼ぐ。だから、おまえは村へ戻ってみんなを避難させるんだ。牧場近くの森に身を隠せば、ドラゴンの目は誤魔化せるし、あの巨体では追ってくることもできないはず」
「そ、そんな! それじゃあ先輩――」
「行くんだ!」
ドラゴンが相手では、全員が助かる道はない。
ならばせめて、ひとりでも多く助かる道を選択する。
それが俺のたどり着いた答えだった。
エリナもそんな俺の覚悟を理解してくれたようで、泣きながらその場を駆けだした。
「おまえもエリナについていくんだ、リンデル」
「わふぅ……」
「大丈夫。またきっと会えるから」
リンデルも最初は頑なに動こうとはしなかったが、エリナが走りだしたことで俺の気持ちを汲み取ってくれる気になったらしく、彼女のあとを追っていった。
「さて……どうしたものかな」
ひとりになり、俺は改めてドラゴンへと向き直る。
相手に目立った動きは見られず、膠着状態が続いていた。俺としては理想的な展開だ。少しでも時間を稼いでくれたら、それだけ村人たちが遠くへ逃げられ、助かる命の数が増える。
それからもしばらくして――
「あぁ……ちょっといいか?」
静寂は謎の声によって破られた。
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