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第一章

結局のところ、やる気があるやつは応援したくなるのが人情。――6

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 ヒートハウンドとの戦闘は、危なげなく終了した。

 リーリーはレベルが劣っていたが、持ち前のAGIを遺憾いかんなく発揮し、ヒートハウンドの攻撃をすべて回避していた。

 レイシーの指示も的確で、ちゃんと努力してきたことがうかがえた。

「ロッドくん、ロッドくん! リーリーが2レベルになりましたよ!」
「お、やったな」
「はい! はじめてのレベルアップです!」

「バンザーイ!」と諸手もろてを挙げてはしゃぐレイシーに笑みを漏らしつつ、俺はヒートハウンドの魔石を拾う。

「ほい、レイシー」
「ほぇ?」

 その魔石を手渡すと、レイシーはコテン、と首をかしげた。

「ロッドくん、なんでわたしに渡すのですか?」
「だって、使役しないといけないだろ?」

 当然とばかりに答えると、レイシーが「えっ!?」と驚く。

「わ、わたしがこの子を使役するのですか!? 倒したのはロッドくんですよ!?」
「リーリーを活かすには、新たな従魔を手に入れることが必須条件なんだよ。だから、ちょうどよかったんだ」

「ですが……」とためらうレイシーに、俺は続けた。

「それに、レイシーはこいつが好きなんだろ? こいつも、レイシーの従魔になったほうが喜ぶよ」

 レイシーが手中しゅちゅうの魔石に目をやって、クスッと笑みを漏らす。

「ロッドくんは本当に優しいひとですね……そんなに優しくされたら、わたし……」
「ん? 最後のほう、なんて言った?」
「な、なんでもありません!」

 俺が聞き返すと、レイシーが顔を真っ赤にしてブンブンと首を振った。

「で、では、ありがたくいただきます!」

 話題を切り上げるように早口で言って、レイシーが魔石に指をすべらせる。

 従魔を使役するための『従魔じゅうまいん』を刻んでいるんだ。

『従魔の印』を刻み終えると、魔石が輝きを放った。使役完了のあかしだ。

 レイシーがパアッと笑みを咲かせ、命じる。

「おいで、ヒートハウンド!」
『ワンッ!』

 現れたヒートハウンドが、パタパタと炎の尻尾を振りながら、レイシーの脚に体をすり寄せる。

「はうぅぅ……可愛い、可愛いよぉぉ……!!」

 レイシーが頬をフニャフニャにゆるめて、ヒートハウンドを抱き上げた。

「よーし、今日からきみの名前は『ピート』です! よろしくお願いしますね? ピート」
『ワウッ!』

 ヒートハウンド改めピートが、元気よく返事する。

 レイシーがニッコリ笑って、モフモフの毛並みに顔をうずめた。

 幸せそうなレイシーを眺めていると、俺まで嬉しくなる。

「ありがとうございます、ロッドくん! このお礼は必ずいたしますね!」

 レイシーがなつっこい笑顔を俺に向ける。まるでその腕に抱いているピートみたいだ。

 俺は内心で呟いた。

 その笑顔が充分すぎるほどのお礼だよ。

 もちろん、クサすぎて口には出さなかったけど。
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