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第一章
犠牲の上に成り立つ平和って言葉が、詭弁じゃなかったためしはない。――4
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ゲームのエリーゼ・ガブリエルは、『生贄に捧げられる巫女』を救うためにタイラントドラゴンに挑んでいた。
その『巫女』がレイシーだと推測してここまで来たわけだが……
まさか、エリーゼ先輩とレイシーが、異母姉妹だとはな。
「どうして、ロッドくんがここにいるのですか?」
俺が苦笑していると、レイシーがか細い声で訊いてきた。
「わたしは帰郷するとしか言ってないのですよ? それなのに、わたしが贄になるなんて、どうやって知られたのですか?」
「俺が物知りなのは、レイシーだってわかってるだろ?」
「――――っ」
レイシーが唇を噛み、うつむく。どうやら、自分が贄になることは知られたくなかったらしい。
それでも俺に退くつもりはない。大切な友達を失うわけにはいかないからな。
「わたしが贄にならないと、レドリア王国の人々が苦しみます。それでもロッドくんは、わたしを引き止めるつもりですか」
「当然だ」
「どうしてっ!?」
感情を露わにするレイシーに、俺はどこ吹く風と答える。
「約束しただろ? レイシーはまた、俺を遊びに誘わないといけねぇんだ。約束を反故にするなんて、俺は許さねぇぞ?」
一瞬ポカンとしたが、レイシーは眉を立て、涙が滲んだ目で俺を睨んできた。
その顔からは、明らかな怒りが見てとれる。
「いまはふざけたことを言っている場合ではないのです! 自分の都合で助かることなんてできないですよ! レドリア王国の人々や、学校のみんなや、エリーゼ姉さんや、ロッドくんを守るには、わたしが贄になるしかないのです!」
「ふざけてなんかいねぇよ、俺は大真面目だ」
俺はレイシーの怒りを真っ向から受け止めた。
「勝手に決め付けんなよ、俺はレイシーとまた遊ぶのを楽しみにしてたんだぜ? レイシーは違うのかよ?」
「わたし、は……」
「嘘は言わせねぇ。レドリア王国の人々や、学校のみんなや、エリーゼ先輩や、俺を守るなんて建て前はどうでもいい。俺はレイシーの本音が聞きたいんだ」
言って、俺はレイシーから受けとった便箋を取り出す。
「泣いてたんだろ? これを書きながら」
便箋を突きつけられたレイシーは息をのんだ。
便箋に綴られた文字は、ところどころ涙で滲んでいる。
ゲーム知識とこの便箋があったから、俺は、レイシーが『巫女』だと気付けたんだ。
「納得してないんだろ? 心からは」
「……当たり前じゃ、ないですか」
レイシーの瞳から涙が溢れ出した。
感情のタガが、外れる。
「イヤに決まってるじゃないですか! わたしはロッドくんの側にいたいのです! エリーゼ姉さんと一緒にいたいのです! 遊びにだって行きたいし、お食事にだって行きたいし、やりたいことはまだまだまだまだたくさんあるのです!」
叫ぶ。
「わたしは生きたい!! 死にたくなんてない!!」
レイシーの告白を聞いて、俺は好戦的に笑った。
それが聞きたかったんだよ、レイシー。おかげで、心置きなく挑めるぜ。
「なら俺が叶えてやる!」
「……え?」
「俺がタイラントドラゴンを倒してやるっつってんだよ!」
レイシーとエリーゼ先輩が瞠目した。
「倒せるというのか、マサラニアくん? あの、タイラントドラゴンを……」
「正確には、倒させてやるなんすけどね。俺ひとりじゃ無理ですけど、3人で立ち向かえば、勝てる」
俺は断言し、ふたりに歩みよる。
「本当、ですか? ロッドくん」
「俺が嘘ついたこと、あったか?」
フルフルと、レイシーが首を振る。
「わたし、生きられるのですか?」
「死なせて堪るか。タイラントドラゴン如きにレイシーはやれねぇよ」
レイシーのもとにたどり着いた俺は、涙に濡れた目元を優しく拭った。
「ロッドくんと一緒に、いられるのですか!?」
「ああ! ずっと一緒だ!」
笑いかけると、レイシーの口から嗚咽が漏れた。
「――――っ! ロッドくん!!」
レイシーが俺に抱きつき、泣きじゃくる。
苦笑しつつ、俺はレイシーを抱き返し、涙が収まるまで背中をなで続けた。
「ありがとう、マサラニアくん。きみがいてくれて、よかった」
エリーゼ先輩も、静かに涙を流していた。
その『巫女』がレイシーだと推測してここまで来たわけだが……
まさか、エリーゼ先輩とレイシーが、異母姉妹だとはな。
「どうして、ロッドくんがここにいるのですか?」
俺が苦笑していると、レイシーがか細い声で訊いてきた。
「わたしは帰郷するとしか言ってないのですよ? それなのに、わたしが贄になるなんて、どうやって知られたのですか?」
「俺が物知りなのは、レイシーだってわかってるだろ?」
「――――っ」
レイシーが唇を噛み、うつむく。どうやら、自分が贄になることは知られたくなかったらしい。
それでも俺に退くつもりはない。大切な友達を失うわけにはいかないからな。
「わたしが贄にならないと、レドリア王国の人々が苦しみます。それでもロッドくんは、わたしを引き止めるつもりですか」
「当然だ」
「どうしてっ!?」
感情を露わにするレイシーに、俺はどこ吹く風と答える。
「約束しただろ? レイシーはまた、俺を遊びに誘わないといけねぇんだ。約束を反故にするなんて、俺は許さねぇぞ?」
一瞬ポカンとしたが、レイシーは眉を立て、涙が滲んだ目で俺を睨んできた。
その顔からは、明らかな怒りが見てとれる。
「いまはふざけたことを言っている場合ではないのです! 自分の都合で助かることなんてできないですよ! レドリア王国の人々や、学校のみんなや、エリーゼ姉さんや、ロッドくんを守るには、わたしが贄になるしかないのです!」
「ふざけてなんかいねぇよ、俺は大真面目だ」
俺はレイシーの怒りを真っ向から受け止めた。
「勝手に決め付けんなよ、俺はレイシーとまた遊ぶのを楽しみにしてたんだぜ? レイシーは違うのかよ?」
「わたし、は……」
「嘘は言わせねぇ。レドリア王国の人々や、学校のみんなや、エリーゼ先輩や、俺を守るなんて建て前はどうでもいい。俺はレイシーの本音が聞きたいんだ」
言って、俺はレイシーから受けとった便箋を取り出す。
「泣いてたんだろ? これを書きながら」
便箋を突きつけられたレイシーは息をのんだ。
便箋に綴られた文字は、ところどころ涙で滲んでいる。
ゲーム知識とこの便箋があったから、俺は、レイシーが『巫女』だと気付けたんだ。
「納得してないんだろ? 心からは」
「……当たり前じゃ、ないですか」
レイシーの瞳から涙が溢れ出した。
感情のタガが、外れる。
「イヤに決まってるじゃないですか! わたしはロッドくんの側にいたいのです! エリーゼ姉さんと一緒にいたいのです! 遊びにだって行きたいし、お食事にだって行きたいし、やりたいことはまだまだまだまだたくさんあるのです!」
叫ぶ。
「わたしは生きたい!! 死にたくなんてない!!」
レイシーの告白を聞いて、俺は好戦的に笑った。
それが聞きたかったんだよ、レイシー。おかげで、心置きなく挑めるぜ。
「なら俺が叶えてやる!」
「……え?」
「俺がタイラントドラゴンを倒してやるっつってんだよ!」
レイシーとエリーゼ先輩が瞠目した。
「倒せるというのか、マサラニアくん? あの、タイラントドラゴンを……」
「正確には、倒させてやるなんすけどね。俺ひとりじゃ無理ですけど、3人で立ち向かえば、勝てる」
俺は断言し、ふたりに歩みよる。
「本当、ですか? ロッドくん」
「俺が嘘ついたこと、あったか?」
フルフルと、レイシーが首を振る。
「わたし、生きられるのですか?」
「死なせて堪るか。タイラントドラゴン如きにレイシーはやれねぇよ」
レイシーのもとにたどり着いた俺は、涙に濡れた目元を優しく拭った。
「ロッドくんと一緒に、いられるのですか!?」
「ああ! ずっと一緒だ!」
笑いかけると、レイシーの口から嗚咽が漏れた。
「――――っ! ロッドくん!!」
レイシーが俺に抱きつき、泣きじゃくる。
苦笑しつつ、俺はレイシーを抱き返し、涙が収まるまで背中をなで続けた。
「ありがとう、マサラニアくん。きみがいてくれて、よかった」
エリーゼ先輩も、静かに涙を流していた。
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